「悲劇」


1


ファウスト一部。

191ページ。

つまり完全な矛盾は。

賢者にも愚者にも、等しく神秘的に聞こえますからね。

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ「メフィストフェレス」


西暦2030年。

長い民主主義によって政権は腐敗し。

かつての賢人が予言した通り。

民主制は専制政治に陥った。

確実に腐った基盤が。

ユーラシア連合を構築。

同国は非核化革命を組織。

核攻撃をされた国々を代行して反撃するという。

無謀な条約を締結。

様々な国が加盟し。

同盟国の規模が拡大。

旧東側は連合軍となって。

バルト三国に侵攻。

これを併合すると。

矛先をEUに向ける。

EUは既に内部分裂を始めており。

侵攻に満足に対処できない。

インドはパキスタンと戦闘に突入。

アフガニスタンの支援を受けたパキスタンは戦力差に悩んでいたが。

中国がインドを攻撃したことにより。

パワーバランスは回復。

これに便乗して。

アフリカで戦争が続出。

フォークランドで石油が発見されると。

アルゼンチンはこれを占領。

ユーラシア連合は新たな油田を発見すると。

資金力を武器に極東に矛先を向ける。

韓国は中国に苦戦していた・・・。


2


東富士演習中。

デニムスカートに白衣がキュートな女性が微笑む。

真奈美。
「かなり良好ね。」
「戦闘力も申し分ない。」

訓練兵。
「私の訓練をお願いします。」

仰向けに接地しているロボット兵器に乗り込むふたり。

真奈美。
「まずは足元のペダルとボックス。」
「ボックスに足をはめて操作すると足部が稼働します。」
「ペダルを踏み込むと足部のプラズマジェットが起動します。」
「ホバー移動ができるわ。」
「グローブに手をはめて操作すれば腕部の稼働ができる。」
「スロットルを操作するとハイジャンプします。」
「しばらく空中戦闘が可能です。」

訓練兵。
「了解。」
「これは新しい兵器ですから。」
「実力は未知数です。」

真奈美。
「いい?」
「戦場ではホバー移動しながら敵に横向きで57ミリ機関砲を撃ち込むの。」
「ヘルファイヤーミサイル地上発射型を使うのは最初だけ。」
「30ミリ機関砲が当たり続けると簡単に小破するわ。」

訓練兵。
「こんな機動でいいので?」

真奈美。
「動きが遅い。」
「左右に不規則に動くの。」

訓練兵。
「なるほど。」

真奈美。
「今日はこのくらいで終了ね。」

訓練兵。
「ありがとうございました。」

機動兵器から降りる真奈美。

上官。
「真奈美主任。」
「少し話が。」

真奈美。
「後で会議室に出向きます。」

会議室にて。

真奈美。
「失礼します。」

お偉いさん。
「君を呼び出したのは他でもない。」
「例の機動兵器。」
「実験部隊として前線に出て貰いたい。」

真奈美。
「え?」
「私が?」

お偉いさん。
「ユーラシア連合は知ってるかね。」
「北海道を見事に占領してくれた。」
「青森に上陸して戦闘を行っているが。」
「中国と挟み撃ちにされた。」
「第二次沖縄戦に突入だ。」
「もうまともな戦力は無い。」
「アメリカももう力が無い。」
「もちろん。」
「実戦指揮官としてだ。」
「養成は主任の弟子が居ましたな。」
「これは依頼として女史に頼むことにする。」

真奈美。
「仕方がありません。」
「やらせてください。」

お偉いさん。
「君が作った機動兵器。」
「頼りにしているよ。」

退場。

格納庫にて。

真奈美。
「あなたが新人さんね。」

希々。
「はい、仕様を教えてください。」
「シミュレーターもありませんので。」

真奈美。
「私の弟子は皆、慣れることで覚えました。」
「突貫工事で製造されていますからね。」

瑠那。
「私も教えてあげるよ。」
「真奈美ちゃんの弟子のひとりが。」

希々。
「マニュアルを読んでも頭に入らなくて。」

真奈美。
「では指を指して説明しますね。」
「最初はこのように仰向け接地しています。」
「立って停止させると勝手に転ぶのでダメですよ。」

希々。
「どんなリアリストのロボットでも。」
「立ったまま格納されていましたが。」
「あんなうまくはいきませんのね。」

真奈美。
「超科学で解決はしません。」
「胴体腹部にコクピット。」
「よじ登って入ります。」
「横向きに搭乗しますが。」
「すぐに慣れますよ。」

瑠那。
「見て。」
「頭はセンサーとカメラ。」
「対人用の機銃も装備している。」
「ここを狙われたらダメだよ。」

真奈美。
「脇腹には燃料タンク。」
「ここも被弾すると燃料が減ります。」
「胸部にはアビオニクスと燃料タンク。」

希々。
「スペースに余裕がありそうです。」


瑠那。
「右腕にはナチスの8.8センチ高射砲を転用したもの。」
「右肩には追加燃料タンクと追加マガジン。」
「交換式でリロード可能。」
「左腕にはAGM-114ヘルファイヤーミサイルランチャーと。」
「25ミリ機関砲が装備され。」
「左肩にもマガジンと燃料タンクがある。」

真奈美。
「メインエンジンにプラズマジェットエンジン。」
「これは背中に搭載され。」
「発電用。」
「両脇には燃料タンク。」
「足部には小型エンジンが二基装備されて。」
「ホバー移動が可能。」
「普段は大型の車輪でバランサーによって高速移動する。」

瑠那。
「決戦用の兵器。」
「右腕と左腕と。」
「頭部と胴体と下部と両足を分離可能で。」
「トラックで輸送して現地で組み立てる。」
「モジュール式な上に。」
「損傷しても部位を交換すれば復帰可能で。」
「弱点は対空車両に狙われる事。」
「高速移動で弾が当たらないものの。」
「ミサイルは当たる事がある。」
「支援兵器でもあるので。」
「通常の戦闘では運用されず。」
「大決戦の時だけ出撃する。」

真奈美。
「プラズマジェットエンジンの推力で短時間飛行可能で。」
「装甲はAH-64アパッチロングボウと全く同じなため。」
「重量は軽いものの撃ち抜かれる可能性はある。」
「本体重量は28トン。」
「全高17メートルで戦闘機が垂直になったのと同じ。」
「戦場では機関砲を被弾する事が予想され。」
「武器の破損や燃料タンク被弾に課題が残っている。」

エンジニア。
「コクピット内は装甲版で覆われていて。」
「機体正面から入れる。」
「カメラが全ての方向を常時撮影しており。」
「フルモニターで戦闘をする。」
「計器は攻撃ヘリのモノを転用しており。」
「正面と真横と真上と真後ろと真下が見える。」

真奈美。
「操縦はグローブ式で。」
「手を操縦桿となるグローブに入れて操作する。」
「足もグローブ式だが基本は使わない。」
「オート作動させてしまう。」
「コクピットには衝撃吸収の用途で少し浮かせており。」
「パイロットをあらゆる衝撃から防御している。」
「グローブ操縦桿は脱着が簡単で。」
「計器を操作しながらでも手の動きを制御可能。」
「戦術は相手に対して横移動しながらの射撃と。」
「接近して回りながら射撃する二種類がある。」
「攻撃ヘリに似ている兵器なのでベイルアウトは手動でする。」

エンジニア。
「製造コストが割高で廉価版の方が強いと言われている。」
「実戦では敏捷性に優れた動きで敵を翻弄して。」
「一方的に破壊していくスタイルになっている。」
「あまりに素早いので携行ロケットランチャーが当たる事が無く。」
「一度襲撃されると逃げ場が無いと演習では言われている。」
「正式採用されて20機が配備されているぞ。」

希々。
「ありがとうございます。」
「育成プログラムすら存在しない新しい兵器ですもんね。」

真奈美。
「急造品ですからね。」
「後は独学でやってください。」
「戦争には間に合いましたね。」

瑠那。
「私はエースパイロットとして名高いルナ。」
「よろしく。」


希々。
「よろしくお願いします。」

真奈美。
「女性はスペックが高いので。」
「機動兵器に向いているんです。」
「機体はボロボロになってもいいので。」
「乗り捨てて生還してくださいね。」
「死ぬ事は許可できない。」

希々。
「頑張ります。」


真奈美。
「ではちょっと動かしてみましょう。」
「未だろくなデータもありません。」

瑠那。
「私が指導するよ。」
「けっこう慣れているし。」

兵器が試験されます。


3


英語のことわざ。
すべての真実を語ってよいわけではない。

結城。
「自分の信じる正義を貫きます。」


真奈美。
「プラトン。」
「国家上下(岩波文庫)では。」
「正義とは強者の利益であり。」
「支配者が正義を決めている。」
「正義と言えば強い者の利益に他ならない。」
「民主制には民主制の法律。」
「君主制には君主制の法律と。」
「支配者と被支配者で正義が決まっている。」
「損をするのは被支配者である。」
「正義は悪を倒すのではなく。」
「それ自体が別の強者の利益になっている。」
「ボランティアで正義を名乗る場合は。」
「自分を犠牲にして支配者や強者の利益になっている。」
「プラトン曰く。」
「正義の敵は悪ではない。」
「正義とは支配者の利益を意味する。」
「強者の利益が正義である。」
「もし理解したら正義など二度と名乗れまい。」
「アマゾンの試し読みで国家上と下を読んでみると良い。」
「どうもありがとうございました。」
「正義は強い者の利益ですから。」
「パシリありがとう。」

結城。
「ごめんなさい正義を恣意的に解釈していました。」

真奈美。
「プラトンは説く。」
「まず先に。」
「先に進んで知る全てを。」
「強者の利益。」
「全てを捧げ。」
「強い者に。」
「命を売り。」
「強者達にこれだと捧げ。」
「死んでいくだけ。」
「その中で見出したものを語ろう。」
「ただ支配者のためだけに死んでいく姿。」
「支配者に捧げたその正義と。」
「命を対価に死んでいく。」
「それぞれの正義に。」
「それぞれに支配者に。」
「それぞれの正義を捧げて。」
「ただ強い者へと。」
「強者の利益に。」


