1
夢を見ました。
星々が満ちる宇宙を。
私は漂って。
見上げると。
綺麗な球体の光があって。
語りかけられました。
それが私の始まりです。
神聖ローマ帝国最盛期。
金髪で長い髪。
なんちゃって制服に。
ベレー帽という。
女の子らしい恰好をした。
クラリス・エーデルシュタイン。
牧師の家庭に生まれたのかは定かではありません。
半ば捨て子だったそうです。
クラリスはそんなことよりも。
何か大きな事でもしようかと考えています。
小さな町の木の下で。
クラリス。
「せっかくだし。」
「何か夢を持って行動したいな。」
「私は何も目標を持たない人を見てきたけれど。」
「ああいう人たちとは違うみたい。」
シャルマン。
「麗しい御嬢さん。」
「私はシャルマンと呼びます。」
「貴方が良ければ私と親交を結びましょう。」
クラリス。
「御身分の高い騎士様でいらっしゃいますね。」
「ええ。」
「身なりが立派で。」
「綺麗なバスタードソードを持っています。」
「私に好意を寄せているのですね。」
「かつてのヘスティアのように。」
「すべての求婚を断り。」
「生涯処女を貫き通したいと。」
「思っておりますれば。」
シャルマン。
「どなたがそれを教えたのですか?」
クラリス。
「自分の意思でございます。」
「私は選択の自由が少し効くようです。」
シャルマン。
「求婚は失敗に終わりました。」
「貴方は他の女達とは違うようで。」
「あれれ。」
「ふらふらして来ました。」
クラリス。
「医術の基礎がありますから。」
「過労のようですね。」
「あら大変。」
「馬から落ちてしまいました。」
「私は日頃から鍛えていますので。」
「担いで送って差し上げましょう。」
病院。
医者。
「入院3日ですな。」
シャルマン。
「すまない助かった。」
クラリス。
「栄養ドリンク持ってきますね。」
家から栄養ドリンクを持ってきて。
シャルマンに与える。
クラリス。
「3本ありますから。」
「1日1本ですよ。」
シャルマン。
「貴方が結婚を望んでいたら。」
「私の素晴らしい妻になっていたでしょう。」
一週間後。
クラリス。
いつもの大きな木の下で。
クラリス。
「すべての選択が自由ならば。」
「もう少しまともな生き方ができそうです。」
「彼女たちは参考になります。」
「結婚の事しか頭に無いようで。」
「それでも健気に夫に仕えているんですから。」
シャルマン。
「一週間ぶりですな。」
クラリス。
「私に何か用ですか?」
シャルマン。
「何かお礼をしなければなりません。」
クラリス。
「丁度よいところに丁度よい人が。」
「剣術と学問を教えてくれませんか?」
シャルマン。
「喜んで。」
「どうせなら。」
「結婚できぬ後悔。」
「貴方にすべて捧げます。」
2年後。
牧師。
「基礎はすべて教えました。」
「最初にすべて教えて。」
「年齢を重ねるごとに自由にする。」
「これが神学の掟というもの。」
「そろそろ自由にしなさい。」
クラリス。
「解りました。」
「私は私の選択で道を歩みます。」
15歳になったクラリス。
剣術の腕は秀でていて。
学問も満点を取れるようになり。
学校では評判に。
とうとう学業を終了しました。
クラリスは夜間の散歩が好きで。
シャルマンと一緒によく歩いています。
この日はひとり。
コパン。
「これまあ綺麗な女の人がひとりで出歩いて。」
「ちょっとかしら警告してやろう。」
クラリス。
「夜の世界は詩的ですね。」
コパン。
「ちょっとそこの御嬢さん。」
「襲いますよ。」
「いいですよね?」
クラリス。
「困りますよ。」
コパン。
「駄目ですか?」
クラリス。
「駄目です。」
コパン。
「ならしょうがない。」
「さようなら。」
「ちょっと!」
「抜刀しないでくださいよ!」
コパン退場。
暴漢その壱。
「綺麗な女の人だって?」
暴漢その弐。
「ちょっかい出してやろうか。」
暴漢その参。
「警邏はこの時間は居ないぞ?」
暴漢登場。
クラリス。
「今度はなんです?」
「品の悪い夜遊びをなされますね。」
暴漢その壱。
「ちょっと弄らせて。」
「ぐわっ!」
暴漢その壱倒れる。
暴漢その弐。
「2対1だぞ。」
クラリス。
「多人数で来るほど油断も大きくなります。」
クラリス。
逃げながら抜刀。
追いつかれた瞬間に斬りつけ。
ひとりを倒す。
もうひとりが抜刀するが。
クラリスの姿は無い。
影からクラリスが一突きして暴漢は全滅した。
警邏。
「何事だ!?」
警備員。
「コクスィネル川付近で沙汰があったようで。」
警邏。
「行くぞ。」
暴漢逃げ出す。
警邏。
「先にやったのは誰だ?」
クラリス。
「私が綺麗だなどと。」
「花を摘もうと。」
「襲いかかってきたところを。」
「処理致しました。」
警備員。
「暴漢どもを捕らえました。」
「こいつら手配中の一味です。」
「傷はえらく浅いようで。」
警邏。
「腕前見事!」
「さあ暴漢どもを牢屋へ。」
「ひょっとしたら記事になるかもしれませんよ。」
クラリス。
「そんなあ。」
「もう有名人ですか。」
世が明け。
ちょっとした有名人になってしまいました。
シャルマン。
「私は間違っていなかった。」
「私の行為そのものは。」
「私を決定づけてしまうのか。」
「いや。」
「私自身が決定したことなのだ。」
クラリス。
「実戦になると実際以上の力が出ました。」
「不思議です。」
シャルマン。
「左遷シャルマン将軍の偉大さは。」
「己だけが知っていたのだ。」
「今でも都には名声が残っている。」
「私は愚か者では無かった。」
コパン。
「あれ?」
「シャルマン様じゃありませんか。」
シャルマン。
「かつての家臣と奇遇の再会ですか。」
「随分と整っている様子ですねぇ。」
コパン。
「仕えるべき主君を失って。」
「適当に工場勤務をしております。」
「かつてのようにお使いください。」
「所で。」
「公爵様が。」
「日頃頑張っている人に報いるため。」
「評判が良い人を連れてくるようにと。」
「わたくしめが命じられて。」
「情報収集の真っ最中でございます。」
シャルマン。
「お前は最初から使える奴だったよ。」
コパン。
「尋常じゃない努力は得意分野。」
「その成果も時には現れます。」
「貴方達の事も書いておきましょう。」
「失礼します。」
クラリス。
「まあなんて素敵。」
シャルマン。
「何か良い洒落でもありました?」
クラリス。
「貴方は私にとって兄です。」
シャルマン。
「兄妹ということですね。」
「私も意外です。」
「是非とも今後も友情を育みましょう。」
ふたり退場。
2
リリアという女の子が居ます。
金髪で少し長めの髪。
流行の衣装が好きな女の子。
図書館の館長の娘であり。
12歳の頃から本の虜になってしまいました。
「図書館中毒」というのが流行っていて。
図書館好きな人々で溢れかえっているのが。
この町の特徴です。
13歳の頃。
不思議な本に出会います。
リリア。
「魔法使いが書いた本?」
「解読必須のようですね。」
「あら不思議。」
「フェイントを多用して書かれている。」
この日を境に。
不思議な力を手にします。
15歳になりました。
公爵が日々の労苦を労おうと。
評判の良い人物を選んで。
お城でパーティーが開かれるそうです。
両親に連れられて赴きます。
リリア。
「豪華絢爛。」
「贅沢の極み。」
「なるほど。」
「人格の優れた金持ちは。」
「お金の使い方を心得ています。」
クラリス。
「魔女の格好?」
「あなたかわいいですね。」
リリア。
「あなたこそ。」
「騎士のような正装は聖なるもの。」
「こんな女性は中々居ません。」
クラリス。
「私はクラリス・エーデルシュタイン。」
リリア。
「リリア・エーデルシュタイン。」
クラリス。
「あら?」
「苗字が一緒ですよ。」
リリア。
「本当です。」
「同じ家柄の人ですよ。」
「きっと。」
クラリス。
「一緒に歩かない?」
リリア。
「私もそう言おうとしてました。」
城の廊下。
リリア。
「マジックです。」
スカートを摘むと。
中から。
マスケット銃が出てきました。
クラリス。
「どうなってるのー!?」
リリア。
「帽子の中から。」
「雀が三匹こんにちは。」
クラリス。
「きゃーすごーい!」
「私も何か見せたいな。」
「ほら。」
「そこの従者さんこっちに来て。」
「大人の男性を持ち上げました。」
リリア。
「キャー!なんてパワーなの!?」
クラリス。
「普段からトレーニングしています。」
リリア。
「そうだ。」
「ちょっとみんなにイタズラしない?」
クラリス。
「どんな?」
警備員。
術を掛けられる。
リリア。
「この先に公爵が控えているから。」
「ちょっと驚かせてみようよ。」
「公爵は物好きでしょ?」
クラリス。
「段取りは?」
リリア。
「私にお任せあれ。」
侯爵椅子に座っている。
もうすぐ出番。
椅子の後ろから。
カーテンを分けて。
リリア。
「公爵さま。」
ジャルダン公爵。
「なにっ!?」
「いつからそこに居たのだ。」
「どこから入ったのだ。」
「質問すればキリが無い。」
「なんという面白味がある行為なのだ。」
「いろいろ話してくれぬか。」
「これ。」
「どこに行った?」
「もうおらぬのか?」
「私はそちと話がしたいぞ。」
煙が立ち込める。
小さな爆発が起きて。
椅子の前方にふたりが現れる。
リリア。
「リリアです。」
クラリス。
「クラリスです。」
ジャルダン公爵。
「これは拍手。」
「そなたらが好きになった。」
「どうだ。」
「この城にアイドルとして仕えてくれぬか?」
「今度はどこへ消えた?」
「煙のように消えてしまった。」
警備員。
「入ります。」
ジャルダン公爵。
「入れ。」
警備員と一緒にふたりの女の子。
リリア。
「楽しめましたか?」
クラリス。
「ふたりの共同合作です。」
ジャルダン公爵。
「これはこの世の愉快なものを。」
「これ以上のものは無い。」
「見てしまった。」
「己の人生に花を添えに来たのか。」
「しかもこんな可憐な少女たちが。」
クラリス。
「宮仕えのアイドルの件はお引き受けします。」
リリア。
「いつでも見せてあげますとも。」
ジャルダン公爵。
「なんたる僥倖。」
「ついに余の生に彩りが。」
「リリアと言ったな。」
「その奇術は切り札になりそうだ。」
「クラリスと言ったな。」
「剣術が使えるのだな。」
(警備員を持ち上げて見せる。)
「これは豪傑のようですな。」
「丁度アイドルを探していた。」
「それが向こうから飛び込んでくるとは。」
「おっと出番だ。」
「君達もきたまえ。」
パーティーは順調に進み。
高級ワインがふるまわれる。
シャルマンとクラリス。
その様子を見たジャルダン公爵。
ジャルダン公爵。
「シャルマン殿。」
「この御嬢さんと親しいですね。」
シャルマン。
「私の弟子だ。」
ジャルダン公爵。
「なるほど。」
パーティーが終わる。
ジャルダン公爵。
「君の両親には私が話をつけておく。」
「一週間後くらいに。」
「お目にかかれると良いですな。」
クラリス。
「予定通りに進めてあげましょう。」
リリア。
「予定に合わせますとも。」
廊下。
ふたりで。
リリア。
「アイドルデビュー?」
クラリス。
「これを土台にして。」
「各地を旅行したいな。」
リリア。
「私もいろいろ見て回りたい。」
ふたりでハイタッチ。
かなりの収穫を得て。
帰宅です。
3
クラリスは不思議な髪飾りを所持しています。
リリアも同じく不思議な髪飾りを持っていて。
高級そうな。
斬新なデザインで普通の物ではありません。
両親から貰ったもので。
エガリテ夫人はそれを見て少し嫉妬しておりました。
今日も。
リリアとクラリス。
踊りの稽古の真っ最中。
歌唱力に問題は無く。
