第3話-ソメイヨシノ-


20メートル級のコスモスが咲き乱れる花畑の中。   

その中で乗れる花があり、その上で4人は歌を歌っていた。

それは綺麗で、透き通って、協調性がぴったりのシンフォニーだった。

ミューズ「今度はみゅーちゃんのアカペラですよー♪」

ミューズは息を大きく吸い、歌いだすと、天使の歌声のような美しい音色が辺りを包んだ。

しばらく歌っていると、すぐ近くの花でつくられた集落からスターボードが飛んできた。

スターボードの人々は辺りで停止すると、ミューズの歌声に聴き入っていた。

歌い終わると、周りはスターボードに乗る人だらけ。

みんな拍手喝采で、ミューズを称えた。

ミューズは赤くなっていた。

すると一人の女性が近くから。

女性「そんだけ綺麗なら、ソメイヨシノのステージCに上がれるね!」

ミューズはびっくりした。

ミューズ「ソメイヨシノのステージC!」

もも「すごーい!ステージCだって!あの簡易型の永続舞台!」

えとわーる「行ってみましょうよ♪」

ふぇりす「いいお店もあるよ?みゅーちゃん一度行ってみたいっていってたでしょ♪」

ミューズは深呼吸して、少し真剣そうに。

ミューズ「うん!」

女性「未来の歌手の誕生ね!」

周りは拍手でいっぱいだった。

日曜日。

空には、スターボードに乗る4人がいた。

コンパスを頼りに移動するももたち。

ふぇりす「ちょっとソメイヨシノ行くには遠くない?」

「あと70キロあるよ?」

もも「定期便があるよ♪この空域にまもなく、ほら現れた!着艦しよう!」

遠くに星の上に屋根がついたような、船が中々の高スピードで出現した。

船はスピードを急激に落とすと、4人と他に集まっていた人が後ろのデッキから着艦した。

船は10分そこに留まると、スピードを急激に上げて進みだした。

その速度は150キロと言ったところ。

船内では乗車賃を払うカウンターがあり、ももたちはひとり150円ほどを支払った。

しばらくすると、4000メートルはあろうかという、桜の木、ソメイヨシノが見えてきた。

あまりの巨大さに圧倒されるももたち。

もも「いつ見てもすごい・・・」

ミューズ「ここのソメイヨシノは他より大きい・・・」

えとわーる「桜の花びらが少し舞っていますよ♪」

ふぇりす「え?どれどれ♪」

すると桜の花びらが風に揺られてパラパラと降ってきた。

まるで春の風物詩である花見を巨大スケールで見ているような光景。

船内では甘酒が売っていたので、ももたちは購入してそれを楽しんだ。

ソメイヨシノと接近している時、他の人たちは一斉にスターボードに乗って発艦していった。

ミューズ「発艦の時は気をつけて、速度が少しあるからバランスが崩れるよ」

ふぇりす「うー!こーゆーの苦手!」

もも「いちにのさん!」

ももは華麗に発艦し、3人はそのあとを追った。

しばらく飛行すると、飛行場らしきものがあり、みんなそこに着陸していく。

ももたちは着陸すると、何か駐輪場のような仕掛けの。

多段重ねのスターボード置き場があり、ももたちはそこにスターボードを入れた。

そして歩いて、ゲートをくぐると、商店街が木の下の広場まで続いていて。

それはそれは賑わっていた。

建物は果物や花を模った家やお店がずらり。

あちこちで音楽家が楽器を鳴らし、人々は店の人と笑い合って、ある人は肩を組んで歩いたり。

ベンチで談笑したりと、人も多いし、都会という感じだ。

ふぇりす「あーあそこの饅頭!限定桜餅と言ってここでしか食べれないやつだ!」

ミューズは雰囲気に圧倒されていた。

もも「あそこのお店に入る?」

えとわーる「あそこは文房具屋ですね、別に問題はありませんが、時間を有効に使いましょう」

ももたちはいろんなお店に入って買い物を楽しんだ。

商店街を進むと広場があった。

そこにはステージがもうけられていて、自由参加型のいつでも舞台が用意されていた。

そこにはステージCの文字が。

ここがステージCだね。

ミューズが緊張した様子もなく語る。

誰かが歌っていて、それに通行人が振り向いて聞き入る。

しばらく見ていると、バンドの人もちらほら見えた。

もも「みゅーちゃん挑戦してみようよ!」

ミューズ「じゃあ一曲♪」

ミューズはステージの上に上がると、みんなから拍手を受けた。

ミューズ「今日ここのステージに立つことができたのは」

「これまで応援してくださった皆様のおかげです!」

観客はジョークと言えるアイドルトークに聞き入って、うっとりしていた。

ミューズ「わたしは歌手の卵です!」

「その卵を温めるのはみなさん!」

「わたしを孵化させるみなさんの暖かな気持ち


「そしてわたしの想い
!聞いてください

ミューズは歌いだした。

観客「綺麗・・・」

歌い終わると、みんなから拍手喝采!