結城。
「正義の正体なんてそんなものなんですね・・・。」

真奈美。
「英語圏でもプラトンの言葉は有名で。」

「正義とは強者の利益であると知れ渡っています。」
「ヒロイズムをすれば死にますよ。」

結城。
「現在の支配者のために死んでいくのかな。」


簡単な演習。

訓練中。

結城。
「真奈美さん。」
「こんな感じでいいですか?」

真奈美。
「上出来。」
「スタンダード・マニューバーは完璧ね。」

結城。
「僕は戦場で生き残れるでしょうか。」

真奈美。
「大丈夫。」
「ある程度の腕前と心構えがあれば勝てるわよ。」

陽菜。
「私はあんまり上手じゃないかも。」

真奈美。
「戦場では生き残れるかが鍵よ。」
「うまい下手ではないわ。」

陽菜。
「その言葉嬉しいです。」

希々。
「コツを掴むとかなり強力な兵器ですね。」

瑠那。
「すごいもう私についてくる。」

真奈美。
「あらら。」
「実際以上に優秀な兵器を作ってしまったのかしら。」

将軍。
「あれならば大戦果が期待できますな。」
「どうやって発案したのだろう。」

真奈美。
「狂人が遊び半分で設計して。」
「プラモデルを制作したらそのまま採用されてしまったのですよ。」

将軍。
「狂人は昔は尊敬の対象でした。」
「狂気の兵器というのは。」
「異常なくらい強そうですな。」

真奈美。
「見ての通り。」
「パイロット次第でどうにでもなるのですよ。」


この日。

ふたりのアンフィニ乗りが。

育成を完了しました。

真奈美が育成した搭乗員は15名。

各地の戦場で活躍が期待されます。


4


訓練場。

真奈美。
「以上を持って訓練課程を修了します。」

一同。
「ありがとうございました。」

オープンスペース。

修斗。
「真奈美主任ってまだ22だろう?」
「凄いよな。」
「ほとんどひとりで機動兵器を開発するなんて。」

小野田。
「もしかして惚れてたりして?」

修斗。
「そんな馬鹿な!」

小野田。
「図星かな?」
「好意は誰でも持つさ。」
「深い魅力を持つ美人だから。」

真奈美が通り過ぎます。

智子。
「主任!」
「戦いの心得を教えてください!」

真奈美。
「戦士として。」
「兵士として。」
「務めを果たしなさい。」

智子。
「心得ました!」

秀人。
「俺はやれる!」
「勲章を手に入れるんだ!」

修斗。
「意気込みが凄いな。」
「俺も負けてはいられない。」

小野田。
「奴は手本になったりしてな。」

みんな。

いろんな心情を持っています。

真奈美。
「戦力不足とは言え。」
「実戦に出る事になるなんて。」
「でも。」
「やってみせます。」
「きっと。」
「これが私の定め。」

沖縄攻防戦。

大規模な軍事衝突の最前線で。

人民解放軍が優勢。

少しずつ侵食した結果。

沖縄に上陸することに成功。

なにやら。

首里城を豪華に改装する人民解放軍。

なぜかチャイナに染めたがる。

中国兵士。
「お前、中国語で挨拶するアル。」

県民。
「嫌です。」

中国兵士。
「ならば暴行するけどイイアルカ?」

県民。
「ごめんなさい中国語教えてください。」

中国兵士。
「お前物分かりがイイアル。」

アンチ。
「戦争反対!戦争反対!」

中国戦車兵。
「何アルカ?」
「認知症アルカ?」
「軍隊相手に暴動なんて無力アルヨ。」

士官。
「戦車砲を撃ち込んで制圧するアル。」

戦争に反対するアンチは虐殺されました。

那覇を占領しつつ。

沖縄県民に中国語を強制教育したり。

かつての戦国時代の服装を強制しており。

国家主席の顔写真を飾れと強制したり。

市街地の市民に対して首脳陣を褒めるように脅迫したり。

ジャパンマネーを根こそぎ沖縄から略奪したり。

本土からやってくる電化製品を残らず本国へ輸送したり。

品質の良い物品はすべて人民解放軍の物になっています。

市民は毎日、中国語での挨拶を軍人に強制させられ。

逆らえば暴行を受ける始末です。

那覇近郊は全て占領されまして。

大規模な攻勢に出てくる人民解放軍を迎撃です。

真奈美は戦地に赴きます・・・。


5


初陣。

機動兵器は輸送機や船で運ぶこともありますが。

戦車用のトラックが基本です。

パーツを分割できますので。

現地で組み立てます。

組み立ては半分自動です。

腕部の装備は57ミリ機関砲を選択。

ZSU-57の機関砲を転用したものです。

戦地は沖縄。

かつての平和主義者の面影は無く。

追い詰められた自衛隊の隊員が善戦しています。

機動兵器が市街地に進出。

86式歩兵戦闘車と99式軽戦車と戦闘に。

真奈美の小隊は3機です。

相手は全部で15両。

恐ろしい運動性で相手を翻弄すると。

57ミリ機関砲で1両ずつ仕留めます。

飛び上がったり。

ホバー移動で次々と敵車両を撃破しますが。

被弾が尋常ではありません。

3機ですべて撃破。

1機が中破してしまいました。

真奈美。
「はー!はー!」
「もう慣れっこだわ。」

歩兵が携行対戦車兵器を持ち出します。

簡単に避けて反撃。

弾切れにて撤退。

実はしんがりとして出撃していて。

艦船で他の隊員は本土に撤収。

真奈美達は強襲揚陸艦に直ぐに搭乗。

ひゅうが級軽空母がF-35Bを出して。

敵を牽制。

無事に逃げ延びました。

相手の損害が大量で。

多国籍軍は後退してしまいます。

沖縄の半分は落ちましたが。

消耗の激しい人民解放軍は守りに入っています。


6


ヨーロッパ戦線は崩壊。

ユーラシア連合の勢いは止まりません。

腐敗した専制政治が乱行を働き。

違反者が続出しています。

とてもじゃありませんがまともに戦えません。

中東域ではサウジアラビアがイランと戦闘開始。

ユーラシア連合がトルコを仲間に入れました。

シリアとトルコが戦闘に突入しましたが。

相手にならないので。

シリアが崩れました。

第三次世界大戦は世界各国に飛び火。

中規模の反乱が相次ぎます。

便乗犯で世界の地図が埋まってしまいました。

北朝鮮は韓国に侵攻したい所ですが。

開始早々に食料や弾薬が尽きてしまい。

逃げました。

戦闘機も戦車も何も無い。

歩兵も機能しないので。

主席は苦虫を食い潰したよう。

ロシアが北方から侵攻。

しかし艦隊がオンボロで引き返してしまい。

再度襲撃。

制空戦闘機はどの陣営も消耗して数が半減しています。

フランカーが思ったより弱かったのが誤算で。

大兵力を北海道に揚陸させますが。

あんまりぱっとしない。

ロシアは北海道の市民を洗脳して。

自分達に引き込もうと工作を始めました。

札幌まで押されています。

真奈美は札幌包囲戦に参加。

真奈美。
「ひどい戦況ね・・・。」

瑠那。
「最悪。」

希乃。
「最悪だと思っているうちはまだ最悪ではない。」

真奈美。
「やはり民主制は専制政治に陥ります。」
「もっとマシな展開に持っていきたい。」

瑠那。
「敵発見。」
「どれだけ壊しても次々と出撃してくる。」

希乃。
「おかしいですね。」
「かなり破壊したのにまだ繰り出すんです。」

真奈美。
「ということはロシア軍は。」
「援軍を出してこない。」
「あれが最後の補充なんでしょうね。」


瑠那。
「ビークルを潰して後は歩兵をなんとかしますか。」
「制空戦闘機は消耗して互いに残っていません。」
「攻撃機にミサイルを撃ち込まれないだけマシです。」

希乃。
「敵はビークルの在庫が尽きたのでしょう。」
「機動兵器だけで200両破壊しました。」

真奈美。
「敵さんはこちらに対応できないみたいです。」
「対処方法がわかりませんからね。」


市街地で高機動性を発揮するアンフィニ部隊。

建物を盾に機関砲を浴びせます。

弾切れしては補給し。

弾切れしては補給し。

徐々にアメリカ軍が押していきます。

ユーラシア連合は勢いが衰え。

一度後退して体勢を立て直しに行くのです。

すかさず前進しますが。

木の横に陣取っていた2S6ツングースカに。

まともに撃ち込まれました。

真奈美。
「うー!!」

瑠那。
「は?そんな馬鹿な。」

希乃。
「対空車両が出てくると危険ですね。」


装甲は滅茶苦茶にされましたが。

戦闘は可能です。

パーツ交換を行いました。

後退する部隊を掩護する。

T-90MSが猛射撃。

真奈美は回避。

空に飛んで後退。

その頃。

カシミールを本気で取り合っていたパキスタン軍とインド軍。

中国軍も本気で参戦。

インド軍は人民解放軍の捕虜に対して。

像を何十回も見せているそうです。

屈辱に耐えかねて報復して。

インド軍の捕虜に酒池肉林の様子を流して動揺させています。

インド軍も屈辱を受けて戦闘激化。


7


後退していくユーラシア軍を攻撃。

装甲は現地修復されましたが。

機動兵器部隊は追加配備を合わせて。

全部で30機投入され。

18機撃破されました。

戦線で大活躍とは裏腹に。

ほとんど壊滅です。

アンフィニ2機で移動中。

BMP-3を9両発見。

真奈美。
「ああ!」
「もう撃たれてる。」
「だめ・・。」

瑠那。
「女史が限界です。」
「二機ならば凌げます。」
「雑魚を相手にしてないで援護して。」

希乃。
「補給車を狙い過ぎて。」
「脅威になる対象を忘れていました。」
「トンネルビジョン。」

真奈美。
「すぐに拾ってね。」
「機関部被弾。」
「30ミリ機関砲で撃ち抜かれました。」
「100ミリ砲には当たらないで。」


真奈美機は撃破されてしまい。

脱出したところ。

自衛隊の74式戦車部隊が救助してくれました。

敵軍はさらに後退。

世界の戦争はさらに激化。

自然破壊が重なって。

地球環境は劣悪になっています。

食料も少なくなってきました。

市民の憤懣は最高潮です。

そこに。

ユーラシア連合が核兵器を使用。

各国も便乗して発射。

多数の核爆発で地上の環境に変化が生じたので。

地上が暗い雰囲気になってしまいました。

戦況は激化する一方です。

真奈美は補充を受けました。

再び戦場に参加です。

世界情勢。

台湾が欲しいと上陸作戦をしてイイ所までもつれ込んだ人民解放軍。

大地震を食らって足止めです。

輸送船がいちいちアメリカ軍の高性能潜水艦に殺されるので。

漁船で物資を輸送する始末。

台湾近海でシーウルフ級潜水艦二隻と人民解放軍の艦隊が睨み合いです。

動けば殺されますので双方動けない。


8


ヨーロッパでNATO軍相手にどうにもならないロシア軍。

二十万人いたのに。

NATOが百万人で攻めてきて。

キエフ包囲戦の再来。

スイスに侵入しても重武装国家が予測以上で。

返り討ちに遭い。

同盟陣営も役に立たないユーラシア連邦。

これはもうダメだと。

弾道ミサイルを放つも。

次々と発射されたミサイルは大半が撃墜されて。

逆にモスクワに被弾し。

ロシアは投降。

ユーラシア連邦の主力が崩れました。

北海道から逃げていくロシア軍。

敵の敗走です。

追撃作戦ですが。

戦力は不足しています。

自衛隊はアンフィニを多数投入。

アメリカ軍が先陣を切ります。

アメリカ軍M1A2エイブラムス戦車部隊。

突撃するも早々に全滅。

続いて89式戦闘装甲車部隊が突入。

多数の損害を出しています。

真奈美機が到着しますが。

敵はアンフィニを警戒して。

対空車両を数多く展開。

23ミリ機関砲で撃たれました。

装甲にダメージ。

真奈美。
「うっ!くっ!」

智子。
「真奈美隊長。」
「正面突破は無理です。」

真奈美。
「側面から回り込もうにも。」
「対空砲陣地があるから。」
「ここに留まって戦うしかないの。」

智子。
「了解。」

歩兵同士の戦いは熾烈を極めています。

自衛隊は予備役を導入していて。

ある程度の錬度がある兵員を大量に確保していたのです。

真奈美。
「まだまだっ!」
「私達が頑張らないと!」

智子。
「戦車砲が被弾しました。」
「弾は貫通。」
「各部出力ダウン。」

真奈美。
「撤退しなさい。」
「アンフィニはそこまで頑丈じゃない。」

智子。
「了解しました。」

別のアンフィニ部隊と合流。

小野田。
「歩兵の援護をします。」

真奈美。
「対戦車ロケットに注意!」

小野田。
「このくらいは訓練で習いました!」

真奈美。
「こら!」
「敵に背を見せるな!」

小野田。
「え?」

背面に重機関銃が命中。

機関出力が低下。

燃料漏れ。

小野田。
「機関部炎上。」
「脱出します。」

真奈美。
「もう少し。」

修斗。
「なぜあなたは生き残っていられるのですか?」

真奈美。
「やられないように立ち回っているだけよ。」

修斗。
「我々は好戦的過ぎるがあまり。」
「戦場は勇敢な者から命を落とします。」

真奈美。
「それを知っているから。」
「生き残っているのよ。」

援軍。

瑠那。
「なんとか間に合ったみたいですね。」

希乃。

「ビークルは散々に壊したので。」
「あれらが最後でしょうね。」


真奈美。
「数日ぶりです。」
「勲章モノだそうで。」

瑠那。
「敵が弱過ぎるくらいですよ。」


希乃。
「なぜか一方的に壊せています。」

真奈美。
「なんていう変則的な動き。」
「相手が必死になっても逃げ場はありませんね。」

敵ビークル全て撃破。


歩兵が押し勝ちました。

旭川のユーラシア軍は半分が投降。

半分が逃亡しました。

戦闘が終わった市街地は荒れ果てています。

いつものようにアンフィニから降りて補給。

兵員からは真奈美への賞賛の声も出ています。

陣地に帰ってきたころには。

戦闘で疲弊していましたが。

他の人は衰弱が見られました。

現代の戦闘は激しく凄まじいがため。

兵士が受けるショックが強いのです。

真奈美はある程度平気です。

狂人だから。

それを上官に崇められました。

部隊は北海道全域に展開し。

北海道を取り戻します。


9


駐屯地。

出撃前の作成会議。

真奈美。
「君はどう考えた?」
「君はなぜそう思った?」
「君ならどうする?」

希乃。
「日本の教育は暗記だけで。」
「アメリカのように考える方針ではありません。」

瑠那。
「問いを連発するのがアメリカ式です。」

真奈美。
「後からアメリカ式の教育の影響を受けたので。」
「教育次第で人が決まってしまいます。」
「思考停止しやすいのはそのためでしょう。」


希乃。
「自分はどう考えるのか。」
「子供の時から徹底される。」
「それが本物の教育だと思います。」


真奈美。
「現代の日本人と現代のアメリカ人との能力差は。」
「教育から生じています。」
「計画的に行きますと。」
「指定された座標から散開して。」
「周辺を一掃します。」