アイドルの基本水準を満たしている。
エガリテ夫人がそれを見て。
不満気。
エガリテ夫人。
「なによあの娘たち。」
「国の人々を独占する気ですか!?」
ジャルダン公爵。
「なにをそんなに喚いているのだ?」
「お前には私が居るのだ。」
エガリテ夫人。
「ええ。」
「貴方が居てくれると。」
「わたくしの存在意義が確立します。」
「ですが。」
「かつての私の名声を独占されたではありませんか。」
ジャルダン公爵。
「己の魅力はその程度だと言いたいのか?」
「自ら見切りを付けるつもりなのか?」
エガリテ夫人。
「小娘に席巻されるものですか。」
退場。
夜中に寝室。
エガリテ夫人。
「誰ですか?」
嫉妬。
「私の名前は嫉妬。」
「よくも自分の強みも知らずに。」
「鍛錬なしで勝とうとしたがりますね。」
「ええ。」
「何もこの世の仕組みを知らないんですもの。」
「仕方がないとは言え。」
「羨んで見ているだけにするのはやめてもらいたい。」
エガリテ夫人。
「地位を取られた人の立場になりなさい!」
嫉妬。
「取られた?」
「羨ましい?」
「指を咥えて見ているがいい。」
「貴様は他人が戦って得た戦利品を見て。」
「あれが欲しいのだ。」
「そう言うてるに過ぎず。」
「人が千里を横断して持ってきたものを。」
「横取りでもできようかと。」
「狙っているに過ぎない。」
エガリテ夫人。
「うっ!!」
嫉妬。
「それでも思い返す者には味方が得られる。」
「七つの罪源。」
「よくご注意なされますように。」
嫉妬退場。
エガリテ夫人。
「なんですかあれは。」
「あら?」
「わたくしにはわたくしのファンが居る。」
「わたくしのやり方で小娘に勝つこともできる。」
「変だわ。」
「おかしな気を起こしていた。」
「今夜はぐっすり眠れそう。」
警備員。
「今夜は何者かの気配がありますな。」
リリア。
「公爵が心配です。」
警備員。
「わたくしめが見て参ります。」
リリア。
「怪しい気配。」
罪過。
「貴方はこの世の掟に。」
「背くか背かないか。」
「我々の罪の性質も。」
「解放される時はいつかくる。」
「その力を何に使いますか?」
「善ですか?義ですか?」
「悪用して天下を取ってみますか?」
「奸智で滅びますか?」
「道徳に背いて道に戻され。」
「結局貴方は罪を避けるようになれる。」
リリア。
「何者かは存じ上げませんが。」
「悪に走るために得た力ではありません。」
「文字通り悪は悪い状態に。」
「悪は悪い結末に。」
「悪はこの世の悪いものをすべて受けるではありませんか。」
「私は義です。」
「罪の性質は受け継いでいないつもりです。」
「我には二種類の意味があって。」
「自分勝手の意味も含まれます。」
「我は強くありません。」
「我を張るつもりはありません。」
「従順で出来上がっています。」
罪過。
「罪が。」
「罪過が貴方を滅ぼさないように。」
「私は貴方にこの姿を見せました。」
「どうしてそんなことが言えるのですか?」
リリア。
「人に反した事案は。」
「もう人では無くなるからです。」
「リリアは悪というものを知ってしまいました。」
「言葉で説明するのは無理ですよ。」
罪過。
「悪に対する報いは罪の力。」
「貴方が健全で居られるように。」
「私は参上したのですよ。」
「さようなら。」
罪過退場。
クラリス。
「夜遊びしない?」
リリア。
「リリアはちょっともう寝ます。」
クラリス。
「おやすみ!」
城の廊下。
希望。
「私の名前は希望。」
「貴方はこの世に一切の価値を見出し。」
「この世界を歩まんとしている。」
「希望が絶望に代わってしまわないように。」
「いまのうちに光を見せておいてやろう。」
「貴様の考えている事はすべて尊いのだ。」
「常に価値がある事を考え実行して。」
「夢を描いて見せ。」
「まさにそれが青春真っ只中。」
「進め!自分の信じるように進め!」
「賢明な者は確信を持つようになる。」
「一生の中を青春で埋め尽くせ。」
「貴様は次々と戦利品を手にしていき。」
「心の富で埋もれてしまえ。」
「貴様の過ごした日々は美しいもので。」
「貴様の一生は褒め称えられる。」
「さあ賛美を。」
「この者に絶望をくれてやるな。」
クラリス。
「ぬをっ!?」
「そんな事を言うのは誰ですか?」
「一文字一文字刻まれましたよ。」
「あれ?」
「消えてしまいました。」
「正体くらい言えばいいのに・・・。」
警備員。
「今日はちと見張りの数を増やします。」
「今日の夜遊びはおやめください。」
クラリス。
「解りました。」
「おやすみなさい。」
一同退場。
奇妙な夜に。
月が見え。
神聖な夜明けは優しく訪れるのです。
4
公爵の部屋の前で。
クラリス。
「旅の件。」
「話したほうがいいかな?」
リリア。
「どう建前をつけよう?」
クラリス。
「もう少し実績を積んだ後のほうがいいかな?」
リリア。
「参入して日が浅いからねぇ。」
クラリス。
「やめておきましょう。」
リリア。
「そうしましょう。」
コパン。
「これはいつかの御嬢さん。」
「公爵様がお呼びですよ。」
クラリス。
「これはいつかの仕事師さん。」
「今日もいい仕事をやりに来ましたか?」
コパン。
「女性にそのような事を言われるのは。」
「とても光栄なことですな。」
リリア。
「リリアって美人だと思う?」
コパン。
「とてもお美しい。」
「それ以上ですよ。」
エガリテ夫人。
「貴方はわたくしの若い頃にそっくりだわ。」
リリア。
「ご夫人。」
「いつもいろいろ教えて頂きありがとうございます。」
エガリテ夫人。
「せいぜいかわいがってあげますとも。」
「さて。」
「お部屋にお入りなさい。」
入場。
ジャルダン公爵。
「よくぞ参った。」
「そちに頼みがある。」
リリア。
「なんなりとも。」
ジャルダン公爵。
「どうも私は情報に疎くてな。」
「特に首都圏の最新の情報が手に入らなくて。」
「シャルマン殿は情報こそ武器だと忠言なされた。」
「なるほど。」
「忠言は耳に逆らう。」
「しかし私は敢えて従おう。」
「そちらに情報収集を依頼したい。」
クラリス。
「旅行ですか?」
ジャルダン公爵。
「そう取るのも自由だな。」
リリア。
「了解しました。」
「可能な限りの情報を収集して参ります。」
退出。
ふたりでハイタッチ。
クラリス。
「公爵が並の者じゃなくて良かったね。」
リリア。
「歴史上稀に見る好人物ですよ。」
準備中。
シャルマン。
「もう既に一人前だな。」
クラリス。
「また一緒に夜歩きしましょうね。」
シャルマン。
「いつでも付き合おう。」
「つくづく私は自分というものを肯定できるようになり。」
「かつての名声は根拠があるものだったと。」
「冷静に自分を見れるようになったのだ。」
「まだ私は衰えを知らぬ。」
「もう一咲できるほどの情熱が生まれたのだ。」
クラリス。
「貴方は変わりましたね。」
シャルマン。
「かつての勇気を取り戻した私は。」
「自分を取り戻すべく。」
「何事にも懸命に取り組んで見せよう。」
「都に行くのだな。」
「楽しんでおいで。」
クラリス。
「一生懸命楽しんできます!」
次の日には出発していました。
馬車に揺られて。
街道を走り続け。
街へ町へと廻ります。
5
エガリテ夫人。
「どうして行かせたのです?」
ジャルダン公爵。
「こういうのは人材育成の鉄則だろう。」
「経験をさせるためだ。」
エガリテ夫人。
「女ってなんでそんなことすら解らないのでしょう。」
ジャルダン公爵。
「違うな。」
「単なる想像力不足だ。」
エガリテ夫人。
「要するに。」
「わたくしに不足があるんですわ。」
ジャルダン公爵。
「どれだけ無駄に過ごしていたか。」
「察するに余りない。」
エガリテ夫人。
「生き方を改めますね。」
ジャルダン公爵。
「お前は自分なりに最善を尽くしているんだ。」
「もっと誇っていいのだぞ。」
エガリテ夫人。
「そうだといいのですが。」
シュツットガルドからベルリンへ。
途中の街であるニュルンベルグで。
アスピラスィオン。
「おい兄貴。」
「あの女。」
「あまりに優れているではないか。」
ヴァン。
「弟よ。」
「俺はあの魔女の恰好をしている娘に好みを感じたぞ。」
アスピラスィオン。
「俺もだ。」
「ということは取り合いになるか?」
ヴァン。
「では勝負して。」
「勝ったほうが求婚するとしよう。」
ふたりで相撲を取る。
ヴァンが倒れる。
アスピラスィオン。
「こんにちはお姫様。」
「可憐な女性ですね。」
「お昼でもご一緒に。」
リリア。
「お断りしますね。」
「どうも男の考えている事を見透かしてしまって。」
「儀礼のような過程を得るのでしょう?」
「男女の営みを見る事に嫌悪感があるんですよ。」
アスピラスィオン。
「偏見ではありませんか?」
クラリス。
「それは欠点ではないですよ。」
「個性です。」
アスピラスィオン。
「これは残念。」
アスピラスィオン退場。
リリア。
「生活物資を追加したら。」
「街を出ましょう。」
「なんか風向きがよくない。」
クラリス。
「少し不吉な街だよね。」
出発。
次の街へ向かいます。
盗賊その壱。
「どこだ?」
「女ふたりと従者で旅をしている奴は。」
盗賊その弐。
「あそこです。」
「丁度良い夜ですし。」
「夜襲を掛けましょう。」
「あら?」
「貴方は誰?」
盗賊ふたりとも術にかかる。
リリア。
「お人形さん。」
盗賊その壱。
「あれれ?」
「体が勝手に?」
盗賊弐。
「逃げろ!」
「こいつ妖術師だ!」
盗賊逃亡。
ライブッィヒに到着。
クラリス。
「ここまで。」
「街の雰囲気はどれも不気味でした。」
「ちょっとそこの人。」
「こうして訪ね歩いていると。」
「世間が妙に普通過ぎます。」
リリア。
「正直に吐いてしまえ。」
民間人その壱。
「保守派と改革派で対立があるのです。」
民間人その弐。
「だから誰もが冷たい態度をしています。」
民間人その参。
「大臣に謀反の気配ありとか。」
「悪法の制定があるかもしれないだとか。」
「暗いニュースで溢れています。」
「それが人伝えに広まって。」
「噂が噂を呼んでしまい。」
「他人が信用できなくなりました。」
リリア。
「なるほどねぇ。」
クラリス。
「皇帝を何か貶めようとでもしているのでしょうか。」
リリア。
「手当たり次第に吐かせましょ。」
「こんなもの簡単ですよ。」
スーリール大司教。
「あんなところに妖術師が居る。」
「見過ごしていいものか。」
「いいや。」
「まだ何者か解らぬうちに対処するのはやめておこう。」
クラリス。
「おや?貴方は?」
スーリール大司教。
「向こうから話しかけられてしまった。」
「私は教会の者であるが。」
「貴方は何者ですか?」
クラリス。
「ジャルダン公爵の家臣でクラリスと言います。」
リリア。
「リリア・エーデルシュタインです。」
スーリール大司教。
「エーデルシュタイン?」
「ちょっと待った。」
「親族ではあるまいか。」
「こんな所で立ち話も難ですし。」
「教会においで。」
クラリス。
「親族?」
リリア。
「えー?」
大きな教会。
スーリール大司教。
「君の父親の名前は?」
クラリス。
「アヴェク・トワです。」
リリア。
「プティ・ポワです。」
スーリール大司教。
「やはりな。」
「娘が居るとは聞いていたが。」
「彼に花を持たせてやれるな。」
クラリス。
「父を知っているのですね。」
リリア。
「興味深いなあ。」
「繋がりがあるんでしょ?」
「いろいろ話して。」
スーリール大司教。
「ふたりともこの教会の出身者だ。」
「中々の好人物だった。」
「私の親族にあたる人です。」
クラリス。
「わあ素敵。」
リリア。
「エーデルシュタインって有名な家柄なの?」
スーリール大司教。