観客は降りてくるミューズに寄って来ると。

ある人からはお店の割引券や、ある人からは小さな花束をもらった。

ももたちも、笑顔で祝福した。

公園で休憩をとった。

するとむこうから、ロングの金髪、頭にベレー帽のようなふんわりとした帽子。

胸にはロザリオ。

横髪にかわいいリボン、制服風の衣服の女の子が走ってくる。

なんと、女の子がミューズを見るやら抱きついてきた!

ミューズ「えーなになに?」

女の子「この娘かわいい!」

もも「わたしも抱きしめさせて!」

ふぇりす「あたしも!」

えとわーる「わたしもやりますね!」

5人は一斉にミューズにくっついた。

そして5人が離れると女の子がいない!

もも「あれ?さっきの娘は?」

女の子「わたし?」

女の子はももの背後にいた!

もも「え?」

ももが振り向くと、花びらが舞って消えてしまった。

桜花流、花びらかく乱術!

女の子は近くの花壇に現れると、くるっと回ってスカートを少し持ち上げた。

えとわーる「桜花の方ですね」

女の子「わたしの名前は桜花めぐみ」

「メグって呼んでね♪」

もも「知ってるー!桜花物理学を駆使する魔法の一族!」

メグ「知ってたの?いいねー♪」

「アイドルの登場だぞ?」

ミューズ「桜花一族?」

えとわーる「ソメイヨシノを代々維持する人たち、物理学を進化させた魔法のような術を使うんです」

「先ほどはマジックも混ぜましたね?」

メグ「よく分かるねー!じゃあみんな自己紹介して」

4人は自己紹介をして、そのままメグと打ち解けた。

もも「メグちゃん、なんだか綺麗♪」

メグ「そういうももちゃんもかわいらしいゾ!」

ふぇりす「あたしはー?」

メグ「ボーイッシュで美少女、レアですヨー!」

ふぇりす「褒めてくれてありがとー!」

もも「将来はソメイヨシノの維持者?」

メグ「実はね、うめ市に桜の維持に行かないかって、言われていて」

「わたしも、修行のために行く予定なの」

もも「えー!わたしたちうめ市に住んでいるんだよ!」

メグ「すごーい!」

「こんな気が合う人たち、そして友達になれたって人とまた一緒になれる!」

「神に感謝したいよ!」

するとメグはひざまづいて、両手を組み、目をつむって祈った。

その顔には神に対する感謝であふれていた。

もも「神様はいつも恵みをおくれくださる、わたしもめいっぱいの感謝を!」

ふぇりす「あたしも、いつも穏やかに暮らせていることに感謝を!」

ミューズ「メグちゃんと、ももちゃん、そして素敵な友達に出会えたことに感謝!」

えとわーる「みんなと一緒にいられる喜び、一緒にいられる幸せを感謝します!」

メグ「寂しい時は祈ってみて、神様は受け答えてくださるよ!」

もも「君の笑顔が消えるとき、そんな時も祈って、幸せを、ただ・・そして信じて!」

5人は空を見上げると、手を繋いで歌いだした。

メグ「桜花流、花吹雪!」

メグは手をにぎって空に向かって吐き出すと、大量の桜の花びらが吹き出し、辺り一面を綺麗に飾った。

メグ「じゃ!1か月後ぐらいに学校でっ!!」

5人はハイタッチすると、メグは公園を後にした。

そのあと、破産寸前なふぇりすを見て、ももは早い時間の帰宅を決めた。

もも「あと2時間で夕方、そろそろ戻ろう!」

ミューズ「こっちの路地を通れば近道だよ♪」

「地図もらったから感覚的に分かるんだ♪」

ももたちはミューズの言った通り近道したら、あっという間にあの飛行場にたどり着いた。

もも「さっすがみゅーちゃん!冴えてる!」

「では帰宅としましょう!」

4人はスターボードを駐輪場から取り出すと、飛行を開始。

そのまま上空100メートルに止まっている船の横を飛行した。

もも「うめ市行きだよね?」

すると船長が顔を出して。

船長「あたぼーよ!うめ市に行って、その次は落花生ときた、どうだい?乗ってくかい?」

もも「りょうかい!頼みますね!」

4人は乗船すると、ソメイヨシノを後にした。

帰宅後、おこづかいの計算をすると、使った金額が3500円。

残り1280円という、少しピンチなことになってしまった。

町に行くと言うと母が2000円くれたけど、それでも少し取りない状況だが。

ももは頑張ってやりくりすることにした。

翌朝の新聞はステージCのことが取り上げられていて、ミューズの写真があり。

「本日も大盛況、今日は天使の歌声のこの娘が主役だ!」

とミューズを絶賛する記事が書かれていた。

学校で話すと、ミューズは少し照れた様子だった。

これからまた新しい友達が転入する。

みんなはワクワクしていた。

そしてその話題でもちきり、4人は今日もにっこり笑顔で談笑していた。