北海道は局地戦です。

ユーラシアの戦力はまだ半分しか削っていません。

この日も。

対空車両と兵員輸送車を襲撃して。

すべて撃破しました。

偵察機からの情報を頼りに。

高速移動して破壊します。

意外にも近距離になると。

歩兵が厄介です。

対戦車兵器をいきなり出されると。

命中弾を受けて破壊されるケースが目立っているためです。

国内では。

悲惨な世界情勢に対して。

反対や批判が巻き起こり。

これこそ「愚かな人間が本性を剥き出しにした。」

とか。

「人間は理性を失った。」

「これでは人間は獣と何が違うのか。」

という意見が蔓延。

軍隊への非難もありますが。

これは筋が違います。

真奈美。
「無力な彼ら。」
「自滅していく文明をただ見ているだけ。」
「全員で力を合わせてなんとかするとか。」
「ただ議論するだけで。」
「実行力も何も無い。」

瑠那。
「暴漢に文句を言っても殺されるだけですよ。」


希乃。
「敵を説得するなんて愚の骨頂。」

真奈美。
「暴動のせいで犬死にした市民も大勢いるもので。」

瑠那。
「武装した兵士に素手で向かっていく。」
「無謀な連中は支持しませんよ。」

真奈美。
「それでも国内では武装した民間人が民兵になって。」
「北海道で時間稼ぎをしていましたよ。」

瑠那。
「ムジャヒディンみたいに歩兵だけの部隊で。」
「戦闘を継続すればソビエトも追い払える。」

希乃。
「暴動で解決できると思い込む。」
「無力な彼らが雄弁ですね。」
「昔みたいに暴動で政権は転覆しません。」

真奈美。
「それが分かっていれば。」
「あんな愚行なんて存在しませんよ。」
「要するに分からないのでああしているのです。」


ユーラシアが追加の核攻撃を行ったのは試験的なものでした。

核攻撃で相手を怯えさせて。

怯んだ隙に攻めたててやろう。

というものでしたが。

怯えた各国が核で反撃した為。

エスカレートしてしまいました。

中国軍は沖縄で停滞。

本州上陸に失敗。

韓国軍は中国軍を主力とするユーラシア属国軍に敗退。

ゲリラ戦を展開。

散発的に抵抗しているため。

中国軍は苦戦。

市民が武装決起した為。

苦い戦いに持ち込んだ韓国。

まだ負けていない。

自衛隊は稚内で市街地戦に突入。

真奈美は遠くから援護射撃に徹します。

ビークルはすべて撃破しました。

後は歩兵の仕事ですね。

真奈美は後退。

稚内港は激戦区になりました。

でも。

1週間で陥落したのです。

自衛隊とアメリカ軍の士気が上がりきっていて。

強力な力を発揮した為です。

真奈美機は被弾しながら。

装甲はモジュールなので。

現地で取り換えつつ。

戦闘を重ねています。


10


アンフィニの戦闘力は素晴らしく。

凄まじい快進撃です。

T-90SやT-72BVでは対抗できず。

ZSU-23シルカをわざわざ繰り出して反撃してきますね。

ヘルファイヤーで一毛打尽です。

秀人。
「隊長。」
「消耗が甚大です。」

真奈美。
「それでもやるの。」
「私はいつだって正義の味方よ。」

秀人。
「正義ですか。」
「確かにここにあります。」

真奈美。
「正義が私のモットーだわ。」

進軍。

旭川で激戦になりました。

歩兵を掃討しつつ。

ビークルだけを狙います。

浦和。
「隊長。」
「正面からの攻撃は無理があります。」

真奈美。
「アンフィニならやれるわ。」

浦和。
「戦車砲被弾!」
「うわぁ!?」

秀人。
「3番機がやられました!」

真奈美。
「くっ!!」

秀人。
「10式戦車部隊の損害が甚大です。」

真奈美。
「私達だけでもやるの!!」
「味方の数はもう少ないのよ。」

秀人。
「了解です。」

素晴らしい運動性能で敵を翻弄。

なんとか敵を制圧しましたが。

味方がほとんど残っていません。

アメリカ軍のF-22Aラプターが頑張ってくれました。

アメリカ軍の歩兵師団と戦車師団のおかげですね。

制空権はF-22Aラプターのおかげで常に優勢です。

敵地掃討戦に移ります。

秀人。
「兵器の戦闘力の差が尋常ではありません。」

真奈美。
「一瞬でも油断するな!!」

秀人。
「これならやれます。」

RPG-7が直撃。

大破。

真奈美。
「ううっ!!」

1機で作戦続行。

退去命令が出ました。

攻撃はアメリカ軍AH-64Dが引き継ぎます。


連日の大戦果。

どうでしょ?

私のアンフィニ♪

友人に向けたこのメール。

既読はありませんでした。

軍関係者に友人が多いのですが。

みんな取り込み中です。

仮生産していた機動兵器でしたが。

とうとう。

政府はアンフィニの正式量産を決めました。

戦局は極東地域に限っては優勢です。

現在投入されているアンフィニは10機。

補充で投入されたのは35機。

半数が戦闘で撃破されました。

私はもう慣れっこです。

真奈美の日記。

陣地で宿泊中。

この日は出撃命令が出ないので。

休息。

真奈美。
「昔と異なる点は。」
「君主が前提となって。」
「支配者と人民との間に契約が結ばれている。」
「契約の内容は支配者と人民の服従条件を定めることが主体で。」
「その結果は君主の権力が支配する国家。」
「あるいは部分的にそれが制限された国家である。」

希乃。
「昔はそうでなければ通用しませんでしたよ。」
「人間の起源から考察するに。」
「最初はいったいどういうものであったか?」

瑠那。
「最初から間接民主制は選択できませんね。」

希乃。
「では封建制度は偉大なる先駆者として。」
「称えるべきものでしょう。」

真奈美。
「まったくその通り。」
「君主制は英雄です。」
「大先輩なのです。」
「否定する理由はありません。」

瑠那。
「歴史観が真逆なんですよ。」

希乃。
「昔は野蛮で現代が最高というのは。」
「真逆の発想です。」

真奈美。
「衆愚は歴史観を故意に歪曲していますからね。」

瑠那。
「歴史観が逆転していますよね。」

希乃。
「それで正しいものであるとまかり通るのは。」
「プラトンの言う通りに。」
「何が正しいかは強者の利益に依存する。」

瑠那。
「限られた知識人だけが獲得する情報であって。」
「一般人とやらには不要でしょう。」

真奈美。
「知られたからと言って何も変わりませんからね。」

希乃。
「無論。」
「衆愚の定義がわかりませんが。」
「共同体なら紀元前からもありますし。」

真奈美。
「支配者によって何が正しいか決まるのです。」

瑠那。
「あらま。」
「そういう構図でしたか。」

真奈美。
「現在は。」
「社会契約を主権者たる個々人相互の間の結合契約としたもの。」
「個々が結合することによって。」
「彼らが主権者であると同時に。」
「国家の構成員となるように契約が結ばれている。」

希乃。
「いわば共存のルールですよね。」

瑠那。
「共存共栄のための契約ですよ。」

真奈美。
「税金は契約金で必要なものを全て受け取る約束の料金で。」
「全員が国家の構成員なので。」
「その使い道を個人が唱える事は不可能である。」

瑠那。
「行政は第三者であって。」
「自分ひとりの意見が通る訳ないでしょう。」

希乃。
「そうなると。」
「自分だけの事を考えている訳には行きません。」

真奈美。
「当たり前ですよ。」
「他の仲間の事も考慮していないと。」
「社会は機能しません。」

希乃。
「だから自分勝手の定義はそこにあるんですね。」

瑠那。
「そう言えるでしょう。」

真奈美。
「必要なのは同意であって。」
「全員が契約したから大統領や総理大臣があるので。」
「間接民主制は全員がそれに同意し。」
「間接民主制は世界が一致して契約した内容であり。」
「君主制が崩壊した後に新規契約として結んだ内容なのです。」

希乃。
「そうなると。」
「少しずつ間接民主制の正体は明らかになりそうです。」
「神様との契約で間接民主制になったとすれば。」
「人類の正統性は抜群ですよね。」

瑠那。
「ローマ共和制は王様を追放したことで生じました。」
「最初からあった政治形態です。」
「ローマ共和制をリメイクしたものが広まりました。」
「直接民主制と間接民主制は。」
「紀元前に整備されていた契約書で。」
「肯定しても否定してもどちらでも良いでしょう。」

真奈美。
「君主制でも民主制でも同じ苦情や文句は出るでしょうし。」
「君主制になれば服従ばかりだとか。」
「民主制になれば我儘が通り過ぎだとか。」
「結果は同じだと思います。」

瑠那。
「それは一理ありますよ。」

モニター。

世界のニュースが続々と。

開始早々激戦になったのに。

泥沼化する戦争。

ユーラシア連邦はここで潰れるかと思いきや。

戦略型潜水艦が大量に出撃。

ラスボスは戦略型潜水艦を撃破する事になり。

核攻撃によって被弾した地域は焦土。

地球は冷却化して。

夏の無い年が到来しています。

何年も続くでしょう。

農作物に被害甚大。

水源は渇水。

資源まで輸送できずに。

材料もなく製造もできない。

発電所は被弾していて使い物にならない。

劣悪な環境で既に世界人口の三割が死亡しましたが。

これがじわじわ地球人口を減らしていきます。

戦争が消極的になっている現在。

早くも再建に取り掛かる先進国。

被弾が少なかったオーストラリアが台頭。

ニュージーランド。

南アフリカ。

アルゼンチン。

ブラジル。

五か国同盟。

難民が発生しつつも。

被害の少ない国家では立て直す事が可能。

一か月で回復の兆しが見えました。

戦争開始から一年。

生活水準が18世紀まで低下しつつも。

半分荒廃した世界で再建に取り掛かります。

多分。

信じられないほど高度な文明になると思われます。


11


2025年に「武器を捨てよ」という論文が見直され。

平和運動が行われたヨーロッパ。

軍縮をした結果。

ユーラシアの台頭を許しました。

ヨーロッパでは時の権力がEUを裏切り。

曖昧な行動を取り。

優柔不断。

それもそのはず。

ユーラシアが既に工作を完全化していたからです。

腐敗した専制政治にとって大きな痛手でした。

日々出撃しては戦闘の連続。

でも。

アンフィニの戦闘力のおかげで。

怪我ひとつありません。

世界の情勢をたまに届く新聞で見ながら。

出撃です。

世界は核兵器を使い切っています。

制止する人は居ません。

東南アジア連合は中国と互角の戦いです。

台湾は防衛戦にて中国に勝利しました。

連日の戦いにも関わらず。

真奈美は戦闘ひとつひとつにおいて優勢を保っています。

瑠那。
「もうビークルが出てこなくなりました。」
「探しても無意味です。」

真奈美。
「目標としていた戦車や装甲車は地上から消えたわね。」

希乃。
「歩兵と歩兵の戦いを支援するのみです。」

真奈美。
「あれ?固定式ミサイルランチャーを発見。」

瑠那。
「おっと鈍足なミサイルは当たらないよ。」

回避して反撃。


バックパックには上方フレア・ディスペンサーも装備。

対戦車ミサイルでは命中はしません。

敵戦闘機も出てこないので。

やりたい放題。

アンフィニは無限大という意味で。

無限大の戦闘力という意味付けですね。

アンフィニは多数の被弾によってボロボロです。

それでも戦います。

夜空を見ながら。

アンフィニの上で。


真奈美。
「正義が恋しくなった。」
「正義よ。」
「私に正しい道をもたらす正義よ。」
「この星には正しい事が行われない。」
「それでも私は正義を恋い慕う。」

希乃。
「詩人ですね。」

瑠那。
「私は混乱する世界の中で。」
「自分だけでもまともで居なければと。」
「自戒しております。」


真奈美。
「ホッブズの主張するところでは。」
「人間は本来大胆で。」
「攻撃し。」
「戦う事以外は求めない。」
「或る有名な哲学者はそれとは反対の考えをもっている。」