「少し昔に三人の英傑が居た。」
「圧倒的な武力と智謀で国を統括し。」
「名を轟かせた伝説的な人物だった。」
「そのうちのひとりの苗字がエーデルシュタインなのだ。」
クラリス。
「少し昔っていつですか?」
スーリール大司教。
「20年前ですよ。」
「そのうちのひとりが謀略に掛かって。」
「国を追われた。」
「皇帝が策にやられたと気付いたのはその3年後でしたな。」
クラリス。
「うー。」
「なんか繋がる気がする。」
リリア。
「なんか私達って凄い名家の出身なんだね。」
スーリール大司教。
「ふたりにいいものを持たせてやりましょう。」
「ついておいで。」
教会の倉庫。
スーリール大司教。
「宝剣ベルクート。」
「その時の英雄のひとりが握っていた剣であり。」
「適した者が居れば譲るべしとの遺言です。」
「クラリス。」
「貴方に授けましょう。」
クラリス。
「凄い。」
「こんな美しい剣見たことない。」
スーリール大司教。
「リリア。」
「貴方には神秘の指輪を渡しましょう。」
「聖職者が祈った宝石付きの指輪です。」
「加護が得られるでしょう。」
リリア。
「貰っていいの?」
「わぁ。」
「神聖な氣がある。」
スーリール大司教。
「しばらくここに滞在するので?」
リリア。
「そのつもりです。」
「任務がありますので。」
スーリール大司教。
「では宿と停留所はこちらで用意しましょう。」
リリア。
「ご厚意に感謝致します。」
しばらくライブッィヒに滞在です☆
6
教会の中。
クラリス。
「なぜ私に宝剣を賜ったのですか?」
スーリール大司教。
「貴方もエーデルシュタインだと伺いましたので。」
「あの剣は英雄レンディルが握っていたもので。」
「名はレンディル・エーデルシュタインです。」
クラリス。
「なるほど。」
「私はその適した人物というわけですね。」
「私と繋がりがある。」
スーリール大司教。
「英雄レンディルには一人息子が居まして。」
「今はどこに住んでいるかなどは知りません。」
クラリス。
「そんな名家の親戚という意味ですか?」
スーリール大司教。
「そうなりますかな。」
「ちなみにその髪飾りは皇帝陛下が特注で作らせた。」
「英雄に贈られし。」
「家内への報酬品ですからね。」
「一目で解りました。」
「英雄たちの妻にも恩賞として。」
「作られたうちのふたつがそれです。」
「それでどんな身分かは一目瞭然。」
「ただ。」
「これ以上の情報は持ち合わせていませんね。」
クラリス。
「興味深い話でした。」
「ご厚意感謝致します。」
リリア。
「くらら。」
「情報がいっぱい取れたよ。」
クラリス。
「リリー。」
「どんなこと?」
リリア。
「変な事を人民に吹き込んでいる輩が居て。」
「最近逮捕されたんだって。」
「あと。」
「キリスト教の異端が随分酷いって。」
スーリール大司教。
「この街は多数の改革が実行されております。」
「その流れを悪用した連中ならいくらでも居ますよ。」
クラリス。
「情報はノートに書き記したよ。」
「そろそろベルリンに行ったほうがいいかも。」
リリア。
「そうしよう。」
「お世話になりました。」
スーリール大司教。
「少しはお役に立てたようで。」
「どうかご無事で。」
一同ベルリンへ。
馬車に揺られて。
半日ほど。
到着。
中心市街へ向かう。
旅芸人や工芸品で溢れかえっており。
人は奇抜な衣装をしており。
家屋はカラフルに塗装されている。
これまでの街と全然違う。
クラリス。
「凄い街だなぁ。」
「キャー!!」
リリア。
「なんか夢いっぱいだよね!」
クラリス。
「情報収集は後回しにして。」
「観光観光!」
リリア。
「だよね!」
手を繋いで歩いて回ります。
人が多いですね。
至る所に公園があります。
銅像が多いです。
お店もたくさんあります。
リリアは本屋でいろいろ購入しました。
クラリスは工芸品をお買い上げ。
はっと我に返って。
情報収集を開始。
皇帝が住まうお城の近くで。
喫茶店があったので。
物好き詮索好きを装って。
聞き込み調査。
路地裏に入る。
クラリス。
「内部闘争?」
リリア。
「内部分裂があるんだって。」
クラリス。
「まあこれは大変。」
リリア。
「皇帝が対処している真っ最中。」
クラリス。
「隣国のどれかが工作をしている疑い。」
リリア。
「皇帝は戦争を考案中。」
クラリス。
「すべてノートに書き記したよ。」
リリア。
「揺すればいっぱい出てくるね。」
クラリス。
「変な人に目をつけられたみたい。」
「少し身を隠そう。」
リリア。
「追ってくるよ。」
クラリス。
「誰です?」
反逆者その壱。
「我らの邪魔をするのかもしれない。」
「芽を摘んでおきたい。」
反逆者その弐。
「何か妙な感じがする。」
「始末しておいて損は無さそうだ。」
抜刀するが。
クラリスの先制攻撃に。
反逆者その壱は倒れる。
リリアの妖術で。
反逆者その弐は目が見えなくなり。
クラリスに取り押さえられる。
クラリス。
「吐け。」
リリア。
「正直に吐いてしまえ。」
反逆者術に掛かる。
反逆者その弐。
「我々は内部から。」
「解らないように皇帝を貶め。」
「少しずつ勢力を拡大。」
「やがては一国を手に入れるのだ。」
「我々はオリゾンという組織の者である。」
反逆者その弐は気絶させられる。
反逆者その壱は眠らされる。
クラリスは警察を呼んでくる。
反逆者たちは正直に吐いてしまう。
警察。
「お手柄です。」
「貴方は?」
クラリス。
「ジャルダン公爵の家臣の者です。」
「あまり人目につくのはよくありませんので。」
「手短に。」
警察。
「了解した。」
クラリス。
「情報収集に少し不利になったよ。」
リリア。
「素早く情報を集めよう。」
「長居はできないよ。」
その日いっぱいで。
迅速に情報を集めて。
2日後の朝には。
帰路に着きました。
旅行兼任務は。
大収穫に終わりました。
7
帰還途中。
ニュルンベルグにて。
クラリス。
「ノートは完成したよ。」
リリア。
「あとは届けるだけだね。」
遠くから。
アスピラスィオン。
「おい兄貴。」
「この前見た女達だ。」
「何か知っているかもしれないぞ。」
ヴァン。
「弟よ。」
「目の付け所が違うな。」
「早速尋ねてみよう。」
アスピラスィオン。
「御嬢さん方。」
「シャルマン将軍について知っていますか?」
クラリス。
「シュツットガルドにいらっしゃいますよ。」
「ジャルダン公爵の家臣です。」
アスピラスィオン。
「なんたること。」
「そういうことです兄貴。」
ヴァン。
「ようやくローマ最強の剣士にお目にかかれるというわけか。」
クラリス。
「随分いろいろ知っていそうですね。」
アスピラスィオン。
「そりぁそうだ。」
ヴァン。
「皇帝の姫君をふたりも守り切れず。」
「ついには左遷されてしまった悲劇の英傑だからな。」
クラリス。
「えー。」
「もっと詳しく。」
アスピラスィオン。
「姫君のわがままぶりは酷いもので。」
「ひとりは戦場に出てやられて。」
「ひとりは城から逃げ出して。」
「マスケット銃の誤射に遭ったのだ。」
「その時に護衛を担当していたのがシャルマン将軍だ。」
クラリス。
「いー?」
ヴァン。
「さあ全部話したぞ。」
「我々はシュツットガルドに出発だ。」
肩を組んで退場。
ふたりはそのうち。
シュツットガルドに帰還。
リリア。
「只今戻りました。」
ジャルダン公爵。
「ご苦労。」
「首尾は?」
クラリス。
「このノートにすべて書き記しました。」
ジャルダン公爵。
「素晴らしい。」
「そなたらに休暇を授けよう。」
「褒美もあるぞ。」
「まずはのんびりするがよい。」
「そしてアイドルの稽古を再開しよう。」
リリア。
「了解しました。」
退場。
クラリスは家に戻る。
父親から話を持ち出される。
牧師。
「クラリス。」
「貴方は半ば捨て子という話はしましたよね。」
クラリス。
「心得ています。」
牧師。
「レンディル・エーデルシュタインは知っていますか?」
クラリス。
「知っています。」
牧師。
「貴方はその息子であるレフィナードの娘です。」
「彼はあらぬ疑いをかけられ。」
「2人の娘を別々に預け。」
「行方を眩ませてしまいました。」
「家族に迷惑をかけまいと思ったのでしょう。」
「疑いが晴れても姿を現さず。」
「ついには行方不明となりました。」
クラリス。
「私はあまりそういうことは気にかけていなかったもので。」
「でも。」
「英傑の血筋というのは誇りに思います。」
牧師。
「貴方の親しいリリアは姉にあたります。」
クラリス。
「お姉ちゃん?」
「どうりで息が合うと思いました。」
牧師。
「レフィナードは親戚に貴方達を託しました。」
「私から話すのは以上です。」
「貴方は自由になされますように。」
大きな木の下。
リリア。
「クララ!」
クラリス。
「リリー!」
リリア。
「私達姉妹なんだって。」
クラリス。
「神秘的だわぁ。」
リリア。
「これからも一緒にいようね!」
クラリス。
「一緒にいようねー!」
ハイタッチ。
休暇は過ぎていきます。
シャルマン。
「そろそろ奥義を教えようか?」
クラリス。
「お願いします。」
街の外れにて。
アスピラスィオン。
「おい兄貴。」
「旅費が溜まるのに苦労したぞ。」
ヴァン。
「弟よ。」
「その苦労も報われるのだ。」
コパン。
「あんたがたユーモアラスですな。」
ヴァン。
「誰だ?」
「見るからに君も負けてないではないか。」
コパン。
「シャルマン将軍のファン。」
「なんてことはないよな?」
アスピラスィオン。
「その通り。」
「コネがあるのか?」
「会わせてくれよ。」
コパン。
「なあに。」
「元家臣の俺のことだ。」
「しっかり会わせてやるよ。」
「ついてきな。」
シャルマン将軍と謁見できたようです。
休暇明け。
エガリテ夫人。
「さあて。」
「わたくしが直々にレッスンしてやりましょう。」
クラリス。
「お願いします。」
リリア。
「光栄ですね。」
「お願いします。」
エガリテ夫人。
「せっかくだから。」
「とことんまで行くわよ。」
ふたりは稽古に突入。
ジャルダン公爵のお城では。
新鋭のアイドルが誕生しようとしていました。
風が心地よい。
よく晴れた。
自然の美が堪能できる。
それは良い季節です。
-第一章-完-
8
アイドルのステージ。
観客が熱狂している。
音楽隊がいろんな楽曲を奏でて。
中央にリリアとクラリス。
クラリス。
「みなさーん!」
「今日は誰を持ち上げて欲しいですか?」
お客さんのひとりが出てきて。
クラリスに持ち上げられて喜ぶ。
リリア。
「リリアのマジックショー。」
「スタート!」
リリアが爆発。
リリアが別の場所に移動している。
また爆発。
観客席の後ろから再登場。
観客は大盛り上がり。
クラリス対お客さん。
剣術チャレンジ。
模造剣で観客と勝負!
今日もクラリスの全勝。
クラリスと腕相撲をしようの会。
クラリスいまだ負けなし。
腕自前の船長さんも倒してしまいました。
船長。
「ば・・馬鹿な!」
クラリス。
「普段私がどれだけ鍛えているか知らないでしょ〜。」
マッチョマン。
「私に勝てるかな?」
マッチョマン負ける。
クラリス。
「大荷物を背負ってのトレーニング。」
「過酷の極みだけれど。」
「生半可な人には負けないよ。」
マッチョマン。
「私のマッチョパワーが負けたー!」
リリア。
「リリアバーサスの時間だよ。」
「今回も抽選で選ばれた人が。」
「私に抱き着くことができます。」
「それ以前にリリアを捕まえられるかな?」
女性参加者がやたらに多く。
男性は女性に譲る場合が大半。
今日も女性がリリアを好きにしようとチャレンジ。
リリア対観客。
超常的なリリアの回避力で。
この日も一切触れられずに。
タイムアップ!
