第12話-答え-


町が一望できる丘の上、麦わら帽子を被った清楚な少女が景色を眺める。

少女は荷物の中からひとつのメモ帳を取り出すと。

何かを書き加えて、その場を後にした。

そこには「答えを探す旅」と書かれていた。

夏休みに入り、しばらくするとももは旅に出たのだった。

それは遠い地方への旅。

親は快く承諾してくれて、友達のみんなも笑顔で送り出してくれた。

今はうめ市から15000キロ離れた、マルティネス地方にいる。

プロペラの飛行機を乗り継ぎ3日、賢者の町で有名なザルツブルクを目指している。

もも「ここのユーシア市の定期便はあと1時間、そろそろターミナルへ戻らないと」

徒歩20分、丘と丘とで結ばれた、窪地に建物があり、巨大なスターボードでつくられた船が数多く停留していた。

それはまるで映画で出てくる宇宙港のスケールダウン版だった。

ももはターミナルの改札で切符を見せると、大きな待合室に入り、飲み物を飲んだり雑誌を読んだりして過ごしていた。

すると隣に振袖姿のおさげの女の子が座る。

その娘が振り向くと。

うさ「あっ!いつかの・・・ももちゃん?」

もも「わっ!C組の伝説!」

うさ「こんなところで会うなんて、なんで?」

もも「なんか頭がクラクラしてきた・・・」

うさ「あーごめん、香水キツかったね、フェロモン入り香水、消臭しとくよ」

うさは液体の入った霧吹きを取り出して自分にかけた。

もも「フェロモン入り?」

うさ「そうフェロモン、近づくと惹きつけられるの、そらちゃんがこの匂いが大好きで」

「喜ばせるために手に入れたんだけど、気に入っちゃって、わたしもかけてるんだ♪」

もも「周りの人巻き込んじゃうよ?」

うさ「わたしに興味がある人だけ引っかかるから今のところ問題が起きてはいないね、でも気をつけてるよ♪」

その時、アナウンスが鳴る。

「ザルツブルグ行きのお客様、搭乗開始のお知らせです、出発は14:30分を予定しております」

もも「いかなきゃ、じゃあまた!」

その時、そらが正面から歩いてくる、全身ロリータファッション。

うさ「わたしたち、実はスターボード世界大会を見に行く途中なの♪」

そら「あら、こんなところにいるなんて迷子かしら?」

そらは左手を右ひじに当て、右手をあげて顎に当てた。

もも「かわいい!こんな女の子がいたら、世界大会どころじゃない!」

「選手みんな揃って告白してくる!それにお嬢様っぽいインテリしぐさ!」

「おい!あそこに深い魅力の好女子がいるぞ!そらっカメラは独り占めだ!」

うさ「そのくせ、スターボードの天才と来た、プロと戦って3戦0敗の才女!」

「選手はいうさ、僕たちの仲間に入らないかい?イケメン揃い、結婚相手には困らないぞ?」

そら「なに言ってんの!わたしの夫はうさに決まってるじゃない!」

うさ「そうこうしているうちに、恋の便は出てしまうよ、まずはそれに乗ってから」

ももとうさは大笑いして、そらは真っ赤になっていた。

ちょうどスターボードを真ん中にして、上下に建物がくっついたかのような船に搭乗した。

それは10分後に動くと、素早く加速し、雲の上に入った。

4人用のソファにももとうさとそら、向かい合う。

するとうさが飲み物を運んでくる。

きゅうすに入れた紅茶だった。

それを3人のカップに入れると、うさはニヤついた。

うさ「さて、この中に激甘茶があります♪」

そら「はあ!?なにやってんのようさ!旅行をどれだけ楽しませる気?」

もも「いいでしょー!勝負してやりますよ!」

うさ「わたしもどれに入っているか分かりません♪では一斉にお飲みを♪」

もも「いざ!」

3人は一斉に紅茶のカップを飲んだ。

すると全員悶絶した。