瑠那。
「歴史においてそれは本当のものでしょう。」
「現在もそうでしょう?」

希乃。
「結局は人間なんて争いばかりしています。」

瑠那。
「個人と社会においてはもっと争いが盛んです。」

真由美。
「国家レベルではなくもっと普遍的な物事で争いばかり。」
「人類は争いを止められないでしょう。」

希乃。
「軍隊ではなくて民間人の方が。」
「残酷な争いが多いものです。」

瑠那。
「民間における争いは熾烈ですよね。」

真奈美。
「いくら戦争のエネルギーを奪っても。」
「争いのために争うような輩はどこにでもいますからね。」

希乃。
「民間人の方が国家が行う戦闘よりも過酷な行為をする。」

真奈美。
「私有のないところに不正行為はありえない。」

希乃。
「山林ばかりにテント暮らし。」
「自然哲学からして自然法則は心地よい。」

瑠那。
「誰か彼らに言ってやってください。」
「不自然な彼らに。」

真奈美。
「たえず自然に不平をいっている非常識な人々よ。」
「きみたちのいっさいの不幸は。」
「きみたち自身から生じていることを知るがよい。」

希乃。
「現代人なんぞ。」
「自分の外に生き。」
「他人の判断、意見から自分の存在の感情を引き出している。」
「実体を失った虚偽の存在にすぎない。」

瑠那。
「それでは農村の田舎にいる人々が最も幸福ですね。」
「自分の外には自然しかありませんし。」

希乃。
「ですから田舎は平和なのです。」

瑠那。
「都会とやらは自分の外に生きている。」
「退屈な人間の集まりですか。」

真奈美。
「文句ならルソーに言ってください。」

瑠那。
「教科書を論破しようなど愚かな真似を?しろと?」

希乃。
「持論対歴史というのは馬鹿を見るだけかと。」

真奈美。
「自然的自由に還れ。」
「とは。」
「社会的拘束から解放されよ。」
「との意味にほかならない。」

瑠那。
「社会的命令。」
「なんじはなすべきである。」
「被命令者の。」
「いつ、何をなんじは欲するか。」
「この制約の限界において。」
「秩序はあらゆる社会的意味を失う。」

希乃。
「格言。」
「力は正義に勝つ。」

瑠那。
「衆愚政治なんて戦場から見れば。」
「死んでも何の影響もないように思えます。」

希乃。
「死人に口なし。」
「ってことですか?」

真奈美。
「この世の醜悪な部分を見た事があれば。」
「衆愚が死んでも平気なんです。」

瑠那。
「多数決でいろいろ決めているだけで。」
「投票の多数決とは別物ですもんね。」

真奈美。
「多数決と言えば。」
「できるだけ多数の人間が自由である。」
「すなわちできるだけ少数の人間が。」
「彼らの意志とともに。」
「社会的秩序の普遍的意思と矛盾に陥らねばならぬ。」

希乃。
「社会比較説でしょう。」
「多いから正しい。」

真奈美。
「正しい?」
「正しいとは強い者の利益に他ならない。」
「正しいとは支配者が決めるのですよ?」

瑠那。
「有名なプラトンから引用ですね。」
「反対するのは無謀過ぎますが。」

真奈美。
「多数者が少数派より強いということは。」
「間に合わせに構成させられた経験上の表現に過ぎないであろう。」

希乃。
「でしょうね。」
「多数派が強いとなんとなくそう思っているだけでしょう。」

真奈美。
「政治的信仰者たちはデモクラシーが不利であると語っても。」
「この異論は認めなければならない。」

希乃。
「極端に民中心というのはいろいろ不利ですよ。」
「民の意見ばかり採用しなくてよろしい。」

真奈美。
「君主制より民主制の方が劣っており。」
「民主制は不利である。」
「個人が国家的支配より自由になる。」
「個人が国家的支配に参与するという観念へと移っていく自由概念の転化は。」
「民主主義の自由主義からの解放を意味している。」
「個人を掌握する範囲から独立する。」
「国家秩序が個人の自由を侵害する程度から独立するようになる。」
「個人に対して。」
「国家権力を無制限に拡張しても。」
「個人的自由を完全に無視しても。」
「自由主義的理想を全く否定しても。」
「国家権力がこれに服従する個人によってのみ形成されるのならば。」
「デモクラシーはなお可能。」

希乃。
「でも民主制は専制政治になりましたよ。」

真奈美。
「歴史は民主主義国家の権力が独裁国家のそれに劣らず。」
「独裁国家と同じように。」
「拡張され続けている。」
「結果。」
「不可能な個人的自由は消え失せ。」
「社会における自由が前面に出てくる。」

希乃。
「そうです。」
「拡張を続けた結果がこれです。」
「ここにあるものを見てください。」
「僭主君主よりも酷い。」

報告が入ります。

戦況に変化が出たようです。

長期戦の結果。

世界中の兵士の士気が落ち続けて。

一部の軍隊が政権に反乱を起こしています。

長引くにつれて。

消耗が激しく。

兵士の士気が低下を続け。

まともに戦える軍隊が少なくなり。

政権を倒したり。

民兵や義勇兵が善戦して。

手に負えない状況になったからで。

一部の軍隊は戦争を放棄してしまい。

軍隊のストライキが発生中。

部隊が出撃拒否。

市民が戦争に耐え切れず。

激しい抵抗を始めています。

これを予測して傭兵をかき集めて。

無理に戦争が続行されており。

兵士にも限界が来ております。

平気なのは為政者のみとなりました。


12


設備の整った基地で準備中。

開戦から時間をかけて。

死者二億七千万人。

まだ増えています。

サイエンティストは主張する。

第四次世界大戦は棍棒で戦うべきである。

世界中の笑いを誘っています。

あまりにも、もっともな意見なのですから。

早くも世界中の一部の軍人が棍棒を携帯しております。

弾薬が尽きたせいで棍棒で戦う部隊も登場しました。

これがニュースで流れるとアインシュタインは偉人であったと。

世界が再認識。

人工衛星の半分は撃破されて使えませんので。

NASAが民間限定で新しい人工衛星を打ち上げました。

これはミサイルに対して逃げますので。

当たらないのです。

高性能AI搭載機。

機動兵器が修理されつつ。

機動兵器のサイエンスデータを整理整頓。

真奈美。
「世界を覆う巨大な思想ニヒリズム。」
「自分だけ虚無になると思ったら。」
「他人も同じですね。」
「自分も他人も同じならば。」
「ニヒリズムを認めても良いと思います。」
「自覚の無いまま無価値になる世界と。」
「無意味な行為が目立つ社会。」
「無駄しかない存在意義。」
「そしてそれが自分だけではなく。」
「無自覚な他人も同じというのならば。」
「肯定することは出来ます。」

瑠那。
「それまで人の行いや言動を支えていた。」
「基盤が失われて。」
「デタラメをやったり。」
「支離滅裂な言動が発生している。」
「背後にあった真理が引っこ抜かれて。」
「それを基準に判断していたものが消え失せて。」
「背後世界にあった基準が無くなって。」
「浮いてしまっています。」

希乃。
「何か真実っぽいものが基準だったのに。」
「いつの間にか消えているんですよ。」
「なので自分を基準に考えてしまっています。」
「根拠や論拠を失った状態にあります。」
「この世界に事実なんてありません。」
「解釈しかありません。」
「それがニヒリズム。」

真奈美。
「山中にあるお宮に。」
「最速で駆け上がった時は。」
「息切れしました。」
「常人の二倍の速さで十分の登山をしたので。」
「山頂にいた人々は。」
「こんな登山でなぜ息切れしているのか。」
「疑問に思ってつぶやいていました。」
「向こうからは庶民でも気軽に登山する道。」
「こちらは勢い余って素早く登山したのですが。」
「ほら?」
「向こうの解釈とこちらの解釈は違っています。」
「これがどこにでも起きるんです。」

瑠那。
「学生時代。」
「全体主義の畜群が非難して来た時。」
「向こうの解釈は奴隷道徳によるもので。」
「こちら側は優秀な存在でした。」
「もっとも優秀かどうかは後に査定されますが。」
「全体主義者の解釈と。」
「こちらの解釈は食い違っているでしょう。」
「第三者が見ても真実を言い当てられないと思います。」

希乃。
「自分しか知らないものを。」
「他人が知ったかのように。」
「藁人形法を用いて。」
「何か言った事にして猛反発された事もあります。」
「こちら側はどうしようもないので。」
「動かないで居たのに。」
「相手側は勝手に論証をでっち上げて。」
「猛反発してくるんですよ。」
「向こうの解釈とこちら側の解釈はここでも食い違います。」
「第三者機関から見たらマシな方法は幾らかあったようですが。」
「それぞれ解釈が異なっています。」
「ここでも事実は存在しません。」

真奈美。
「ニヒリズムを発見して。」
「退屈な態度ばかり取っていた高校時代ですが。」
「他人から見たら不真面目と思われたみたいです。」
「文句ばかり言われました。」
「相手側は事実を言っているようで。」
「解釈しか言っていないんですよ。」

瑠那。
「親戚の少年は。」
「アメリカ式の教育を受けたかったみたいで。」
「リベラルアーツが大好きでした。」
「不登校になったのはそのためですが。」
「周囲は問題児と見なしたようです。」
「今は。」
「ラテン語の学校の先生を見つけて通っていますが。」
「そこでは優等生なんですよ。」
「いくら事実を言い当てようとしても。」
「結局は解釈になるでしょう?」

真奈美。
「事実を言っても逆効果。」
「事実なんてないという証明は簡単です。」

瑠那。
「軍隊による侵入は防御できても。」
「思想による侵入は防御できない。」

希乃。
「間違っているものも戦争で破壊されました。」

真奈美。
「誤りが破壊されたのは。」
「戦争も悪いものばかりではないという意味ですかね。」

瑠那。
「無理が生じたものは自壊する。」
「自然に壊れる。」

希乃。
「有名人もけっこう死にました。」
「目立つのでターゲットになるものですね。」

瑠那。
「あれま。」
「頻繁にテレビに出ていた有名人って。」
「いつの間にか爆死しているし。」

希乃。
「迎合って。」
「喜ぶことばかり話せばいいのですか?」
「他人が喜ぶことばかりやればいいだとか。」
「役者にしか出来ませんよ。」
「全体主義の役者は必ず人気を得る。」

真奈美。
「こんな大火災も。」
「喉元過ぎれば熱さを忘れる。」

瑠那。
「私が学生の頃には。」
「父親が大きなカメを拾ってきて。」
「バケツに入れて放置していたのですが。」
「飼えないので元の場所に解放しました。」

真奈美。
「中国の言い伝えで。」
「天下泰平の時には。」
「鳳凰などの生き物が出現するとのことで。」
「カメも入っています。」
「そこまで大きなカメだったんですか?」

瑠那。
「ゾウガメに匹敵するくらいの大きさで。」
「抱えて河原から持ってきたそうです。」

真奈美。
「ならばその時は天下泰平であった証拠でしょう。」

瑠那。
「それが二回あったのです。」

真奈美。
「それは偶然では無い。」

希乃。
「私達は大活躍ですが。」
「他の部隊もけっこうやります。」
「中距離ミサイルでの撃ち合いに強い。」
「航空自衛隊特殊部隊がF-35Aを使用し。」
「平均15機を撃墜していると発表がありました。」
「ガンカメラで記録。」

瑠那。
「士気が上がりますね。」

真奈美。
「現代でもエースパイロットがいる。」

希乃。
「アメリカ軍のエースパイロット。」
「F-22Aラプターで合計30機撃墜。」
「最強の戦闘機と最強のパイロットの組み合わせは。」
「Su-57とSu-75も一方的に墜落する威力です。」

真奈美。
「それは一人で何人分も働いた。」
「最強兵士です。」

瑠那。
「そんな兵士ばかりいれば。」
「勝って当たり前になります。」

希乃。
「イギリス軍のエースパイロット。」
「テンペスト戦闘機で合計25機撃墜。」

瑠那。
「強いぞ。」

真奈美。
「ミサイルの撃ち合いでも違いが出るんですね。」

希乃。
「格言通り。」
「勝っていると思っているから勝った。」
「とのことで。」

瑠那。
「歩兵は?」

希乃。
「少し前に合流した兵士が。」
「猛者揃いでしたが。」

真奈美。
「陸上自衛隊の精鋭部隊が。」
「100人くらいで2000人の敵兵を翻弄し。」
「援軍が来るまで持ちこたえていました。」
「旭川駐屯地から出てゲリラ戦を展開し。」
「敵の包囲が完成しなかったのはそのため。」