クラリス。
「残念!砂時計が全部落ちた。」
リリア。
「せっかくのサービス。」
「果たして捕まえられる人は出るかな〜?」
歌とダンスが開始されます。
エガリテ夫人。
「すぐに人気が出ましたわね。」
ジャルダン公爵。
「踊る以外にもいろんな芸を持っているし。」
「開発もしている。」
「いつも斬新な事をやってくれるし。」
「中々サービス精神が豊富だ。」
「見込んだ通りだな。」
エガリテ夫人。
「毎回いろんなことをやってくれる。」
「いままでに無いアイドルですわ。」
ジャルダン公爵。
「お前もけっこう喜んでいるな。」
エガリテ夫人。
「だって見ていておもしろいもの。」
ジャルダン公爵。
「生き甲斐もこんな所にあるものだ。」
「あの姉妹は伝説になるかもしれぬ。」
観客は大盛り上がり。
姉妹は劇や武闘もできるので。
いろんな事をやり放題です。
非凡な姉妹は。
一般人からの熱い支持を受け。
上流階級から。
ご法度であるアイドルへの求婚をしようと。
熱烈にアピールされるほどで。
必然の人気を獲得しておりました。
この地位は不動のものになり。
姉妹安住の場所となります・・・・。
9
皇帝。
「余は何か変だ。」
「いや。」
「国全体が何か変だ。」
主宰。
「誠心誠意情報を集めておりますれば。」
「恐らくほら吹き連中の仕業でしょう。」
皇帝。
「そのような輩は容赦せぬ。」
「見つけ次第厳罰だな。」
主宰。
「あちらこちらで噂に次ぐ噂。」
「その通り。」
「見つけ次第に捕まえております。」
「どこが情報の発信源だか。」
「特定に時間が掛かります。」
皇帝。
「人員を増やそう。」
「そろそろ根絶やしにしてくれる。」
主宰。
「人員は五倍でよろしいので?」
皇帝。
「やってしまえ。」
「ただし。」
「冤罪には気をつけるのだぞ。」
主宰。
「承知しました。」
「忍びを各所に潜らせます。」
「必ずや世の動乱。」
「沈めてご覧に差し上げます。」
退場。
あれから二年。
リリアとクラリスは一人前のアイドルになり。
各地を巡っています。
ある日。
ジャルダン公爵から呼び出されます。
ジャルダン公爵。
「諸君の働きは庶民の活力剤だ。」
「栄養剤だ。」
「金塊だ。」
「燃料だ。」
「お勤めご苦労。」
「中々の人気じゃないか。」
「民の忠誠心もくすぐられるというもの。」
「そなたらを採用したのは正しかった。」
「最初から目に見えていたではないか。」
リリア。
「お褒めに預かり光栄です。」
クラリス。
「ありがたき幸せ。」
ジャルダン公爵。
「さて。」
「ミュンヘンには我が娘ソレイユが居る。」
「街を治めて発展に尽力しているのだが。」
「何かと力になってくれ。」
リリア。
「承りました。」
クラリス。
「お役に立ちとうございます。」
ジャルダン公爵。
「よろしくな。」
退場。
ミュンヘンに向かうことになりました。
コパン。
「俺の馬車は一味違うぜ?」
クラリス。
「どう違うんですか?」
コパン。
「有能な馬車というものを見せてやろう。」
「あそこに見えるのがカスカード川。」
「上流は釣り名人で賑わうのが秋の恒例行事。」
「遠くに見えるのが登山家で人気のグリーズ山というわけさ。」
「もうすぐウルムの街だが。」
「ここはかつて世捨て人が集まった秘境なのだ。」
クラリス。
「すごい見識ですね。」
コパン。
「どうだ。」
「有能な馬車の乗り心地は。」
「ちなみに。」
「車輪は最新の技術で造られており。」
「走行の振動は従来より抑えられているぞ。」
「悪路の走行も可能だ。」
「馬は馬力とスタミナがあるブランド馬だったりするぞ。」
クラリス。
「まあなんて素敵。」
「貴方の使っている馬車は凄い素敵。」
ウルムを通過。
コパン。
「もうすぐアウクスブルグだ。」
「この街には民兵の組織があって。」
「戦争の時には真っ先に召集され。」
「平時は各地の治安維持要員や。」
「各国の傭兵として存在している。」
「少し会ってみるか?」
「おもしろい奴らだぜ。」
クラリス。
「会えるんですか?」
コパン。
「ほれ。」
「街の門番になっている。」
「おいこら。」
傭兵。
「私の名前はおいこらではありません。」
「ローマの歩兵とお呼びください。」
「ローマの誇りと名誉にかけて。」
「ローマの歩兵とお呼びください。」
コパン。
「おいローマの歩兵。」
傭兵。
「私はおいローマの歩兵ではありません。」
「ローマの歩兵で御座います。」
コパン。
「ローマの歩兵。」
傭兵。
「通行ならどうぞ。」
「近頃怪しい連中が増えまして。」
「門番をしております。」
コパン。
「美しいぞ。」
「男性の美だ。」
傭兵。
「これは光栄ですな。」
「私の身分も少しは上がりましたか。」
コパン。
「ううむ。」
「おもしろい奴だ。」
傭兵。
「私はううむおもしろい奴だ。」
「ではありません。」
「ローマの歩兵です。」
コパン。
「解ったから!」
「通るぞ。」
クラリス爆笑。
アウクスブルグを通過してミュンヘンに入りました。
装飾が施された民家や商店が並んでいて。
綺麗な街並みです。
ソレイユちゃんが歓迎してくれましたよ。
ソレイユ。
「初めまして。」
「ミュンヘンの主宰をしているソレイユです。」
「紹介状の通りですね。」
リリア。
「リリアです。」
クラリス。
「クラリスです。」
ソレイユ。
「あらまかわいい。」
「これは何かしら。」
「惚れてしまったような。」
「私の中に潜む情念だけが私を突き動かす。」
「抱きしめてしまいたい。」
「なんてこと。」
「女の子同士で恋をしてしまったのかしら。」
「せっかくだから熱い抱擁を。」
「だめよソレイユ。」
「そんなことしたら情欲の奴隷だわ。」
リリア。
「あまり考え過ぎないでください。」
クラリス。
「そうですよ。」
「抱擁ならいいですよ。」
ソレイユ。
「キャー!」
「たまらない。」
ふたりと抱擁する。
議会の中へ通される。
ソレイユ。
「貴方たちを呼んだのは。」
「この街で起きている面妖な様子を解いてほしいの。」
リリア。
「面妖な?」
ソレイユ。
「ええ。」
「何か不審な噂が次から次へと。」
「市民の一部が変な思想を持っていて。」
「謀反の疑いを掛けられた家臣も居て。」
「いろいろ探ってはいるけれど。」
「決定打に欠けますね。」
「今は思想家ティグルをマークしているわ。」
「奴は愚かな政治改革をしようとしているから。」
「そのうち逮捕するつもりだけれど。」
「この街どうしたのかしら?」
リリア。
「了解しました。」
「いろいろ探ってみますね。」
クラリス。
「お任せあれ。」
ソレイユ。
「頼むわね。」
退場。
リリア。
「聞き込み調査する?」
クラリス。
「例の思想に侵された市民を見つけようよ。」
リリア。
「キレがいいね。」
クラリス。
「そのくらいは女性として当然でしょ。」
いろいろ探し回って。
変な思想の集会を見つけ出し。
集会の影でひとり捕まえて。
全部吐かせました。
市民。
「すべては民が決めることだ。」
「民はすべての権限を欲する。」
「ひとりの指導者によって。」
「議会を設けずに。」
「絶対者によって導かれるのだ。」
リリア。
「これって?」
クラリス。
「かつてのギリシアで失敗した衆愚政治の思想ですよ。」
「おまけに独裁者を支持している。」
「典型的な危険思想だね。」
「どうやって刷り込んだの?」
リリア。
「集会の様子を見てみよう。」
「裏から入るよ。」
思想家ティグル。
「民の自由と。」
「夢と希望と。」
「民の社会は一層に幅広く。」
「我々市民の天下。」
「すべての市民が王となるのだ。」
リリア。
「あらまあ理屈がお上手。」
クラリス。
「あそこまで詭弁も上手になるものなんですね。」
リリア。
「警察が集会の中に混じっているから。」
「私達は撤収しよう。」
撤収。
ソレイユ。
「うーむ。」
「街の様子が段々に変になってきた。」
「貴方はどう思うの?」
リーブル。
「こう思います。」
ソレイユ。
「なるほど。」
数人の兵士に囲まれる。
ソレイユ。
「少し遅かったかな。」
リーブル。
「我々が一枚上手でしたかな?」
味方の兵士が突入してくる。
ソレイユ。
「一応は把握していたけれど。」
「逮捕が少し遅かったようね。」
リーブル。
「我々の動向を把握していたのか!?」
「ええい!逃げろ!」
「周りは敵だらけだ!」
「薙ぎ払って道を開けろ!」
ソレイユ。
「うーん。」
「僅差だったかなぁ。」
リーブル逃走。
街中が慌ただしい。
リーブルは潜伏。
知らせを受けたアウクスブルグの傭兵も合流。
伝達係がリリアとクラリスを発見して。
要件を知らせる。
リリア。
「この報告書をソレイユちゃんへ。」
伝達係。
「了解。」
クラリス。
「反乱が起きたようね。」
リリア。
「どうする?クララ。」
クラリス。
「私達はもう少し活動しましょ。」
夜間。
街の街道は封鎖されました。
夜警が急増して。
いろいろ見て回っています。
思想家ティグル。
「裏から政治を改革しなければ。」
「この国の未来は無い。」
「私は人類の為を思うならこそだ。」
夜警。
「止まれ!」
思想家ティグル。
「警察が何の用だ?」
夜警。
「そろそろ貴様を逮捕する。」
思想家ティグル。
「なんということだ。」
「私を逮捕したらこの国の未来は・・・・。」
捕まえられて連行される。
朝。
ソレイユ。
「ティグルを捕まえたわ。」
リリア。
「一部市民が血気に流行っていましたよ。」
ソレイユ。
「まあなんてこと。」
クラリス。
「市民の一部が暴徒化するかもです。」
ソレイユ。
「うーん。」
「困ったなあ。」
「こんなときはこれ!」
「宗教家ミエルに連絡を。」
「さっさと啓蒙活動を本格化させて。」
役人。
「了解!」
ソレイユ。
「引き続いて情報収集をお願いね。」
リリア。
「頑張ります!」
街中の路地裏。
コパン。
「変な集団の裏切り者が居たよ。」
「お金で買収して情報を得た。」
「リーブルは今日の夜に獣道を使って脱出するらしい。」
「護衛の数は違反者続出で満足じゃないんだってさ。」
リリア。
「よくやってくれました。」
「それでこそ男です。」
コパン。
「女性に褒められるのは気持ちがいいものです。」
クラリス。
「ソレイユちゃんに知らせて。」
「私達も参加するよ。」
議会。
ソレイユ。
「あと一匹捕まえて終了したらいいけれど。」
役人。
「宗教家ミエルの働きは中々のものですよ。」
「流石に著名なカトリックの神学者だけあります。」
ソレイユ。
「あの娘たちが掴んだ情報。」
「無駄にはしないわ。」
その日の夜。
地図通りの場所にて。
リーブル。
「この道を抜ければ。」
「旧街道だ。」
反逆者。
「ベルリンのオリゾンと合流しましょう。」
リーブル。
「そうしよう。」
兵士。
「待っていたぞ。」
クラリス。
「あれが反逆者。」
リリア。
「中々の悪者だよね。」
兵士が数百人。
リーブル。
「なんだと。」
後ろからも兵士数十人。
リーブル。
「草むらに逃げろ!」
「林だ!そこに!」
リーブルの護衛は全滅。
クラリスの足が速いので。
簡単に追い詰めました。
リリアも後に続きます。
リーブル。
「この国は根本的な改革が必要だ。」
「人類は転換期なのだ。」
「いつまでも同じ周期を繰り返す人類の変化の時!」
クラリス。
「それは貴方が勝手に決めたことでしょ!」
「世界の自然な流れに逆らっている!」
リーブル。
「私こそが人類の総意!」
リリア。
「人々は貴方を必要とはしていません。」
「人々は王政を気に入っています。」
「だから何も不満を言いませんし。」
「元気に暮らしています。」
「貴方はそれを邪魔しただけ!」
リーブル。
「嘘だ!嘘だー!」
抜刀。
クラリスの目にも留まらぬ早業。
リーブルの剣が撃ち落とされる。
リーブル捕まる。
兵士。
「まさか草むらに突進するとは。」
「援護感謝致します。」
クラリス。
「感謝の心は受け取らせて頂きます。」
リリア。
「事が終わったから。」
「引き揚げましょう。」
「リリアは眠いです。」
夜明け。
議会。
ソレイユ。
「やっと逮捕できた。」
「やっと全滅させた。」
「協力してくれてありがとね。」
リリア。
「感謝の気持ちは全力で受け止めます。」
クラリス。
「まだ一部の市民が狂っているのでは?」
ソレイユ。
「啓蒙活動が上手く行っているから。」
「このまま行けば思想改造は解けるわ。」
リリア。
「聖職者の協力も必要ですね。」
ソレイユ。
「確かに。」
「聖書を活用して。」
「思想改造が解けるのを加速させましょう。」
「あなた。」
「新聞にこれ書いて。」
「聖書の一文を乗せるのよ。」
「政府側からもいろいろやらないと。」
役人。
「早急にやらせて頂きます。」
ソレイユ。
「教会の連携はどうなっているの?」
役人。
「それがえらく消極的で。」
ソレイユ。
「うーん。」
「あまり積極的にやるとかえってよくないかも。」
「もう少し具体的に。」
「そう伝えて。」
役人。
「承りました。」
ソレイユ。
「お父様に良い報告ができそう♪」
リリア。
「私達はこの辺りで失礼します。」
ソレイユ。
「ありがとねー☆」
5日後。
街はいつの間にか正常化していました。
それを見回した後。
聞き込みをしても。
みんな平常心を取り戻していて。
