「楽しみくらい、いくらでもこの世にあるのよ。」
おバカさんがそう言うと。
道化は。
「この世の楽しみを見つけることが大事だよね。」
と続けます。
「飲んだり食べたりすることが、もっとも良いらしいわよ。」
道化はにっこり笑って。
「自分の楽しみは自分で見つける。」
「これって大事だよね。」
「そうそう。」
「楽しみはひとつはあるものよ。」
「楽しみによって人生に味が出る。」
道化は甘酒を持って乾杯。
道化とおバカさんは親友です。
生い立ちはよく似ています。
道化は「人間」を見せられて育ちました。
様々な人間模様を自分の目で見てきました。
道化にとって。
喜劇を見ていました。
おバカさんはコントのような光景を見て育ちました。
なので。
人間の在り様がおもしろくてしょうがないのです。
道化は言いました。
「あなたの人生が本だったら、誰か読んでくれるでしょう。」
「喜んで読むと思うわ。」
「人生の本質が分かってしまうもの。」
道化は人生が喜劇だと言いました。
おバカさんは人生は恋するものだと。
でも、ギャグでもあるのだと主張します。
道化は。
人生はとにかく不思議なものだと思いました。
おバカさんは賛同しました。
人生はおもしろおかしくて。
苦くて酸っぱくて。
辛いと思ったら。
甘いものを口に入れられて。
そう思うと。
なんだか。
明るく滑稽な話だと思いました。
この世には楽しみがたくさんありました。
道化はそれを探すのが大事だと説きます。
おバカさんは。
楽しみは見出すものだと説きます。
お互い笑い合って。
共に喜び。
道化は会社員である自分に満足しています。
おバカさんはウエイトレスである自分が好きです。
人生を歩むにあたって。
真面目であれば良いのだと。
ふたりで確かめ合いました。
「人生はイタズラを好む。」
すかさず。
「運命のイタズラ!」
とおバカさんは感激しました。
道化はもっともだと思いました。
「人生は稀に道化の冷やかしがある。」
と道化は言います。
おバカさんは。
「人生は稀にギャグがある。」
と言います。
「人生は寄り道が華よ!」
「人生は道草がおもしろいの!」
ふたりの意見は一致しました。
他の人の人間模様は。
傍から見ればコメディです。
本人はそうではないと言っていますが。
道化とおバカさんにとっては。
濃厚、マイルド。
見応えがあるホームドラマなのです。
道化は悲劇を演じている人が。
そのあとどんな慰めに遇うか分からないと言っています。
演劇の筋道としては。
そういうようになっているからです。
おバカさんは。
「実はドッキリでした。」
「なんてオチもあると思うわよ。」
と言っています。
道化とおバカさんは。
すべてに満足していました。
自分の好きなように生きているからです。
自分の好きにするのが。
自分の有り方としては正解なのだと。
ひとつの答えでした。
ふたりは真面目に生きることを誓いました。
真面目に生きてさえすれば良いと。
一生懸命に生きることが。
結局正しいことなんだと。
自分の答えを出しました。
ふたりはいまでも。
共に笑い。
共に喜びます。
すべては。
人らしく居るためです。
END