瑠那。
「彼らがそれですね。」

希乃。
「もう前線に戻りましたが。」

瑠那。
「所で味方の戦車が減りました。」
「援護がいなくなっています。」

真奈美。
「10式戦車大隊が凄い数の敵戦車と装甲車を撃破しており。」
「主戦場では残骸しかありません。」
「敵の方が損害が大きく。」
「10式戦車大隊は半分まで数を減らしたものの。」
「まだ戦闘可能です。」
「90式戦車大隊は全滅しております。」
「74式戦車は最近見ていません。」
「味方の装甲車は周辺ではもういません。」
「トラックだけです。」

瑠那。
「援護なしで作戦継続ですか。」

希乃。
「寡兵で大兵力を打ち破る戦闘が目立ちます。」

真奈美。
「いにしえの兵法家曰く。」
「有利と不利は一方のみにあらず。」
「敵側も凄惨な状況です。」

市民の生活も悪くなっています。

戦争が起きるとすぐそうなる。

飢餓でスズメが撃たれて数が激減。

野草は採取されて。

未開の山へ入る市民。

寒さに強い穀物が豊作です。

ジャガイモだらけ。

一級河川の水が業務用の機械で濾過されて。

大量に販売されて暴利が発生。

昆虫食が人気を集めています。

固定して数が揃うのは昆虫食だけです。

冬はどこでもシベリアに匹敵する極寒。

核の影響で寒波。

停戦多数。

春になっても雪が降り。

初夏でも暑くありません。


13


移動式核弾道ミサイルランチャー。

世界中に散らばっており。

何基か発見して攻撃命令。

瑠那。
「そこの地域に?」

真奈美。
「すぐに見つかるでしょう。」

希乃。
「偵察ヘリも大活躍ですね。」

瑠那。
「さっさとスクラップにしてやりますよ。」

真奈美。
「今回の編成はいつものチームです。」
「少しでも貢献しましょう。」

瑠那。
「戦争はチームプレイ。」
「誰かが負けてもこちらが勝てばいい。」

真奈美。
「戦争なんて勝てばいいのだ。」
「どんな手を使ってでも。」

希乃。
「それ兵法から見て正論です。」

瑠那。
「戦争など勝てばいいのです。」

真奈美。
「勝てばいいのですよ、勝てば。」

作成区域に。

車輪走行で。

立ちながら高速移動。

バランス調整中。

移動式弾道ミサイルランチャーを発見。

攻撃開始。

敵兵。
「ぎゃあー!」

真奈美。
「え?なにあの対地ミサイル。」
「これは何かの間違いです。」

瑠那。
「隊長。」
「丘の上に弾道ミサイル車両がいっぱい!」

真奈美。
「そ・・・そんなことはないのです!」

三機の攻撃で。

敵部隊は何も出来ずに総崩れ。

敵のミサイル車両はさっさと残骸になる。

戦場カメラマンがアンケートを実施しました。

自衛隊で一番怖い兵器はなんですか?

一番目。

誰かが作った機動兵器。

市民は持久戦に耐え抜く。

こんな世界で子供は泣き喚く。

真奈美。
「皮肉を言えば。」
「人の親はどうすればいいか分からない。」
「子供に関してどうすればいいのか分からない。」
「あらかじめ養育を習った訳では無いし。」
「学校教育なんて役に立たないものを頼りにしているし。」
「使いやしない能無し。」

希乃。
「ということは子供を設けておいて。」
「育てる気はないってことだよね。」

真奈美。
「育てる意志があって産む訳がないでしょう。」
「産んだら満足で。」
「人とは思っていない。」
「子供だからという理由でいくらでも高圧的に振舞うので。」
「ヨーロッパでは年老いた親が子に捨てられた。」
「仕返しを受けるのが当たり前だったし。」
「捨てられる程度の物。」

瑠那。
「自分が受けた教育を子にしているだけで。」
「何も独創的な部分はありませんし。」
「言われた事や読んだ教本を。」
「そのまま当てはめているだけです。」

希乃。
「要するに普通の事しか知らないし分からない。」
「普通なんてあると思っているんでしょうか。」

瑠那。
「今時、使えない人材は使い捨てですよ。」
「どれも同じならば。」
「より従順な人材を採用すればいいのですし。」

真奈美。
「郭公の托卵という行動です。」
「他の鳥に雛を育ててもらう。」
「他の鳥の巣に卵を産んで。」
「孵化した雛は巣の鳥を木から叩き落して独占します。」
「成鳥すれば自分で巣立ちます。」
「郭公であると思えば気が楽でしょう。」
「それなりの頻度で見破られて。」
「孵化する前に排除されますが。」
「成功すれば独占した上で巣立てますし。」
「自分が郭公であると思えば楽です。」

希乃。
「後から養育を覚えたのでは遅過ぎます。」
「なんで最初に知らないのでしょうか。」

瑠那。
「素人の教師が最初に出会う最悪の人物。」

真奈美。
「アリストテレス弁論術にあるように。」
「若者は最初。」
「希望を抱いて欲望だらけで。」
「血気盛んで。」
「欺かれた事もこの世の醜悪な部分も見た事が無い。」
「しかし。」
「若者が老年の性格で説明されている通り。」
「最初にこの世の醜悪な部分を見せられて。」
「あらゆるものに騙され続けたとしたら。」
「老年期でようやく察する物事が。」
「若者の時代で分かってしまうのだから。」
「想像以上に冷酷で情け容赦ない性格になっても。」
「当然と言えましょう。」
「老人になってようやく理解できるものが。」
「若者の時点で理解できるようになってしまえば。」
「若者なのに老人の性格をしている上に。」
「活力があるので。」
「しかも時間も余っているという理由で。」
「いろんなものを消していくでしょう。」
「報復と言わんばかりに。」

瑠那。
「そういう若者は不幸だと思います。」
「後半に理解できればいいものを。」
「最初に理解したあまりに。」
「幸福を得られないのでは。」
「不幸なのに報復を続けるなんて。」

真奈美。
「それが外部からもたらされたものなら。」
「なおさら。」
「例えば。」
「ギフテッドは天授の能力。」
「しかし他人が非難すれば。」
「他人は天の敵対者なのだから。」
「天意によって敵対者が天の恵みを受ける事が無いように。」
「天運に見放された連中は。」
「悪徳だらけの者達は運において不正をするしかない。」

希乃。
「しかしそれを信じられるのは。」
「老人だけですよ。」
「老齢期の一部の人が理解できるもので。」
「中年でも理解できる人は少ないでしょう。」
「若者ならば理屈で対抗するでしょう。」

真奈美。
「永劫回帰。」
「前に知るのですから。」
「後に知るのは直線的に時間を見ている証拠。」
「すぐに見出すのが永劫回帰。」
「後から知っても遅過ぎます。」

第三次世界大戦で。

毎日。

人が死んでいきます。

原因を作ったのは全員で。

全体のために個人が死んでしまう。

全体のせいで個人が危害を加えられる。

全体がどうにもならないのに個人が。

全体のせいで。


14


報告がありました。

敵の戦車部隊と交戦中の出来事。

フライトレコーダーにあるので。

機動兵器の多機能が効きました。

真奈美。
「アクティブソナー?」

瑠那。
「潜水艦から音波を出して。」
「跳ね返りで探知するモードですね。」
「発信者の位置がわかってしまうデメリットがあります。」

希乃。
「既にパッシブソナー。」

瑠那。
「聴音だけに徹するモードで。」
「潜水艦からは何も出しません。」
「メリットもデメリットもないソナーです。」

真奈美。
「機動兵器は多機能です。」
「海に転落した時に探知しました?」

希乃。
「対戦車ロケットを回避しようとして。」
「機関砲でも撃たれて。」
「逃げ込んだのが海の中です。」
「二分間潜水していた記録です。」
「フライトレコーダーの内容。」

瑠那。
「上がってきた頃にはいないかあ。」

真奈美。
「司令官に伝えておきます。」

多機能の機動兵器から聴音した内容。

近くにいた。

蒼龍型潜水艦が取得。

戦略型潜水艦を探知。

撃破。

近海に出没していたのです。

これは功績。

保管していた核兵器はどの陣営も弾切れ寸前です。

諜報機関によると世界の核兵器は残り5パーセントしかありません。

その証拠に通常弾頭による攻撃が飛んできます。

本当はとっくの昔に弾切れしているようで。

スカッドミサイルや長距離巡行ミサイル。

通常弾頭の長距離ミサイルしか確認されていません。

防空網は機能しているので。

あんまり効果なし。

タブレット型のオペレーティングシステムには。

戦況が限定された情報で入ってきます。

対馬では孤立した韓国軍。

三万人ほどの占領軍が残っており。

釜山に引き揚げるべく準備をしておりますが。

近辺には連邦艦隊の新旧艦が徘徊しており。

移動困難。

自衛隊と小競り合いをしていますが。

多国籍軍が仲裁し。

韓国軍は釜山に移動成功。

北朝鮮では反乱軍が武装蜂起。

遂には中国も二派に分裂してしまい。

アフリカ各地では。

紛争激化。

ジンバブエが南アフリカに侵攻しますが。

返り討ちに遭って首都を。

南アフリカ軍に占領されました。

リビアでは独裁者が復活。

東南アジア連合は。

中国の進出を阻止。

上陸しても入り組んだ地形から

狙い撃ち可能で。

地の利で中国は大苦戦。

一部の部隊が輸送船を使って逃げ出しています。

ユーラシア連邦は不利と見て。

防衛ラインを設置。

カシミール戦争では。

インドとパキスタンが接戦。

ポルトガルとスペインが水資源を巡って小競り合い。

意外な戦争が勃発。

EUは分裂の危機に陥りますが。

目的が同じであったので再結合しました。

那覇港では士気が低下した敵部隊が少しずつ。

輸送船で脱出中。

沖縄を半分も占領したのに。

勝ちきれないで。

撤退準備をしているのです。

ユーラシア連邦で同士討ちがドミノ倒しで発生。

スパイも困惑する残酷な同士討ち。

戦争終了の気配。


15


ユーラシアに加勢する国が出てきましたね。

世界征服を謳った国々や組織が次々に決起。

もはや止められません。

北海道戦線は終了しました。

最後の敵が逃げていきます。

毎回大戦果を挙げています。

真奈美。
「何か変だと思わない?」

智子。
「何がです?」

真奈美。
「いいや。」
「人そのものが。」

智子。
「おびただしい負念を持っています。」
「人がいつからか負の感情に支配されているのは見てきました。」

真奈美。
「負念ね・・。」
「数年前から目立っていたのは。」
「それかあ・・。」
「人は歪んでしまったのね。」

智子。
「負念を持って。」
「侵されたんです。」

真奈美。
「さらに政権の腐敗が重なり。」

智子。
「この惨状です。」

真奈美。
「まだ他にも理由があるわよ。」

智子。
「文明の停滞ですか?」

真奈美。
「人類は道を間違えた。」
「その結果がこれです。」

智子。
「人は愚かな生き物だった。」
「そんな史実が宇宙に刻まれてしまいます。」

真奈美。
「哀れな。」

智子。
「そうですね。」

世界は激戦を繰り広げています。

もう戦争中毒ですね・・・。

アンフィニの戦闘力は局地戦では強みのようです。

点在する敵拠点を潰すのは容易な事ですし。

敵兵はその姿を見ると恐怖に震えます。

貧弱な武器を使っては対抗できず。

まぐれ当たりを期待するしかないからです。

アンフィニはアメリカでも導入されました。

大量生産の真っ最中です。


やっぱり味方の数が足りません。

そんな中で。

一生懸命にやっています。

世界各国では暴動が頻発しています。

人は一致団結するどころか。

憤懣のはけ口を求めました。

人類はどこで道を間違えたのでしょうか。


世界で内戦が発生していて。

激戦。

生活基盤が破損して立ち行かない世界各国。

内戦やテロリズムが横行してしまい。

市民は武装して警察官と一緒に自衛しています。

真奈美。
「自分の判断を信用していない。」
「判断を間違えるのならば。」
「自分の判断も信用できない。」

希乃。
「推論ばかりしていますが。」
「証拠となる情報が手に入りません。」

真奈美。
「何の物証もなしに推論は出来ませんよ。」

瑠那。
「判断材料もないのに推論は禁物かと。」
「判断材料が無い推論は外れるでしょう。」

真奈美。
「証拠も情報も無いまま推理すれば。」
「何もないものを推論することになりましょう。」

希乃。
「それでも共通認識とやらは。」
「戦争の原因を作ったのは専制政治のユーラシア連邦です。」

真奈美。
「民主制は専制政治になるという。」
「古代ギリシアの予言が当たったのです。」

希乃。
「今ではまともな人は少ないです。」

瑠那。
「戦火に焼かれれば殺菌できるでしょう。」

真奈美。
「私達はいくら激戦になっても。」
「楽観的ですね。」

希乃。
「戦争と鎮圧が互角そのもので。」
「力と力の勝負です。」

瑠那。
「悪人よりは愚者の方がマシ。」

真奈美。
「何か受信しましたよ。」
「電波傍受。」

無線。
「こちらロシア軍の傘下企業。」
「ウラジオストクからの物資輸送に民間船を使ったものの・・・。」
「自衛隊に攻撃され・・・。」
「民間人に死傷者が・・・。」