ミュンヘンから帰還することに決めました。
帰路。
アスピラスィオン。
「おい兄貴。」
「コパン様じゃあありませんか。」
「丁度お訪ねする所でしたね。」
ヴァン。
「弟よ。」
「最大限の敬意を払うのだ。」
「我々の恩人なのだから。」
コパン。
「あんたら久しぶりだね。」
アスピラスィオン。
「これはこれはコパン様。」
「この前は取り計らって頂きありがとうございました。」
ヴァン。
「お礼をし忘れたものですから。」
「この衣装を受け取ってください。」
コパン。
「おおこれは。」
「イタリアの衣装。」
「良いものをくれた。」
「奇抜な服装は好きだ。」
ヴァン。
「気に入ってくれて何より。」
「ではまたお会いしましょう。」
コパン。
「おお元気でな。」
シュツットガルドに帰還。
城にて。
ジャルダン公爵に事の経緯を話しました。
ジャルダン公爵。
「なるほど。」
「これは皇帝に伝えねばなるまい。」
「諸君らの働きは見事であった。」
「金貨がある。」
「受け取りなさい。」
リリア。
「ありがたく頂戴します。」
エガリテ夫人。
「貴方達はだいぶアイドルに慣れてきました。」
「次は極めてみることですね。」
クラリス。
「ご助言心に刻みます。」
しばらくして。
国内では大粛清が行われました。
休暇のち。
いつもの通りにディアンドルを着せられて。
アイドルの仕事で各地のステージをこなし。
徐々に人気を獲得。
地方で一番のアイドルへと成長していきました。
22歳になったふたりは。
新たな夢に向かって進んでいきます。
それは美しい風が吹き抜けていく。
青空広がる。
草原の中心で。
女性の栄光は太陽の如く。
星のようにも輝いて・・・。
-第二章-完-
10
シャルマン。
「私の左遷が解けた。」
「ベルリンへ異動することになった。」
「お許しが出たのだ。」
クラリス。
「それは朗報ですね。」
「しかし。」
「私は少し寂しいです。」
シャルマン。
「君にはすべて教えた。」
「存分に夜遊びもした。」
「妹だと思っている。」
「また君には会いたい。」
「ベルリンを訪れた際には。」
「私を訪ねてくれ。」
クラリス。
「ああ兄上。」
「貴方に幸多からんことを。」
シャルマン。
「共に過ごした日々。」
「共に喜んだ日々を忘れない。」
シャルマン退場。
大きな木の下で。
コパン。
「あんたの依頼で調べていた両親。」
「ついに見つけたぞ。」
クラリス。
「どこに居るのですか?」
コパン。
「フライブルグに在住だ。」
「送ってやってもいいぜ。」
クラリス。
「リリーに連絡します。」
「連れてって。」
フライブルグの街の外れ。
コパン。
「この家だ。」
「誰か居ますよね。」
レフィナード。
「こんな私に何か用ですか?」
リリア。
「この人がお父さん?」
クラリス。
「こんにちは。」
レフィナード。
「ということは。」
「ついに見つかったというわけか。」
「入りたまえ。」
家の中。
クラリス。
「貴方が私を今の両親に預けたのですね?」
リリア。
「私も。」
レフィナード。
「それはすまなかった。」
「謀反の疑いを掛けられ。」
「逃げ惑う中で貴方達を手放した。」
「追手がとんでもなかった。」
「そいつらは実は反逆者で。」
「後に捕らえられて処刑された。」
「奸智を持つ奴らだったよ。」
クラリス。
「それで私を預けたんですね。」
レフィナード。
「私は父親に遠く及ばず。」
「劣等感に苛まされ。」
「ついには世捨て人となって各地を放浪。」
「今はこうしてこの地に定住し。」
「娘にも会わす顔が無かった。」
「私は堕落してしまったんだ。」
リリア。
「貴方は私達の父親であれば。」
「それでいいんです。」
クラリス。
「父親として存在してくれるだけで良かったのです。」
レフィナード。
「私は必死になり過ぎた。」
「だから。」
「いままで隠れ住んでいたのかもしれない。」
「複雑で言葉にできない心境だったよ。」
「しかしいまこうして娘と再会した。」
「立派になったものだ。」
「私の父親と影が重なる。」
「おいフレーズ。」
「私達の娘だぞ。」
フレーズ。
「ああなんてこと。」
「でもこんな惨めな経歴を持つ。」
「私たち夫婦の元に居たら。」
「ああ・・・なんてこと。」
リリア。
「何か仕方がない事情は解りました。」
「でも私達は立派に育ちました。」
「自分を責めないで。」
クラリス。
「私は普通に受け入れられます。」
フレーズ。
「きちんとした人に預けたけれど。」
「娘の成長を見たかったわ。」
「でもこうして訪ねてきてくれた。」
「私は生涯の幸福に浸ろうとしています。」
レフィナード。
「今まで顔を出さずにすまなかった。」
「私達は失念の底に居る。」
「しばらくしたらウルムに引っ越す。」
「娘たちよ。」
「また訪ねておくれ。」
「元気でな。」
退場。
クラリス。
「何か複雑な心境のようですね。」
リリア。
「何か失意の底に居ます。」
クラリス。
「でも会えて良かった。」
リリア。
「だよねー。」
コパン。
「どうだ?」
「俺の手腕は。」
クラリス。
「男らしい男って所ね。」
コパン。
「だろ?」
「今日は上機嫌で馬車を走らすぜ。」
「さあ乗った乗った。」
フライブルグを後にしました。
11
ミュンヘンの議会。
ソレイユ。
「それでフランクフルトで内乱が発生してね。」
「リュスィオール公が対応に追われているの。」
リリア。
「この国はどこかおかしいのかな?」
クラリス。
「腐ってはいませんね。」
ソレイユ。
「変な奴らがここの所増えてしまったから。」
「厳しく取り締まってるわ。」
「隣国のどこかが干渉しているみたい。」
「内部分裂させて争わせようっていう作戦かもね。」
クラリス。
「法律はどうなっているの?」
ソレイユ。
「制定済みよ。」
リリア。
「懸賞金を出してみれば?」
「変な輩の情報を伝えて。」
「それが有益なら報酬という具合に。」
ソレイユ。
「それいいわね!」
「すぐにでも採用したいわ。」
クラリス。
「結局。」
「工作を行って内乱を発生させて。」
「この国を乱そうという筋書きだったのかな。」
ソレイユ。
「中々手の込んでいるわよね。」
「今は正常になっているわ。」
「早めに手を打って。」
「元になっているものを排除するわね。」
懸賞金をかけて捜査したところ。
皇帝の家臣であるリュイソー将軍による奸計だと判明したのです。
リュイソー将軍は権力を握るべく。
自分に敵対する武将を貶めたり。
皇帝を引きづり降ろして。
実権を握るべく。
長い間活動していましたが。
ほとんどは組織に任せるだけで。
自分はほとんど何もせずにいたので。
発見することが中々できませんでした。
組織の上層部は潜伏したり。
隣国に逃走していましたので。
この都度捕らえて吐かせることで。
すべてが判明しました。
リュイソー将軍は一度は逃げましたが。
市民に見つかって捕らえられて処刑されました。
ソレイユ。
「やったー!」
「私も中々役に立つじゃん。」
「素晴らしい案をありがとね!」
リリア。
「お役に立てて良かったです。」
クラリス。
「これでこの国は健康になるでしょうか?」
ソレイユ。
「なるなる!」
「きっとなる!」
「病気を取り除いたから。」
「きっとなるなる!」
リリア。
「この国の動乱は終了したみたいだね。」
ソレイユ。
「そうだ!」
「職人の女性たちにいろいろ作らせていてね。」
「カワイイものグッズを売り出したんだ。」
「宣伝してくれると助かるわ。」
クラリス。
「チラシがあるなら貰うだけ貰いますよ。」
「きちんと宣伝しておきます。」
ソレイユ。
「ありがとー!」
「いろいろ助かるわあ。」
「あと。」
「今夜一緒に寝ない?」
リリア。
「私はいいですよ。」
クラリス。
「そんなぁ。」
「好きになっちゃう。」
その夜は三人一緒に寝ましたよ☆
ソレイユ。
「アイドルを卒業したら。」
「私の側近になるのかしら?」
「それだったら。」
「話は早いわよね。」
リリア。
「おはようございます。」
クラリス。
「おはようございました。」
ソレイユ。
「おはー☆」
「早速。」
「アイドルのコンサートお願いします!」
リリア。
「合点承知です♪」
クラリス。
「腕の見せ所ですね!」
さんにんはとても仲が良く。
連携も取れていて。
美しい関係が築けそうです。
大都市の議会には。
女性たちの賑やかな光景が広がり。
空は澄みとおって。
綺麗な風は吹き抜け。
女性の栄光はまたひとつ輝いています。
12
皇帝の城。
ディアンドル姿のふたり。
皇帝。
「そちらを呼んだのは他でもない。」
「美しき歌と踊りを披露するとな。」
「余にも見せてくれ。」
「その華麗な姿を。」
リリア。
「では行きますよ。」
クラリス。
「姉妹のボヌールダンスを!」
ふたりの評判はいつしか皇帝にまで届き。
皇帝と謁見することができたのです。
ダンスが3幕終わる。
皇帝。
「お見事!」
「華麗なステップといい。」
「連携が取れた鮮やかさといい。」
「芸術と呼べますな。」
「夜の宴会にも出席して頂きたい。」
「今宵は宴と参ろう。」
リリア。
「喜んで務めさせて頂きます。」
宴会は大成功。
ベルリンの騎士や上流階級の間で定評を得ました。
騎士。
「結婚したいなぁ。」
シャルマン。
「ふたりともヘスティアと同じですよ。」
騎士。
「なんということだ。」
「ああ!」
「何人も求婚を断っている姿が見えるぞ。」
「なんということだ。」
朝。
皇帝。
「昨晩は楽しかったぞ。」
「ところで。」
「ドルトムントで発生した内乱はどうなった?」
主宰。
「リュスィオール公が見事に鎮圧致しました。」
「しかし。」
「数年前に粛清した愚か者たちが。」
「再び活動を開始しております。」
皇帝。
「またか。」
「さっさと鎮圧してしまえ。」
「前よりも強力にな。」
主宰。
「仰せの通りに。」
皇帝。
「それで。」
「あの娘たちはヘスティアと同じようだと言うのだな?」
主宰。
「はいその通りでございます。」
皇帝。
「普通の女性とは別格過ぎるな。」
「素晴らしい女性が居るものだ。」
「目をつけておこう。」
「高い身分を保証してやっても良いが。」
「まずは熟して貰わねばな。」
「誰だ?」
「入れ。」
リリア。
「貴方様は何か術に掛かっているのかもしれません。」
クラリス。
「ふと言動を見まして。」
「私が察しました。」
皇帝。
「そうかもしれない所があるぞ。」
「少し見てくれぬか?」
リリア。
「了解しました。」
「いちにのさんでぱっと解けます。」
「はい。」
皇帝。
「何かすっきりした感覚があるな。」
「混沌とした我が思いは整理整頓され・・・。」
「誰が術を掛けたのだ?」
「怪しい奴を見つけて尋問せよ。」
大臣。
「すぐにでも。」
皇帝。
「なんと。」
「褒美は出すぞ。」
「下がってよい。」
リリアとクラリス退場。
主宰。
「書き置きしておきますか?」
皇帝。
「そうしよう。」
帰宅。
ジャルダン公爵。
「ベルリンの大宴会は大成功だった?」
「諸君らは実に素晴らしい!」
「今度も活躍してくれたまえ。」
リリア。
「お褒めに預かり幸せで御座います。」
ふたりでリリアの図書館。
リリア。
「本が前よりいっぱいある。」
クラリス。
「新刊が入ったんだね。」
リリア。
「そういえばクララ。」
「聖書のローマ人への手紙に。」
「永遠の命についての記述があるって。」
クラリス。
「それを実行せし者は罪と老いから解放させられし。」
「私の家に伝わる言葉だよ。」
リリア。
「実行する?」
クラリス。
「祈りを捧げるのかな?」
リリア。
「なんか少しずつ解ってきたかも?」
クラリスは少しでも向上しようと。
日々トレーニングに励み。
図書館に通い詰めています。
リリアは自分の学を生かして。
学問の研究を始めました。
ふたりとも一生懸命です。
ジャルダン公爵。
「そなたらは。」
「皇帝の所へ行かぬか?」
リリア。
「何を言います。」
「公爵様が人として好きなのですから。」
「私達はここを生涯の居場所と決めたのです。」
クラリス。
「私は公爵様を慕っているのです。」
ジャルダン公爵。
「失言だったかもしれぬ。」
「私は恵まれたのだな。」
「娘のソレイユを頼む。」
「いずれはこの国の主宰の側近になってくれ。」
「そなたらが良ければでいい。」
リリア。
「ありがとうございます。」
クラリス。
「ご期待に添えるように頑張ります。」
大きな木の下でふたり。
クラリス。
「永遠の命が得られるかも?」
リリア。
「そうなるように尽力しよう。」
「もっともっと頑張らないと!」
クラリス。
「そうだね。」
「先へ先へ。」
「未来の先へ。」
「辿り着こう!」
「ふたりで!」
リリア。
「一緒に!」
ふたりでハイタッチ。
ふたりの女性の旅路は。
終点に向かおうとしています。
道がどんなに遠くても。
一歩一歩。
歩みを重ねて。
最後には辿り着くのです。
この世の結末に・・・。
-第三章-完-
13
クラリス。
林を散歩中。
美しい自然の中を。
川の流れに沿って。
進んでいきます。
広場でしょうか。
開けた場所に出て。
空を見上げていましたら。
叢のほうから。
ひとりの男性が出てきました。
抜刀しています。
クラリス。
「何者ですか!?」
???