真奈美。
「違うと言っても納得するようには見えませんね。」

無線。
「・・・。」

真奈美。
「私がやったとも言えるしやっていないとも言える。」
「成り行きでそうなってしまった。」

無線。
「原因を作ったのはあなたです。」

真奈美。
「だったら?」

民間人。
「あなたを殺します。」

テロリスト。
「待て!お前の相手はこの私だ!」

民間人。
「なに!?ならばお前も殺す。」

無線。
「銃撃音・・・。」

テロリスト。
「どうだ!この物資は俺達のものだ!」

通信途絶。

戦争も終盤。

真奈美は戦闘に身を投じています。


16


配置転換。

作業中。

手配された特大型運搬車が来ています。

支援部隊は無傷。

パーツを分離して。

輸送するのです。

休憩中。

焚火をしています。

普通科の隊員も同じく。

真奈美。
「それって意味あるんですか?」
「これはアメリカで定番の殺し文句です。」
「有名な博物館映画でも出てきます。」
「これをもじって。」
「それって価値ありますかね?」
「とか。」
「無駄ではありませんか?」
「とか。」
「それは無価値です。」
「とか。」
「いろいろ殺し文句が出てきます。」

瑠那。
「無価値です。」
「これって威力高いです。」
「ジェダイ騎士のアドベンチャーゲームで。」
「セキュリティドロイドが相手を揺さぶるために。」
「無価値です。」
「とか言い放ちますが。」
「あれって敵なら誰にでも有効ですよ。」

希乃。
「実際にターゲットに向かって発するといいですよ。」
「無価値です。」
「とか。」

真奈美。
「それって意味ないですよね。」
「とか。」
「それはそんなに価値があるんですか?」
「とか。」
「意味があるのかないのか質問するのは。」
「答えるのが不可能と言える殺し文句です。」
「反論できない。」

瑠那。
「価値のないものを認める理由はありません。」
「自分にとって何に価値があるのか。」
「自分が知っています。」
「自分が価値を見出すのです。」
「外部から価値判断を問いただすなど愚かな。」

希乃。
「お父様にジョークを言いました。」
「財産はある方が良いのです。」
「人生の勝者ですって?」
「その通りです。」
「世の中。」
「結局はお金なんです。」
「皆は負け惜しみを言うでしょうが。」
「所詮は敗北者なのです。」
「勝者は勝者らしく振舞いましょう。」
「そして彼らの敗北を眺めましょう。」
「お父様は頭ナデナデしてくれました。」
「物分かりが良い子だねと。」
「笑いをこらえておりましたし。」
「お母様には。」
「私達は勝者の側についたのです。」
「私達は優秀で最強。」
「世の中は特別扱いがあるのです。」
「先週までいた高級別荘地がその証拠です。」
「少数のエリートが大多数の落ちこぼれの前で踊って見せる。」
「大多数の敗北者の前でこう言います。」
「これは喜劇です。」
「コメディなのです。」
「お母様はジョークが理解できるようになったと褒めてくれました。」

真奈美。
「否定なんてしませんよ。」
「ルサンチマンが奴隷ということは。」
「ルサンチマンの逆が真理かもしれませんし。」
「奴隷道徳の反対が勝者の正論だと思いますから。」

瑠那。
「炎上する敵戦車と撃墜した敵戦闘機とか攻撃ヘリとか見ると。」
「ああ私は撃破する側にいるんだなと。」
「強者の側にいるんだと痛感しますよ。」
「お金持ちと連携が出来るのもそのためでしょう。」
「強者という点で一致しているからです。」

真奈美。
「奴隷が勝利しようとすると何をしてくる?」

瑠那。
「不正一択です。」

希乃。
「奴隷に勝利する権利はありますか?」

瑠那。
「不正に奪うでしょう。」

真奈美。
「しかし弱者が勝利する事などありえますか?」

希乃。
「弱者は勝てません。」
「勝利しても保持不可能です。」

真奈美。
「では弱者が勝利しても。」
「勝利を活用できないし。」
「勝利を保持もできない。」
「勝つのは一度だけ?」

瑠那。
「そういうことになります。」

希乃。
「弱者が正当だなんて言われた試しはありません。」
「奴隷道徳を否定すれば。」
「その反対を実践すれば足りますかね。」

真奈美。
「どのような展開になるにしろ。」
「ある程度の力は必要です。」
「前提条件として強さは必要です。」

希乃。
「生まれが別だったら。」
「今ここで敵の悲鳴を聞く事はありませんでしたね。」

瑠那。
「シミュレーション仮説では。」
「理想の展開とか。」
「究極の女性を達成できるとか。」
「超人になれるとか。」
「数種類あります。」
「これは真実でした。」
「つまりここは虚偽。」
「何かが嘘をついたから。」
「私を欺いているに違いないと。」
「しかし戦争が発生するのならば。」
「こうして戦っている方がマシです。」

希乃。
「かつて存在した可能性がすべて真実と出ましたね。」
「こうした生涯を強制されたと分かった頃には。」
「敵の死体で満たされていました。」
「こうなったら勲章くらい貰わないと。」

真奈美。
「人の出生について。」
「敵を殺してみて。」
「自らも殺されそうになって。」
「それで結局。」
「割に合わない。」
「出生なんて割に合わない。」
「個別論で唯名論で決まっているのであれば。」
「要するに」
「全体から決まっているのではなく。」
「個人によって生まれは決まってしまうようで。」
「絶対的な法則なんてありませんね。」

希乃。
「出生を逆手に取って。」
「結果論で誤りを認めさせて。」
「さあ交換しろと迫る。」
「これは人間の知恵ではありませんが。」

真奈美。
「出生を逆手に取って。」
「結果論で不当であると迫る?」
「それでもって交換に応じろと要求する?」
「それでは出生なんて何も出来ませんよ。」
「結果論で誤りである事が証明されたのだから。」
「出生に責任を取らせて。」
「出生を口実にいろいろやってはどうかな。」

瑠那。
「人なんて勝手に死ぬんですし。」
「生まれがどうたら意味不明です。」
「第一次世界大戦で一千万人。」
「第二次世界大戦で二千万人くらい死亡しましたよ。」

希乃。
「あまり死亡を前提に物を考えないものだから。」
「自然死して当たり前と思っているのかな。」

真奈美。
「どちらかと言うとイデアを見た事がある人の考察ですよね。」
「そこまで活躍しておいて憧れの対象があるなんて。」
「女性のイデアでも見たのですか。」

希乃。
「人は理由のわからない超常現象や。」
「未知の出来事に遭遇すると。」
「発狂するのが常ですし。」
「これまで事例が皆無の怪奇現象が。」
「いつの間にかあったりすると。」
「取り乱すのが当然でしょう。」

真奈美。
「なるほど。」
「あなたは生まれてから死ぬまで結び付けられて。」
「その中で生まれがこうなら無価値であると。」
「死ぬ時まで結びついているので。」
「活用できなかったり。」
「特に意味のない生涯は要らないという訳ですね。」
「要するに価値のない生涯は無意味と。」

希乃。
「敵兵の死体を見てそう考え始めたので。」
「動かなくなった敵兵は。」
「この後。」
「どうなったのか興味が湧いて。」
「観察していたのですよ。」

真奈美。
「それで生まれから死ぬまで結びついた結論という訳ですか。」
「なるほど。」
「読み切った結論ですね。」
「後の事は考えない出生とやらはこの世にないものです。」
「この世にないものを考えても把握できないです。」
「しかし死から逆算して生まれを捉えるなどそうは出来ません。」

希乃。
「敵兵の悲鳴と恐怖に震える顔が忘れられなくて。」

真奈美。
「いつも彼らに。」
「恨みは特にありませんが。」
「覚悟しろと。」
「弾丸を撃ち込んでいます。」

希乃。
「どうして好戦的な心理状態を維持できるのです?」

真奈美。
「私が狂人だからよ。」
「狂気のある女性だから。」
「男性の十倍は耐久力があるのよ。」

希乃。
「ということはあなたから足りない部分が補える訳です。」

瑠那。
「死ぬか死んでないかの世界ですよ。」

真奈美。
「不思議なことと、不可解なことを混同するのは誤りである。」

瑠那。
「何事も調べてみるのがいい、調査したのは無駄ではなかった。」

しばらくして。

輸送船に搭乗するように指示が出ています。

次は膠着状態の沖縄にリターンするのです。


17


輸送船の中で。

敵艦隊は壊滅状態。

味方艦隊もろくな艦艇がありません。

自衛隊とアメリカ軍のゴースト艦隊。

「国防予備艦隊」と「海軍予備艦隊」が出撃しているのです。

宿泊エリア。

女性専用。

真奈美。
「人生谷あり山ありですと?」
「格言通り。」
「峰を越えても次の峰が立ちはだかっているだけだ。」
「平坦な道にして貰いましょう。」

希乃。
「昨日の雑談ですが。」
「出生の計略を見抜いてしまったので。」
「計略に貶められないように。」
「阻止しているのです。」

真奈美。
「出生の策略。」
「そういう策略を見抜いて。」
「貶められないように立ち回っているのですか。」

瑠那。
「これまでの議論は出生の姦計に貶められないように。」
「阻止したものだったんですね。」

真奈美。
「なんて狡猾な出生。」

瑠那。
「悪賢い出生を智謀でやっつけようとね。」

希乃。
「議論と口論は別物ですし。」
「勝てばいいのですから。」

真奈美。
「どんな卑怯な手を使っても。」
「勝てばいいのです。」
「戦いを仕掛けられたからには。」
「汚い手を有効に使えばいいのですよ。」

瑠那。
「暴漢相手に。」
「暴力はいけないと説得しても。」
「効果あると思います?」

真奈美。
「強盗を相手に暴力反対を説いても。」
「無駄です。
「戦争とはそういう比喩です。」

希乃。
「では優しさを捨てれば。」
「弱者の側にいたと知るでしょう。」
「優し過ぎると弱いだけ。」
「弱さを美化しているに過ぎない。」

瑠那。
「隊長はなぜ強いんですか?」

真奈美。
「師匠がいたから。」
「なんでも天才なら習うに限ります。」
「現代にベートーヴェンがいたら。」
「誰もが教えを乞う。」

瑠那。
「現代にパットン将軍がいたら。」
「誰でも講演に行きたがるように。」
「現代にアインシュタインがいたら。」
「誰でも生徒になりたいと志願するでしょうし。」

希乃。
「出生について。」
「もし神々によって報われるのならば。」
「不幸中の幸いです。」
「でもなんでもお見通しなのは神々の方ですよ。」

真奈美。
「格言通り。
「もしも不幸に埋め合わせがないのならば、この世はあまりに残酷な茶番劇だ。」

希乃。
「自分の出生について。」
「神々はお見通し。」
「というのは心が楽になります。」
「神々は悪いものは隠蔽しますし。」
「神々に発見されたら。」
「悪いものは逆鱗に触れる事態に発展します。」

瑠那。
「神と人は異なりますから。」
「人の考えなどたかが知れています。」

真奈美。
「明白な事実ほどあてにならないものはない。」

希乃。
「初歩的なことだよ。」

真奈美。
「出生ですか。」
「おおかたの知能犯と同じく、彼も自らの知能を過信するだろう。」

瑠那。
「理想か現実かの話になりまして。」
「現実を捨てた上にリアリズムを否定して。」
「理想を取ったので。」
「こうなんです。」
「おかげで世界の秘密も明かされる。」