「剣を抜け。」
クラリス。
「理由は何です!?」
???
「剣を抜きなさい。」
クラリス抜刀。
男性は激しく斬りかかると。
剣と剣が交わる接戦になりました。
スピードに優れるクラリスの剣はなんと。
男性は簡単に避けていきます。
男性の剣戟は鋭いのですが。
受けきれないスピードではありません。
中々決着が付かず。
長期戦に突入。
睨み合っては撃ち合いになり。
距離が離れては睨み合いになり。
10分も経過してしまいました。
???
「力を出し惜しみするのは良くないぞ。」
クラリス。
「まだまだっ!!」
再び激しく切りつけ合いますが。
相手に刃が届きません。
相手の刃もクラリスに届きません。
男性は距離を離すと。
???
「貴方は私と戦って一歩も引かなかった。」
「だから貴方は英傑の血筋で間違いない。」
男性は去っていきました。
リリアは上流で川遊びをしていましたが。
さあ帰ろうと思ったとき。
謎の人物が現れました。
謎の人物は不思議な術を使って。
リリアに幻を見せたり。
惑わしたりしてきました。
リリア。
「なになに!?」
リリアには効力があまり無いようです。
リリアは幻を打ち破りました。
謎の人物は惑わして来ましたが。
自らの力で打ち勝ちました。
リリアが反撃すると。
???
「お前はその力を正しく使っているようだ。」
「力に溺れた愚か者とは全く別物だ。」
謎の人物は突然消えました。
街の外れ。
クラリス。
「なんか不思議な男性と応戦したよー。」
リリア。
「リリアも謎の人物と交戦したよー。」
クラリス。
「なんだろう?」
リリア。
「さあ?」
クラリス。
「でも敵意は無かった。」
リリア。
「リリアの相手も敵意は感じませんでした。」
クラリス。
「なんだろう?」
首をかしげて。
そのまま家に帰ることにしましたね。
さて。
南部の地域には目立ったライバルが居ません。
確かに踊りが上手な娘や。
歌が上手な娘が居ますが。
リリアとクラリスみたいに。
特別な技能を持っているわけではありません。
逆に言えば。
歌とダンスが上手なだけで。
他には取り柄が無いのです。
エガリテ夫人。
「もう!どうしてこんな娘ばかりなのよ!」
ジャルダン公爵。
「生まれ持った能力だけでは勝てないという事実を。」
「知ることができずに。」
「認めようともしないのだ。」
「こればかりはしょうがない。」
エガリテ夫人。
「重要なのは才能ではなくて。」
「育成方法でしょ?」
「初めから才能がある娘は駄目ね。」
「それだけで勝てると信じ込んでいる。」
ジャルダン公爵。
「初めから才能があるのなら。」
「それを伸ばせばいいのだが。」
「どうも自惚れてしまって。」
「これまたしょうがない。」
エガリテ夫人。
「天才同士の戦いを経験したことがないものだから。」
「もう!」
「リリアとクラリスとは大違いよ!!」
ジャルダン公爵。
「人の無能さを責めてもどうにもなりはしないぞ。」
「能力以上の事を責めるのは少々酷な話だな。」
エガリテ夫人。
「あの娘たちは普通の練習しかしないのよ!!」
「普通にやって高望みをする。」
「普通の練習をするだけで勝てたらこの世界はちょろいものですよね!!」
ジャルダン公爵。
「落ち着け。」
「不満は分かる。」
「だが冷静に見極めるのだ。」
「なるほど。」
「先天的な才能というのは早熟なだけなのかもな。」
「これまで見た王者というのは血の滲む鍛錬の成果だったからな。」
エガリテ夫人。
「わたくしは少し風にあたってきますわ。」
「女は理性を失ったら最期です。」
退場。
ジャルダン公爵。
「神は能力よりも人間的な素質を優先するという。」
「牧師の間で噂があるが。」
「そういうことなのだろうか?」
再び。
リリアとクラリス。
本を執筆していますね。
姉妹の共同作品です。
「身近な出来事」というタイトルで。
ちょっとした小ネタを集めた。
実話に基づく興味深い本です。
出版されましたが。
人気はそこそこ。
ですが。
本の内容が貴族に気に入られました。
アイドルとしての人気はかなりのもので。
多芸多才の姉妹は。
最初から好スタートを切ったまま。
どんどん膨れ上がっています。
他の新鋭アイドルも姉妹には及ばず。
人気を独占するほどです。
各地のライブが開催され。
いつもはアイドル業に没頭していますね。
度々新聞に掲載されております。
ドルトムントとベルリンのアイドルは。
かなりのレベルを持っていて。
姉妹でも接戦になってしまいます。
南部地域では依然として無敵な姉妹です。
クラリス。
「もう少し向上の余地ないかな?」
リリア。
「なんでもやってみる?」
クラリス。
「そうしよう。」
「可能性を広げなきゃ。」
ふたりの姉妹は。
今日も鍛錬の日々です。
14
オスマン・トルコ帝国がウィーンを包囲してしまいました。
皇帝は大軍を率いて出陣して行きました。
ジャルダン公爵は反乱の対策組みに充てられます。
ソレイユちゃんの議会。
リリア。
「戦争が始まったね。」
クラリス。
「勝ってほしいな。」
ソレイユ。
「私達の力を世界に。」
「いいえ。」
「歴史に刻むチャンスよ!!」
役人。
「私は平和な方が好まれます。」
ソレイユ。
「平和一辺倒になったら腐りませんか?」
役人。
「私は戦争には反対です。」
ソレイユ。
「私達の血肉による格闘は。」
「主権と暗闇の世界の支配者たち。」
「天にいる悪霊に対してのものです。」エペソ6:12
役人。
「反論できませぬ。」
ソレイユ。
「いいえ。」
「平和を訴えるのは必要なことです。」
「でも主は血の値を要求すると仰せになられました。」創世記9:5
「人は好きに振る舞う以上。」
「戦争は避けられない運命です。」
役人。
「では。」
「私は私なりに平和を訴え。」
「行き過ぎた戦争があれば否定し。」
「無駄な争い事を非難しましょう。」
ソレイユ。
「貴方はそれでいいの。」
「ご立派。」
クラリス。
「敵の数は?」
ソレイユ。
「10万よ。」
「我が軍は8万。」
リリア。
「数では劣ってますね。」
ソレイユ。
「錬度では格段に上よ。」
「知ってる?」
「強化兵の事。」
クラリス。
「過酷な訓練を課して人の域を超えた力を持つ軍勢?」
ソレイユ。
「私が育成しているのよ。」
「まあ見てなさい。」
「コーヒー来たわよ。」
さんにんでティータイム。
カードゲームをやりました。
対戦成績は互角ですよ。
さんにんで話し込んで。
いろんな話をしました。
従軍するアイドルも居るそうで。
兵士の活力剤になっています。
士気を上げるのに尋常じゃないくらい役に立つそうです。
ウィーンを包囲したオスマン・トルコ帝国軍。
包囲を解いて。
平原で戦闘を開始しますが。
明らかに錬度の差が有り過ぎて。
時間が経つにつれて。
オスマン・トルコ軍が劣勢になっていきます。
精鋭部隊を多数育成しておりましたので。
特にプリュネル部隊が強く。
押し負けてオスマン・トルコは敗走しましたが。
追撃がえげつなかったですね。
女性軍師ローリエの軍略は敵にとって危険極まりなく。
女性将軍スィゴーニュの戦場指揮は素晴らしく。
必然の勝利でした。
味方の損害は少なく。
オスマン・トルコ軍は負傷者を置き去りにして。
本国に撤退。
女性の力に恐れおののき。
一切の動きを見せなくなりました。
活躍した将軍や兵士は新聞に大きく報じられ。
その中に。
レフィナードの文字がありました。
クラリス。
「あれ?」
「お父さんだ。」
リリア。
「見せて。」
クラリス。
「いつの間に?」
リリア。
「お父さんやるじゃん。」
お父さんが来訪しましたよ。
レフィナード。
「娘よ!」
「私は蘇った!
「父のようになれた!」
フレーズ。
「この人自暴自棄になって敵陣に突進していったんだって。」
「そうしたら。」
「味方も釣られて大手柄。」
「見事に有名人の仲間入りだわぁ。」
クラリス。
「お父さんやったね!」
レフィナード。
「これで正々堂々娘と向かい合える!」
「私は!私は!」
「うおおおおおおおぉぉぉ!?」
リリア。
「興奮のし過ぎですよ。」
この日はパーティーでしたね。
レフィナード。
「雑念は払拭した。」
「これからは正面から娘と向かい合おう。」
「また会えるといいな。」
「さらば!」
クラリス。
「お元気で!」
リリア。
「またねー!」
クラリス。
「生まれの親より育ての親でしょうか?」
「私って何の抵抗もないですし。」
リリア。
「私達にきちんと知恵があるからだよ。」
クラリス。
「そうよねー。」
ふたりで手を繋いで。
帰宅していきました☆
15
オリゾンという組織のボスが潜伏していましたが。
ついに発見されて。
各地を逃げ惑っています。
懸賞金が掛けられました。
討ち取るか捕らえた者は金一封。
クラリス。
「手柄を取るチャンス?」
リリア。
「どこに居るか解らないよ。」
クラリス。
「それもそうだよね。」
ふたりでお散歩♪
いつもの川が流れる道。
森があって。
リンゴの木があって。
オレンジの木もある。
誰が植えたのでしょうか。
誰でも取れるように野放しです。
街道は封鎖されており。
市民や巡回兵士が狙っております。
市民は懸賞金に目がくらんで。
武器を手にして歩き回っているほどです。
ラルム。
「いつまで逃げ続ければいいのやら。」
「ついには政権転覆。」
「失敗してしまったぞ。」
サーブル。
「各地を説得して。」
「反乱を起こさせようとしたが。」
「鎮圧されてしまった。」
「各なる上は。」
ラルム。
「人質を取りながら亡命するに限る。」
サーブル。
「そうと決まれば適当な人物は居ないか?」
ラルム。
「この近くなら。」
「ソレイユという主宰が居る。」
「適当か?」
サーブル。
「フランス王国かオスマン・トルコか?」
ラルム。
「いいやイギリス王国だ。」
サーブル。
「よし行くぞ。」
ミュンヘン。
ラルム。
「残念だが。」
「護衛が多い。」
「やめておこう。」
サーブル。
「手勢で強引に行こうぜ。」
ラルム。
「やってみようか。」
情報収集用スパイに発見されました。
サーブル。
「ちくしょう。」
ラルム。
「簡単に失敗した。」
シュツットガルドまで落ち延びて。
そのままフランス経由でイギリス王国に行くつもりのようです。
サーブル。
「もう誰でもいいから人質にしろ。」
ラルム。
「そうするかな。」
クラリス。
「なにあの人達?」
リリア。
「手配中の人物のようだね。」
クラリス。
「少し追ってみる。」
「リリーは?」
リリア。
「もちろん行くよ。」
2キロほど追いかけました。
ジャルダン公爵の手勢も追いかけていて。
街道の真ん中で戦闘が発生。
野に逃げ込んだふたり組みを見失ってしまいました。
リリアとクラリスは追走を断念。
明け方。
クラリスが朝のトレーニングに出かけます。
リリアも合流。
マラソンをしつつ。
昨日逃したふたり組みを探しています。
サーブル。
「あの女性はどうかな?」
ラルム。
「誰でもいいから民間人を取れ。」
クラリスとリリアの近くで。
民間人が人質に取られました。
民間人。
「ああなんてこと。」
サーブル。
「さあどうだ。」
ラルム。
「このまま連れて行く。」
クラリス。
「見つけましたよ。」
リリア。
「随分と愚行をやらかしましたね。」
サーブル。
「女ふたり?」
ラルム。
「待て!」
「只者じゃないぞ!」
サーブル。
「剣には自信があってな。」
「昔は戦で何十人も倒してきた。」
クラリス抜刀する。
クラリス対サーブル。
クラリス。
「あれ?」
「この前戦った謎の男性よりも数段弱い?」
サーブル。
「馬鹿な!?」
「押されているだと!?」
サーブルに刃が届く。
サーブル倒れる。
ラルム。
「奇怪な術をどうぞ。」
リリア。
「この術の特徴・・・。」
「皇帝に術を掛けたのは貴方ですね?」
ラルム。
「そうだとも。」
「あれ?」
「少しも効かない・・・。」
リリア。
「この前の謎の人物よりも術の力が貧弱?」
「妖術の対策は万全ですよ!」
瞬時に火を発生させて。
ラルムに火が移る。
ラルム。
「これしきのこと!!」
ラルム術に掛かってよろめく。
リリア。
「優れた妖術師ほど術の耐性は強力なものです。」
「さあ。」
「一分も持ちませんよ。」
ラルム。
「ぐおおお。」
ラルム気絶する。
ジョルダン公爵の手勢が到着。
ラルムとサーブル逮捕される。
クラリス。
「やった。」
リリア。
「お手柄だ。」
後日。
ジャルダン公爵から表彰されました。
皇帝から金一封です!