希乃。
「リアリストになりたいのなら。」
「それでいいのですし。」
「理想のみを追求し。」
「現実を捨てた私の客観的哲学という訳です。」

真奈美。
「知恵とはこういうことです。」
「不思議な知恵。」
「ほとんどのことを把握した上で。」
「さすらいの日々。」

希乃。
「人は独学でやるようなもの。」
「知恵を得たらこうなりますが。」
「わるいことではありませんので。」

瑠那。
「さてさて現代を把握するのにも。」
「判断材料がないのに、推論するのは禁物だ。」

真奈美。
「私は体験からこう思いますよ。」
「自分が正しいことを示すよりも、誤っていると思われた方がよい。」

瑠那。
「最も。」
「格言通りに。」
「自分で判断したことを信用してはならない。」

希乃。
「まったくその通り。」
「判断なんてすぐ狂いますから。」

真奈美。
「この戦争も狡猾な連中が始めたものですし。」

瑠那。
「悪賢い連中は半分死にましたが。」

真奈美。
「戦いにおいては。」
「正面から猪突猛進するのが、最善の策ということもある。」
「終わりの方まで残りました。」
「どうやら勲章くらいは貰えるらしい。」

希乃。
「物語も軍記も。」
「優れた人物や道化師が欠かせません。」
「後はその他大勢がいるだけ。」

真奈美。
「いや。」
「平凡なものほど不自然なものはない。」

指揮官に今後の作戦計画で話したいと。

呼び出されて。

会議室に向かいます。

機動兵器の戦闘力が高いので。

通常兵器では打開できない戦局を覆すからで。

性能ではなく戦闘力が売りです。

切り札なのですが。

機動兵器がまったく新しい兵器なので。

手間取っている。

そのために真奈美の助言が欠かせません。


18


駐屯地にて。

消耗で。

兵器が不足。

兵員が低下して。

志願兵の姿が目立っています。

今や戦争を終わらせる行動が求められ。

自衛隊は世界では珍しく余裕があります。

真奈美。
「不信感。」
「信用できない感じ。」
「国語辞典。」

瑠那。
「不信。」
「信用しないこと。」
「国語辞典。」

希乃。
「ニヒリズムの世界で戦争ですよ。」

瑠那。
「人間は結局。」
「戦うものです。」

「肯定するか否定するのか。」
「どちらかです。」

希乃。
「戦いをどう解釈するか。」
「ですよね。」


瑠那。
「戦争をどう解釈するのか。」


真奈美。
「危険なのは解釈を他人に乗っ取られる事。」
「当事者しか把握できない事態に対して。」
「他人が勝手な解釈で割り込んで。」
「こうであると定義する事。」
「他人の解釈で洗脳されると。」
「自分しか分からない物事全般が狂ってしまう。」
「実はこれ多い。」
「他人も自分の解釈を述べているので。」
「自分が把握している物事を混乱させてしまう。」
「場合によっては他人が自分の解釈を押し付けて。」
「乗っ取ってくる場合もある。」
「解釈しか存在しないという事は。」
「唯名論でより個人主義という意味なので。」
「この場合は他人の解釈など妨害要素でしかない。」
「最も他人は自分が正解を持っていると思い込んでいるので。」
「パターナリズム(温情的干渉主義)に陥って。」
「確証バイアスになっているので。」
「もっと酷い場合は自分を神だと思っている人間も実在する。」

瑠那。
「でも、結論を与えなければ。」
「結論を押さえておけば。」
「相手は押しきれませんよ。」

真奈美。
「証拠の提示を求めるのは効果ありです。」
「三段論法になっていないと。」
「帰納法か演繹法かを指摘して。」
「仮説形成に過ぎないのではとか。」
「結論を無効化する方法も効果ありです。」

瑠那。
「結論を無効化すれば。」
「どんな言い分も無力です。」

希乃。
「人に対する不信感は。」
「人について知り過ぎたから。」
「人に対する不信は最初からあるものです。」

真奈美。
「強くて優秀で頭が良くて理解力のある人が良い人なので。」
「弱くて大人しくて優しい人は悪い人です。」
「前者はなんでもお見通しです。」
「なんでも理解する上に合理的な思考を持っています。」
「後者は無理解とお人好しで間抜けですね。」
「良いとか悪いとか勝手に反転させたのはルサンチマン。」

瑠那。
「それだと私が昔で言う良い人に該当しますが。」

真奈美。
「強くて優秀で理解力があるのならば。」
「昔で言う良い人ですよ。」

瑠那。
「ニーチェの分析によると。」
「それが合理的かと。」

希乃。
「では彼らは悪い人だったんですね。」
「悪い人に囲まれて育ったので。」
「馬鹿になりました。」

真奈美。
「悪い人は弱くて大人しい。」
「無理解でお人好しで間抜け。」
「ルサンチマンが敵とする存在を想像した上で。」
「ルサンチマンが良いとする存在を想像すると。」
「そうなります。」

希乃。
「ルサンチマンが最高とする人間像なんて。」
「想像すると気持ち悪くて邪悪です。」

瑠那。
「ニヒリズムは世界の中で最も巨大な思想です。」
「ニヒリズムに味方した方が早いですよ。」

真奈美。
「少し前に花束を贈ってきた兵士がいて。」
「死にましたが。」
「満足だったでしょうね。」

希乃。
「恋に関して献身する暇はありません。」
「思考停止していれば理解できないことばかりです。」

真奈美。
「思考停止した人間を見た事がある?」

瑠那。
「ありますよ。」

真奈美。
「思考停止した人々は置いていきましょう。」
「偽善的な人助けに興味はありません。」

瑠那。
「実際に人を殺してわかったことばかりです。」
「前の出撃で歩兵を三十人殺しました。」

希乃。
「どんな生まれでどんな経歴か知りませんが。」
「既に死体になっていますからね。」

瑠那。
「理屈よりも銃弾を撃ち込んだ方が早いのでは。」

真奈美。
「よくもこんな泥沼化した世界で。」
「恋なんぞ言っていられるものか。」
「日本では女性は男性を好きになると。」
「最後には妊娠するものです。」
「日本書紀を読み解けば。」
「女性が男性を好きになって一緒になれば。」
「性的関係が必ず発生します。」
「最後には性的関係になり。」
「強制的に色欲の中に放り出されます。」
「それを美化した言葉が流行っていますが。」
「性的な部分を正当化しているだけで。」
「女性はそれに引っかかりやすく。」
「男性でその言葉を放つ人は少ないです。」

希乃。
「なんだかんだ言って恋は性的関係に辿り着き。」
「肉体的な限界が来るまで性的関係が続きます。」
「それでもいいのならば止めはしませんし。」
「あらかじめ知っている人もいます。」

真奈美。
「恋に関するある単語は直接。」
「性的なものに直結していますので。」
「人によっては宗教的理由で使用禁止になっています。」

希乃。
「恋は性的なものなので。」
「最後は性的関係という簡単に分かる結果を認めなければなりませんし。」
「男性の方は明らかに有利です。」
「男性はデメリットがありませんが。」
「女性は色欲と妊娠と育児と。」
「嫌でも巻き込まれますので。」
「恋は嫌でも性的関係になります。」
「事前に知っているのか。」
「後から知るのか。」
「その違いだけです。」

真奈美。
「最初から分かっていれば恋など裏切ります。」
「後から知ったのでは遅いと言いますか。」
「生涯の半分を浪費して知ったのでは。」
「もう取り返しがつかないのですね。」

希乃。
「当たり前と思っていたものが。」
「意味と価値を失い。」
「背後にあった運命とやらが消えると。」
「男性が得をして。」
「女性が犠牲になる。」
「無条件で惚れてしまって具体的な理由は皆無。」
「コントロール不能になりつつ。」
「交際していいようにされる。」
「男性有利な展開が続く。」

瑠那。
「恋と結婚やらのネタバレですよ。」
「仕組みが分かれば退屈なものです。」

真奈美。
「合理的な理由が無いのに好きになって。」
「そのまま自由意志を奪い取られてしまう。」
「女性は恋に自由なんてありません。」
「男性には恋に自由があります。」
「恋をすればおしまいで。」
「女性の自由はそこで終わりです。」

希乃。
「何の理由もなく好きになって交際して。」
「説服されて。」
「結婚してしまい。」
「言い包められて。」
「色欲の犠牲になって。」
「妊娠したら育児に追われて。」
「それでも性的関係が続けられ。」
「やっと中年になって。」
「そのような仕組みに気付く。」

瑠那。
「昔は世界人口を満たすとか。」
「いろんな価値判断に従っていたので。」
「夫婦の弁護士ならいくらでもいました。」
「ニヒリズムという世界を覆う巨大な思想が出てくると。」
「恋の価値判断は失われ。」
「恋には何の根拠も証拠もありません。」
「恋は無価値になりました。」

真奈美。
「個人的には恋など無意味で無駄です。」
「すべて知った上で突進して行く人は勇猛ですよ。」
「最初すべてを知っているか。」
「後から知るかで。」
「その人の選択肢の有無や自由はありますもん。」