クラリス。
「手柄を立てました!」
リリア。
「うふふ♪」
その日の夜。
ジャルダン公爵。
「私の見込みは正しかったようだな。」
エガリテ夫人。
「とてもいい女性を臣下に加えました。」
「育成した甲斐があったというものですわ。」
ジャルダン公爵。
「書き置きしておこう。」
「いつかはアイドルを卒業するだろう。」
「その時はソレイユの側近にしてやってくれ。」
「これを保管するように。」
使用人。
「承りました。」
エガリテ夫人。
「次の時代も黄金に輝くといいですわね。」
ジャルダン公爵。
「きっとそうなるだろう。」
「私はその証拠を見せられたのだから。」
大きな木の下。
クラリス。
「私はもっと成長したいな。」
リリア。
「人を極める?」
クラリス。
「わあなんて大望。」
リリア。
「できるのかな?」
クラリス。
「やってみる?」
リリア。
「それ行けー!!」
ふたりで花畑を駆け抜けます。
それは神聖ローマ帝国最盛期。
ふたりの女性の軌跡です。
16
夢の中。
リリアとクラリス。
草原と花畑。
遠くには林。
幻想的な雰囲気。
目の前に聖職者のような人が立っている。
語りかけてくる。
「いつか来なさい。」
聖職者は去っていく。
空には虹と。
露のような空気があった。
後に。
目が覚め。
いつもの日常の中へ。
姉妹はひとつの到達点に辿り着いたのでした。
いつもの日常の中に。
幸福を見出し。
姉妹は歩き続けます。
いつかあの景色に戻るため。
着実に。
そして優雅に。
神秘に包まれし。
ひとときを。
ここに記されし。
第四章-完-
17
皇帝の子であるゼフィール君が遊びに来ました。
お供を引き連れての。
諸国漫遊ですね。
ジャルダン公爵。
「これは皇太子殿。」
「よくぞ参られました。」
ゼフィール。
「歓迎してくれて嬉しいよ。」
「結構気が利いた歓迎の仕方だね。」
「音楽隊に騎士の勢揃いと言い。」
「さらには鳩まで用意するとは。」
「心の尽くす限りをしているよね。」
ジャルダン公爵。
「お気に召しましたか。」
「それはなによりでございます。」
ゼフィール。
「所で。」
「有名なアイドルが居るって聞いたけれど。」
「どこだい?」
ジャルダン公爵。
「リリアとクラリスのことですかな?」
「城の外で休息中で御座いますが。」
ゼフィール。
「彼女たちに会いたくてね。」
「さてどんなものか。」
「挨拶が済んだら追いかけるとしよう。」
城の外の川。
クラリスは釣りをしている。
クラリス。
「なんか大きな魚ばかり釣れるよ。」
リリア。
「ブラックバスとかいう魚らしいよ。」
クラリス。
「食べれるの?」
リリア。
「さあ?」
クラリス。
「食べれないのなら。」
「とっておいてもしょうがないや。」
「リリース。」
リリア。
「魚が元の場所へ流された。」
ゼフィール。
「もし。」
クラリス。
「おや?」
「貴方は?」
ゼフィール。
「ゼフィール。」
「皇帝の子さ。」
「君がクラリスか・・。」
「かわいい。」
「この内面から滲み出るような感覚はなんだろう。」
「決して外見だけ美しくはないような。」
「いままでの女性とはまるで違う。」
リリア。
「口説きに来たんですか?」
ゼフィール。
「おやおや。」
「当たりが強いねぇ。」
「君がリリアか。」
「不思議な魅力を感じるよ。」
クラリス。
「中々見る目が違うようで。」
「高級な壺と平凡な壺くらいは見分けられる。」
ゼフィール。
「あまり歓迎されてないみたいだね。」
「もしかして気分が違うのかい?」
クラリス。
「女性は気分がすぐに変わります。」
「口説こうとしているの?」
ゼフィール。
「いいや。」
「自分の美点に気付かない女性を見ていると。」
「是非とも自分自身に気が付いて欲しくてね。」
リリア。
「内心。」
「惚れてるんですね。」
「一目惚れ。」
ゼフィール。
「ああなんていうことだ。」
クラリス。
「言葉を取り繕って。」
「少しずつ接近しようだなんて。」
「おもしろいこと考えますね。」
「挙句の果てに。」
「私達ふたりどちらかにしようだなんて。」
「かわいい所がありますよ。」
ゼフィール。
「皇帝の子と聞いて物怖じしないとは。」
リリア。
「褒めながら接近して。」
「どちらかの好意を得ようとしましたね。」
クラリス。
「うふふ♪」
「微妙な駆け引きといい。」
「隙を見せればあっという間に射とめようとするとか。」
「男性がそんな雰囲気で話しかけるのは大抵は口説きたいとき。」
「最初から警戒していましたから。」
「中々女性の事を知り尽くしているんですね。」
リリア。
「口説き方をよく知っているよ。」
ゼフィール。
「しまったな。」
「恋の攻撃に難攻不落か。」
クラリス。
「私は恋をしなくなりました。」
「これまで数人の男性に心惹かれていましたが。」
「しばらくすると冷めてしまいます。」
リリア。
「最初から正直に接近すればいいのに。」
「そんな所がかわいいよね。」
ゼフィール。
「ああ!」
「ますます好きになってしまった。」
クラリス。
「初恋ですか?」
リリア。
「男の子ってこういうものなのかぁ。」
ゼフィール。
「もう19だよ。」
クラリス。
「ねえねえ。」
「一緒に釣りしない?」
「あと馬でレース。」
ゼフィール。
「いいのかい?」
リリア。
「女の子と遊んだことってある?」
ゼフィール。
「こんなふうに遊ぶのは。」
「まずないな。」
クラリス。
「後で見せたいものがあるから。」
「ぴちぴちはねるブラックバスは見ごたえあるよ。」
リリアとクラリス。
ゼフィール。
釣りをしたあと。
馬でレースをして楽しむ。
クラリス。
「ここの牧場。」
ゼフィール。
「なにがあるんだい?」
クラリス。
「あれ。」
ゼフィール。
「白い馬だな。」
「おいおい。」
「あれは牛じゃないか。」
「おまけに人が乗っているぞ。」
クラリス。
「馬に囲まれて育ったから。」
「自分が馬だと思っている牛だよ。」
ゼフィール。
「なんてものを見れたんだ。」
リリア。
「おもしろいでしょ?」
ゼフィール。
「次は。」
「僕の恋心をなんとかしておくれ。」
クラリス。
「私に惚れた男性は丁寧に返してあげるつもりです。」
「男の人だって惚れてきた女性は大切にするものでしょ?」
ゼフィール。
「ああ!」
「僕は女性の温もりを求めている。」
クラリス。
「生の感情が出ていらしているようで。」
「そんなに私が好きなの?」
ゼフィール。
「好きだ。」
クラリス。
「その言葉で結構。」
「好きだと言われるのは女性としては気分がいいものです。」
「でも私は誰とも結婚しません。」
「ご存知のはずよ。」
ゼフィール。
「好きだと言ってすっきりした。」
「あんなに警戒していた君たちが。」
「なぜ僕と遊んでくれたんだい?」
クラリス。
「女性の礼節ってことでいいかな?」
ゼフィール。
「なんか君達が新たな女性の領域を拡大しているような。」
「いや。」
「いままでの女性達が狭い範囲に留まっているような。」
「いや。」
「普通の女性達は何をやっているのか分からなくなってきた。」
クラリス。
「最初から自然体で来ればいいのに。」
「一生懸命考えている所がかわいいよー。」
ゼフィール。
「この女性の感覚が心地よい・・・。」
クラリス。
「この道を通れば城ですよ。」
リリア。
「貴方けっこう自分に正直ですよね。」
「何日くらい滞在しますの?」
ゼフィール。
「一週間くらいだよ。」
クラリス。
「スケジュールは空いてます。」
「今は休暇中ですから。」
「また一緒に遊びましょう。」
ゼフィール。
「いいのかい?」
クラリス。
「私も男の子と遊んでみたかったの。」
「いいじゃない?」
ゼフィール。
「喜んで。」
リリア。
「ハイタッチ!」
しばらく。
遊びの毎日です☆
18
ゼフィール君が滞在5日目で。
病を発症して床についてしまいました。
クラリス。
「難病なの?」
リリア。
「そうみたい。」
ゼフィール。
「しまったな。」
「これが自然のものであれば。」
「僕は受け入れるが。」
クラリス。
「うーん。」
「私に考えがある。」
リリア。
「ちょっと待っててね。」
ゼフィール。
「僕にはまだ待つものがあるのかい。」
クラリスは薬草で作った栄養ドリンク。
それを強力なものにして。
毎日飲ませました。
免疫力が向上したゼフィール君の病状は。
回復に向かっています。
ドルトムント。
リベルテ夫人。
「それで?」
「皇帝の容体は?」
リュスィオール公。
「重篤なご様子です。」
リベルテ夫人。
「なるほど。」
リュスィオール公。
「皇帝の大事というのに。」
「なるほど。」
「はないでしょう。」
リベルテ夫人。
「先ほど皇太子が病に伏せたと報告があった。」
リュスィオール公。
「皇帝と皇太子が居なくなったら?」
リベルテ夫人。
「この国は崩壊するでしょう。」
「そこで貴方が皇帝になるのです。」
リュスィオール公。
「いや私はそれを望まない。」
リベルテ夫人。
「内心野心で溢れているのでしょう?」
「いまが貴方のチャンスですよ。」
リュスィオール公。
「それは賭博だぞ。」
リベルテ夫人。
「安全な博打はありませんよ。」
「充分に勝ち目があるではありませんか。」
「ベルリンの姫君は私と親密な関係があります。」
「首都を内部分裂させて。」
「その間に全域を制圧しますわ。」
リュスィオール公。
「うむむ・・・。」
リベルテ夫人。
「このチャンスは生涯二度と来ませんよ。」
「貴方の為に今回の機会が訪れたのです。」
「しかも成功が約束されているに等しいではないですか?」
「貴方はこの国を統べるのに相応しいお方です。」
「貴方もそう感じているはずです。」
「なぜ貴方がここまでの勢力を持てたと思います?」
「やがて皇帝になるためなのです。」
リュスィオール公。
「ぐむむ・・・。」
リベルテ夫人。
「反乱は必ず成功します。」
「なぜなら。」
「貴方は自分が皇帝になれることを知っているからです。」
「貴方の時代が来るのです。」
リュスィオール公。
「私は皇帝になれるのか。」
「私は野心で生きてきたが。」
「このまま終わるつもりはない。」
「最後に一旗あげてみよう。」
「討たれたらそれでいい。」
「欲望のままに生きてみたくなった。」
リベルテ夫人。
「それでこそ貴方です。」
「さあさあ支度を。」
リベルテ夫人。
リュスィオール公に術を掛ける。
リュスィオール公乱心する。
ベルリンにて。
皇帝。
「辞世の句を読もうか?」
主宰。
「よしてください。」
「治る見込みはあります。」
皇帝。
「のんびりとベッドでくつろぐ日々。」
「いつか犯した怠惰の日を思い出す。」
主宰。
「ちょ。」
「こんな時まで冗談を言うんですから。」
皇帝。
「ゼフィールは帰ってこないのか?」
主宰。
「病に掛かって足止めです。」