希乃。
「恋は男女の自由の剥奪である。」

真奈美。
「女性兵士が見たものがそれです。」

兵士の健闘虚しく。

市民が乱心して。

暴動が拡大。

滅茶苦茶で無政府状態。

みんな自分の事しか考えていません。

略奪や殺人が多発。

警察が対応に追われます。

暴動の範囲が広がっていて。

煽ってくる輩や。

暴動を呼びかけ。

軍隊を誹謗中傷する奴まで。

いろいろです。

武力鎮圧してはさらに発狂しています。

真奈美。
「人間とはこんな生き物でしょうか?」

智子。
「地球もまた彼らの牢獄であった。」

真奈美。
「そんなこと知らせちゃ駄目よ。」

智子。
「人の価値が存在と行いで判断されるのなら。」
「人々がやっている事ってなんなの?」

真奈美。
「人の行いよ。」
「常に悪し。」
「絶望する暇があったら。」
「ユーラシアの増援を片付けなさい。」

北海道の残党が消えると。

沖縄戦争に移動になりました。

未だ沖縄では睨み合いが続いているからです。

これでもユーラシアの兵力が強大ですし。

到着早々。

戦車部隊と遭遇しましたが。

高機動性を発揮して。

間合いを詰めて。

天井に撃ち込めば楽々撃破です。

ある日は歩兵戦闘車。

こちらは30ミリ機関砲に撃たれないように立ち回ります。

アンフィニは立ち回りがすべてです。

でも。

我が軍の歩兵がついに力尽きてしまいました。

消極的な局地戦に移行。

真奈美は二週間で。

戦車20両。

装甲車38両。

戦闘機3機を撃破しています。

自軍の戦力不足とは裏腹に。

ユーラシアの士気は低下していました。

ユーラシアはまともに戦える状態ではないのです。

それでも戦争は続きます。


プラズマジェットエンジンの情報はとっくに漏洩しており。

それを元に。

完全戦闘兵器が造られていたのは知っていましたが。

ユーラシアがついに。

沖縄戦争で試験投入してきました。

コルベットサイズ。

飛行船で。

揚力を得るために翼は広く。

プラジマジェットエンジンで飛行し。

船体は海に浮かべて修理や常駐をするという。

人が造った兵器で最大のものです。

真奈美と智子のふたりが接敵。

レスペイトという兵器らしいです。

武装は100ミリ砲と40ミリ機関砲。

30ミリ機関砲。

各種ミサイルが大量装備されている。

空を飛ぶコルベット艦ですよ。

遠くから目撃して攻撃を行います。

相手は低空飛行です。

しかし弾幕があまりに酷く。

山地を利用して回避。

そのまま隠れます。

迫撃砲を受けましたが。

なんとか無事です。

相手は核ミサイルを持っているのかもしれません。

そんな匂いがします。

真奈美。
「このまま隠れていても駄目。」
「なんとかしないと。」

智子。
「あの弾幕は無理です。」

真奈美。
「機関部に命中弾を与えるの。」
「それならできるでしょ。」

智子。
「やってみます。」

敵が目下の歩兵に気を取られています。

F-22Aラプターに苦戦しているようです。

激しい弾幕を掻い潜って。

ハイジャンプ。

撃たれながらも。

回避機動を取り。

智子はレスペイトの上に着地して射撃。

真奈美は機関部を攻撃。

あっけなくレスペイトは墜落しました。

真奈美。
「やった!勲章もの!」

智子。
「儚く散る人の結晶。」

この戦いでユーラシアは怯んで。

逃げ腰になります。

沖縄戦線はなんとかなりそうです。


19


ユーラシアが「エレンシア」という機動兵器を投入。

自衛隊が苦戦しています。

アメリカ軍は善戦。

アンフィニは残り7機しか居ません。

各地でアンフィニ対エレンシアの攻防ですが。

エレンシアは性能面で大幅に劣り。

戦闘力も低く。

錬度の段違いの差で。

エレンシアを20機撃破。

アンフィニは1機も撃破されませんでした。

エレンシアは沖縄戦争に30機の大群で押し寄せ。

真奈美達と交戦。

名護市には7機のアンフィニが待機していました。

真奈美。
「こいつら・・・。」
「動きが単調・・・。」

智子。
「数が多過ぎます。」

真奈美。
「ひとつずつ落とすの。」

智子。
「囲まれた・・・。」

真奈美。
「囲まれただけよ!」

智子。
「だめ!」

智子機が撃破されました。

脱出を確認。

真奈美。
「少しは苦戦しますね。」

瑠那。
「なんだこいつら。」
「見た目が違うだけか。」

希乃。
「狙い撃ちです。」

真奈美。
「相手の機動兵器。」
「性能面では駄作ですね・・・。」

動きが遅いエレンシアは各個撃破。

自衛隊もアメリカ軍も。

機動兵器の戦法や特徴を把握していた為。

動きを捉えるのが容易です。

何より。

陸軍基地でVTOL運用していた。

アメリカ軍のF-35BライトニングUが対地ミサイルや。

短距離ミサイルでエレンシアを攻撃した為。

大量にエレンシアは破壊されました。

激戦の末。

アンフィニ2機が撃破され。

エレンシアは壊滅。

偵察機で動きと配置がバレバレだったのですから。

当然の結果でしょう。

沖縄戦線に戦力が集まってきました。

アメリカ軍と自衛隊の増援です。

これなら。

那覇奪還は可能ですね。

市民は軍隊を非難しています。

政府に謀叛を起こしました。

国内は荒れに荒れ。

ユーラシアが移動式ランチャーから広島に核ミサイルを撃ち込んで。

歴史の再来と言わんばかりに。

恐怖を植え付けたので。

市民はもう発狂してしまいました。

収拾はつきません。

政府ももう腐敗していて。

悪行を始めました。

一部の善良な政治家だけが。

持ちこたえている状態です。

天変地異が多発していて。

より市民を発狂させています。

もうこの世界はどうなるのでしょうか・・・・。


沖縄戦線で部隊の拠点となっていた。

名護市が。

弾道ミサイルで爆撃され。

8割は迎撃しましたが。

戦力の30パーセントを損失しました。

真奈美小隊は出撃中だった為。

難を逃れました。

ユーラシアは急遽構成した戦力を投入。

沖縄に増援が送られ。

自衛隊の戦力は。

歩兵三万人。

戦車50両。

装甲車140両。

決定的な戦力不足に陥り。

アメリカ軍も疲弊しました。

真奈美。
「人の業を確かに見た。」
「かつてこう言われた。」
「人は獣と何が優れていようか。」
「その意味。」
「いまなら解ります・・・。」

防戦一方になる自衛隊とアメリカ軍。

風前の灯のように戦っては。

防衛戦で勝利を重ね。

ユーラシアも撤退を考えているようですね。

強硬派が戦闘を続行しています。

真奈美。
「後に刻まれるでしょう。」
「人とはこんな生き物であった。」
「または。」
「こんな愚昧な時代があったのだと。」
「千年後の教科書に載ればいいなあ・・・。」

瑠那。
「スチュアート・ミルはこう述べている。」
「自由意志の意識をもつことは。」
「選択してしまう前に。」
「別様に選択することもできたという。」
「意識をもつことを意味する。」

希乃。
「事前に選択肢があったと発見するか。」
「現在も選択肢がある意識の事ですかね。」

真奈美。
「自由行為は。」
「前もってその条件すべてを知っていても。」
「予見できない行為。」

瑠那。
「結果どうなるか分からない。」
「最初に知っていても。」

希乃。
「自由を定義しようとすれば。」
「どんな定義も決定論を真実であるとすることになってしまう。」
「自由ってよくわからないです。」
「突き詰めるとガスのようで掴めません。」
「自由って何ですか?」

瑠那。
「自由ならば。」
「或る行動を自由に成し遂げるときには。」
「何か別の行動も等しく可能だったはずだと断定する。」
「この点に関して。」
「行為そのもののほかに。」
「反対の決心も選ぶ能力が私達にはあると。」
「自覚させる意識の証言を引き合いに出す。」

真奈美。
「自分の選択肢次第で状況が変わるべき。」
「という訳ですね。」
「それなら理解できます。」

瑠那。
「逆に決定論の方は。」
「いくつかの先行条件が与えられると。」
「結果として生じる行動は。」
「ただ一つだけ可能だと主張する。」

真奈美。
「諸条件が加えられると。」
「ひとつの選択肢しか実在しませんし。」
「結果が既に決まっていますね。」
「自分の選択肢なんてそこには存在しないです。」

瑠那。
「スチュアート・ミルは続けている。」
「私達が自分でおこなったのと別様に行動したものと仮定するとき。」
「私達はいつでも。」
「先行する諸条件のうちに或る相違を仮定している。」
「私達は実際には知らなかった何かを知っていたかのような振りをし。」
「実際には知っていた何かを知らなかったかのような振りをしている。」
「云々。」

希乃。
「でも選択肢次第で状況が変わるなんて。」
「論理的に説明してもあまり意味がないと思います。」
「結局は外的要因に左右されますし。」
「他人の選択肢が他人に影響を与えますので。」
「その中で先行条件が誰かに加えられれば。」
「選択肢はひとつしかありません。」
「自分の選択肢次第で状況は変わりませんし。」
「他人を撃破して通っても。」
「それは最初から決まっていたものであると言えましょうか。」
「それだと決定論というものが遠回しに。」
「策略によって自分自身をハメている意味になります。」
「どんな選択肢をつけても策略に貶められますし。」
「実際にどのくらい通用するか試みた情報が欲しいです。」

真奈美。
「自由の擁護者も実際にどのくらい通用したのか。」
「発表して欲しいものです。」
「それが真実になりましょう。」
「消去法ですね。」
「決定論もどのくらい通用したのか発表して欲しいものです。」
「消去法でこれも真実になるでしょう。」

瑠那。
「犯罪者が有罪になりました。」
「残念だけれど。」
「実刑判決になるのは決まっていたことなんだよね。」
「僕も残念です。」
「私が有罪にするのも決まっていたことなんだよね。」
「さらに残念です。」
「僕が収監されるのも決まっていたことなんです。」
「では出所するのも決まっていることなんだな。」
「だって僕は以後無限ループ。」
「だって私は以後無限ループ。」

希乃。
「では人の選択肢なんてどうでもよくて。」
「決まっているようにコントロールすればよくて。」
「選択肢で変えようとすれば妨害し。」
「実際に変えても決まっているように誘導し。」
「これを繰り返しませんか?」

真奈美。
「自由意志で決めたものも阻まれて進めなかったり。」
「敵に攻撃されて自由行為を阻止されたり。」
「決まっているかと思えば下克上を達成したり。」
「半分自由で半分決まっているという結論に達しますが。」
「半分という意味では自由が半分無視されていますし。」
「決定論という意味では半分は決まっていませんよ。」
「どちらも間違っているようにしか見えません。」

瑠那。
「それは先行条件に。」
「不正や不義や計略。」
「外的帰属などの外的要因が加えられて。」
「何かしら悪しきものが入っているからですよ。」
「公平世界仮説ではないのですし。」
「人の自由も自由に奪えますし。」
「こうであると決めてしまえば先行条件を加えて決定論にしてやれます。」
「公正世界仮説が遮っていますよ。」

希乃。
「この世界のどこが公正なんですかね?」
「実際には自由行為は他人が阻止可能ですし。」
「自由と自由の戦闘です。」
「この世界では他人の自由と他人の自由が戦争をしております。」
「自由の奪い合い。」
「自由は係争地ですし。」
「自由を獲得するか他人から奪うか。」
「相手に先行条件を強制して決定論にするか。」
「相手を支配して決定論にするか。」
「決定論を戦争や武器で殺害して自由を奪い返すか。」
「決定論も殺せない存在では無いのだし。」

真奈美。
「論理的にそれらはこの世にないものです。」
「この世にないものが出ているんですよ。」

瑠那。
「言われてみればこの世にないものに。」
「説明付けを試みている。」

希乃。
「この世に無いものに説明付けはできません。」

真奈美。
「趣向を変えてジョークでも。」
「もし良いものを受けても。」
「これって決まっているんだよね。」
「とか。」
「カジノで大儲けしても。」
「これって決まっていたんだよね。」
「とか。」
「競馬で散財しても。」
「これも決まっていたんだよね。」
「とか。」
「給料が高くてもこれも決まっていたからとか。」
「相手を倒してもこれも決まっていたとか。」
「起業家とか成功者とか。」
「人生の勝者とかも。」
「これは決まっていたことだ。」
「なんてセリフを言ったら雄弁なのでは。」

瑠那。
「自由の結果を強いるのも自由の結果だとか。」
「選択肢の内容を強要すればそれも自由で勝ち取ったものですし。」
「出世してもこの会社を選んだからだとか。」
「大富豪になっても自由意志でなったのだから。」
「逆に言えば押し通しても自由なのですし。」

希乃。
「最後の勝者のセリフ。」
「これって決まっていたことなんだよね。」
「別の勝者のセリフ。」
「自由意志で選択して勝ちました。」

瑠那。
「やっぱりこの世に無いものを調べてしまっている。」

真奈美。
「つまり完全な矛盾は。」
「賢者にも愚者にも、等しく神秘的に聞こえますからね。」

瑠那。
「メフィストフェレスの台詞ですね。」
「どちらにしても完全に矛盾したものだから。」
「神秘的に聞こえているだけです。」
「ゲーテが真理を言い当てました。」
「ファウストから引用。」

希乃。
「自由意志?決定論?」
「中身は?」
「完全に矛盾したものが神秘的に聞こえているものです。」

瑠那。
「完全に矛盾したものが神秘的に聞こえたのが。」
「あの論争という訳ですね。」
「それだと納得です。」

真奈美。
「無論。」
「矛盾が消え失せる訳でもなく。」
「永遠に矛盾したままですが。」

希乃。
「それは残念。」

仮設された基地にて。

真奈美は新聞を読みながら。

嘆いています・・・。

夜には。

謎の発行体が現れ。

真奈美はそれをよく目撃します。

まるで誘っているかのような動きをする。

真奈美。
「私達を笑いに来たのか・・・。」
「哀れんでいるのか・・・。」
「助けたいのか・・・。」
「よく分からない・・・。」

真奈美はテントに引き返して。

出撃に備えます・・・。


早朝。

ニュースを見ると。

予定されていたかのように。

ユーラシア連合がヨーロッパ戦線で惨敗。

第三次世界大戦の終わり頃。

核攻撃が当たり前になってしまいました。

戦略型潜水艦を連合国が集中狙いしていますし。

残っている移動式ランチャーが未だ稼働しているのですから。

それでも核ミサイルの7割は撃墜されています。

真奈美は名護市に居ます。

少数の敵を撃ち抜く日々です。

地球の環境が劣悪になってきましたね。

日本の全域が復帰した頃には。

異常気象に見舞われ。

食糧が不足。

市民も暴動を開始。

政権が腐敗していた為。

武力鎮圧ばかりで。

何も良い所はありません。

戦争の後遺症で世界人口の8割が死亡する予測があります。

真奈美。
「これが人の姿?」
「人類の望み?」
「人の本質?」

二機の機動兵器が不具合で。

整備中で動けず。

単独出撃。

空中に謎の機影が確認されるようになりました。

真奈美は最終戦に臨みます。

ユーラシア残党制圧戦ですが。

自慢のアンフィニに戦車砲が命中し。

大破炎上。

なんとか脱出。

空を見ると薄暗い雲で滲んでいました。

何者かが現れて。

謎の機影に連れて行かれます・・・。


20


ここはとある惑星の放送スタジオ。

謎の番組。

声優。
「驚異の地球文明!宇宙銀河特集☆」

キャスター。
「驚異の文明を誇っていた地球文明ですが。」
「残念ながら滅んでしまいました。」
「地球人の数少ない生き残りである。」
「真奈美さんにおいで頂きました。」

真奈美。
「こんにちは。」
「真奈美です。」

キャスター。
「真奈美さんは機動兵器の開発者で。」
「実戦も経験されているとか。」

真奈美。
「壮絶でした。」
「刻々変わる地球の状態。」
「とても見ていられませんでした。」

キャスター。
「何が原因で滅んだと思います?」

真奈美。
「政権の腐敗が大きかったと思います。」

キャスター。
「なるほど。」
「民主主義は銀河連盟でいくつかの成功例がありますが。」
「失敗例も確かにあります。」
「これまで滅んだ星と共通点がありますね。」

真奈美。
「そうなんですか。」
「そんな簡単な理由で・・・。」

キャスター。
「では地球文明とはどういうものだったのでしょう?」

真奈美。
「せっかくだから紹介しますね。」

END