皇帝。
「ゼフィールまでもか!」
主宰。
「それが。」
「さっきクラリスというアイドルが。」
「治療を開始しているという噂が。」
皇帝。
「ああ。」
「あの人か。」
「ならば大丈夫だな。」
主宰。
「使いの者か。」
「ゼフィール様のご容体。」
「回復に向かっております。」
皇帝。
「それは良かった。」
「は?」
「クラリスは何をしたのだ?」
主宰。
「そこまでは?」
皇帝。
「クラリスを呼べ!」
主宰。
「承知しました!」
城の中庭。
パティスリー姫。
「手紙が来ました。」
「私は反乱を支援します。」
シャルマン将軍。
「それはよしてください。」
「お考えを改めてください。」
パティスリー姫。
「いつか城から抜け出して自由になるの。」
シャルマン将軍。
「それは自由の意味が違います。」
パティスリー姫。
「おだまり。」
「いつものようについて来なさい。」
シャルマン将軍。
「ああなんていうことだ。」
ミュンヘンの議会。
ソレイユ。
「三万の大軍がこっちに来てるんですって?」
役人。
「はい。」
「ベルリンは内輪もめしております。」
「抵抗する勢力はわたくしどもしかおりません。」
ソレイユ。
「迎え撃つわよ。」
「兵を召集して。」
役人。
「わたくしどもの兵力は最大で八千でしょうけれど・・・。」
ソレイユ。
「構わないわ。」
「お父様と合流するわね。」
ジャルダン公爵軍八千と。
リュスィオール軍三万が対峙しました。
ジャルダン公爵軍は士気が異常に高い。
反対にリュスィオール軍は士気が低め。
兵士たちが歓喜しております。
陣地内。
ソレイユ。
「リュスィオール公は不義理にも。」
「反乱で皇位を握ろうとしている裏切り者です。」
「そんな悪党に負けていいものですか?」
「私達は正義の為に戦おうではありませんか。」
「この戦いは正義と悪の衝突なのです。」
「負けていいのですか?」
「あんな者どもに。」
兵士その壱。
「あんな奴らに負けてたまるか!」
兵士その弐。
「そうだ!」
「俺達が正義じゃないか!」
「そうだろみんな!」
兵士その参。
「俺達の花形だ。」
「やってやろうぜみんな!」
士気は最高潮です。
ジャルダン公爵。
「お前は立派になったよ。」
ソレイユ。
「公爵の娘として当然です。」
両軍睨み合います。
レフィナード。
「うおおおお!?」
「この剣捌きを見よ!」
敵兵その壱。
「おいあいつ。」
「ツヴァイハンダーを軽々振り回しているぞ!」
敵兵その弐。
「あんな奴相手にしたくないな。」
レヴリ将軍。
「一騎打ちを挑もう。」
レフィナード。
「受けて立つ!」
レフィナード対レヴリ将軍。
ぶんぶんツヴァイハンダーを振り回されて。
レヴリ将軍はボロボロにされました。
レヴリ将軍が取り押さえられたのを合図に。
リュスィオール軍は突撃を開始。
決戦主義なリュスィオール軍は単調に攻撃しますが。
ジャルダン公爵軍は包囲陣形を敷きます。
リュスィオール軍は士気が低下していきました。
何者かがリュスィオール公の経緯を兵士に漏らしたため。
徐々に戦意を喪失。
一気に崩れます。
最後にはリュスィオール軍は敗走しました。
そのままドルトムントまで進軍します。
各砦は降伏するどころか。
加勢していき。
ドルトムントを包囲しました。
リュスィオール軍から違反者が続出。
最後には。
リュスィオール公とリベルテ夫人を捕らえました。
リリアとクラリスは新聞に夢中になっていましたね。
そこにベルリンへの出動要請が届きます。
ゼフィール君の容体が完全に回復してから。
向かうことにしました。
クラリス。
「ちょっと大量に薬草を仕入れてくるね。」
リリア。
「リリアも大量に買い付けておくよ。」
ゼフィール。
「助かったよ。」
「もう歩けるほどだ。」
クラリス。
「もうちょっと休んでいてください。」
ゼフィール。
「分かった。」
看病を続けて一か月。
ゼフィール君の容体が完全に回復しました。
ベルリンへ向かうことにします。
19
リリアとクラリス。
ゼフィール君と共の者。
薬草の大荷物。
ベルリンに出発です☆
いつものように街道を通って。
関所を通過しますが。
妙な一団に出くわしました。
パティスリー姫。
「あれがリリアとクラリスね。」
「やっておしまい。」
シャルマン将軍。
「こんな所で再会するとは。」
ゼフィール。
「なんだい姉さん。」
「僕の邪魔をしたいのかい?」
パティスリー姫。
「ゼフィールがいる・・・。」
「どうした者共!」
「ふたりを捕らえなさい!!」
クラリス。
「立ち往生のようですね。」
リリア。
「通してくれないみたい。」
パティスリー姫。
「やってしまえー。」
シャルマン将軍。
「お待ちください。」
「皇太子様がいらっしゃいます。」
ゼフィール。
「去れ。」
パティスリー姫。
「貴方やりなさい。」
「こっち側でしょ。」
ゼフィールの手勢と戦闘になる。
パティスリー姫の手勢敗れる。
ゼフィール。
「姉さんを捕らえてくれ。」
「今後何をしでかすか分からない。」
リリア。
「さっきの戦闘で味方の数が足りません。」
ゼフィール。
「これでは立ち往生だ。」
「相手の指揮官だけでも頼む。」
クラリス。
「やってみます。」
リリア。
「一騎打ち!?」
クラリス。
「貴方との出会いは恋心からでしたね。」
シャルマン将軍。
「10代の少女に惚れた日だ。」
「あれから私は再生へと誘われた。」
クラリス。
「そして貴方は復活の時を迎えた。」
シャルマン将軍。
「キミが。」
「キミの存在が私をそこに導いたのだ。」
クラリス。
「しかし貴方はまた囚われてしまった。」
「姫君に囚われてしまった。」
シャルマン将軍。
「それが定めなら私は受け入れよう。」
「この囚われの者を解き放ってくれ。」
クラリス。
「そうです。」
「貴方はいつも険しい道を歩んでいた。」
「哀れにも貴方らしくない。」
「そんな歩みを。」
シャルマン将軍。
「私は愚者の道に堕ちたかもしれぬ。」
「二度と繰り返さないと誓いつつ。」
「堕落の底へと連れて行かれてしまう。」
ゼフィール。
「その呪縛を作ったのは姉さんだよ。」
シャルマン将軍。
「私には命令がある。」
「二度と姫君をやらせはすまい。」
クラリス。
「その呪縛も今日で終わりです。」
シャルマン将軍。
「私は解き放たれるのか。」
「姫君のお供を任されたその日から。」
「苦楽と山脈と荷車の。」
「牢獄のような呪縛から。」
「さあ。」
「私を救って見せろ。」
クラリス抜刀。
シャルマン将軍抜刀。
鮮やかに斬り合う。
優雅なクラリスの剣。
柔を覗かせるクラリスの剣。
シャルマン将軍の剣は。
強いが。
精細に欠く。
切り結んでいるうちに。
クラリスにパワー負けして。
シャルマンは押され始める。
バランスを崩した瞬間に。
クラリスに押さえつけられる。
クラリス。
「運命に従うんです。」
シャルマン将軍。
「私は流されるがまま。」
クラリス。
「私は運命を支配しました。」
シャルマン将軍。
「君に倒されるのもまた定めか。」
ゼフィール。
「残りの者共はどうするかねぇ?」
リリア。
「まずは兵力の補充をしましょう。」
「また仕掛けてくるかもしれない。」
地元の警察に応援を要請して。
捕虜を引き渡します。
ベルリンまですぐそこです。
20
リリアとクラリスが皇帝の元へ辿り着きました。
早速。
スーパー栄養ドリンクを準備。
リリアは謎の薬を用意。
リリア。
「この薬の材料は知らないほうが良いです。」
皇帝。
「よし飲んでみよう。」
主宰。
「最高の医者ですら治せなかった病。」
「姉妹なら行けるかもしれぬ。」
一か月が経過しました。
皇帝の容体が少しずつ回復。
王座に座れるまでになりました。
皇帝。
「なんということだ。」
「ここにまた座れるとは。」
クラリス。
「免疫力を増大させることによって対処しました。」
リリア。
「薬の中身は聞かないでくださいよ。」
皇帝。
「そなたらに褒美を取らせよう。」
「身分を上げておこう。」
「皇帝親族はどうかな?」
クラリス。
「ありがたき幸せ。」
ゼフィール。
「父上。」
「この姉妹はレンディル将軍の孫だよ。」
皇帝。
「なんと!」
「ならなおさら尊重してしんぜよう。」
「何か就きたい職はあるか?」
リリア。
「まだアイドルをやることにしています。」
皇帝。
「なるほど。」
「生粋ではないか。」
「この国の為に尽くしてくれ。」
リリア。
「仰せの通りに。」
皇帝は自分の身の回りと。
南部地方と西地方に。
それぞれ自分の親族を組み込んで。
安定した体制を築き上げました。
パティスリー姫は辺境に追放。
事実上の軟禁。
シャルマン将軍は不起訴になりました。
姉妹の活躍は新聞で取り上げられ。
名声を得ましたよ。
二週間後。
クラリス。
「あらかた手に入りました。」
「でも。」
「この世の事を知ってしまったら。」
「居心地が良くなる反面。」
「何に対しても価値を見出せなくなりました。」
リリア。
「好きに振る舞えばいいんじゃない?」
クラリス。
「理で説明できないこともあるんだね。」
リリア。
「原罪を主に謝罪しました。」
クラリス。
「私も。」
リリア。
「これからどうする?」
「歴史でも作る?」
クラリス。
「したいことをしてみる。」
「私はほとんど手に入れたら。」
「虚しくなりました。」
「でも。」
「私にはお姉ちゃん。」
「大切な人々。」
「ファン。」
「みんなが居るから。」
リリア。
「そう私達はひとつの到達点に至りました。」
クラリス。
「行きましょう。」
「私達のファンが待ってます。」
手を繋いで。
ステージへ向かいます。
観客の歓声。
姉妹の軌跡はここからは謎に包まれています。
それは神聖ローマ帝国最盛期。
とある姉妹の出来事です☆
21
あの夢を見ました。
草原と花畑。
遠くには山と林。
手を差し伸べて。
こちらに誘っています。
ついていくことにしました。
姉妹は手を繋いで。
奥に進んでいきます。
ふと空を見ると。
巨大な光の玉。
宇宙が少し覗かせていて。
カラフルな光の玉。
目のような感じ。
こちらを見つめているような。
神々しい感覚。
意思を感じ取る。
姉妹は創造主に祈りを捧げた。
夢はここで覚めました。
創造主を目撃した人物のひとりです。
END
もしも?こんな神聖ローマ帝国があったら?
歴史家「ディートリント・エルメンヒルト・ジルヴィア・ブロイアー」が書き記した理想の神聖ローマ帝国。
それは密かに出版され。
そのような可能性も有り得たのだと伝えている。
女性と男性が始めから対等であれば。
女性の力を味方に就けた者達が絶対者となる。
これらは「Dietlind Ermenhild Silvia Breuer」と呼ばれて人気となるも。
すぐに終息して。
とある図書館の保管室に眠っていたという?