もも「きゃー!」

そら「なっ!?」

うさ「んぎゃ!」

もも「なんで!?」

そら「なにやったの!全員に当たるなんて!」

うさ「ごめん、きゅうすに砂糖入れちゃったから・・・」

もも「ちょっとー!」

そら「うさ!」

ももとそらは抗議した。

2時間後、ザルツブルグ交際空港に到着した。

いくつかの発着所があって、垂直着陸を行い、着陸すると、細長い車が現れ。

全員搭乗したのち、建物内へ入った。

うさ「スターボード世界大会の会場はここから北へ50キロ、ミニバスに乗り換えるから、ここでお別れ♪」

もも「じゃあね!楽しかったよ♪」

そら「迷子になるんじゃないわよ」

3人は建物内で別れた。

空港から出ると、タクシーとミニバス。

つまり、スターボードの拡張版の乗り物があった。

そのうち座席つきの大型スターボードに乗り、花畑を通り抜け、街中へ入っていく。

スターボード用の広場に着陸すると、ももは賢者を探し回ることにした。

広場、人通りが激しく、噴水とベンチだらけ。

周りはヨーロッパ風の建築物、密着していてレンガづくり。

ある老婆がももを見るなり、はなしかけてくる。

老婆「見慣れない恰好だね、観光客に違いない、賢者をお探しかな?」

もも「はい、来たばかりで何の情報もないので助かります」

老婆「ついておいで」

老婆はももを誘うと、路地に入り、一軒の家にたどり着いた。

20歳くらいのお姉さんが元気よく応対する。

お姉さん「いらっしゃい!これはかわいいお譲さん、お名前は?」

もも「小桜ももです、15歳です」

お姉さん「わたしはミカ、よろしくね!」

老婆「あなたは確か賢者に会いたかったんだよね?」

もも「はい」

老婆「誰が賢者が分かるかね?」

もも「もしかしてあなた?」

隣にいたミカがはにかむ。

老婆「まだ半人前、ミカ、頼むよ」

ミカ「わたしとおばあちゃん、2人とも賢者と呼ばれています♪」

もも「えー!」

ミカ「おばあちゃんはわたしの師匠で、わたしはその弟子♪」

老婆「あなた何が目的で?」

もも「答えが欲しいんです」

「何が自分にとってふさわしいのか、何が自分にとって向いているのか」

ミカ「迷い始めたのが最近ね」

もも「なんでですか?」

ミカ「年齢と精神成長の時期を照らし合わせて感じた、そうであるという確信があるの」

もも「当たってます・・・」

老婆「何がふさわしい?それはひとつひとつピースをはめていくのが手っ取り早い」

ミカ「いままでの得意分野がぴったりとは限らない」

もも「なるほど・・」

ミカ「向き不向きは未知の領域、勇気を持って進んだ人だけが理解することができる」

老婆「それは常に不意打ちの形をとる、探すのではなく迎い入れるのが得策だよ」

もも「ありがとうございます」

ももは突っ立ったまま。

ミカ「なぜ立ち去らない?何か言いたいのね、言ってみて」

もも「好きな人がいるんです、でもうまくいってなくて・・・」

ミカ「どんな人?」

もも「詩人で、キザで、距離を置いてくるし、抱きしめてももらえない」

「でも好きだって言い続けて・・・」

ミカ「その人はあなたに対して何かした?」

もも「ピンチの時に助けてくれたり、落ち込んだ時に必ず現れてギター弾いてくれたり」

「わたしが機嫌が悪くなると、花の冠をくれたり・・・」

老婆「そいつは照れてんだね」

もも「照れてる?」

ミカ「友達関係を望んでいるのに、恋心で攻めてくるから。」

もも「じゃあ!キスを拒んだのは!?」

ミカ「友情のもとに付き合いたかったから。」

もも「そうだったんだ・・・」

ミカ「くれぐれも短気を起こさないように♪」

老婆「今日泊まるところはあるのかい?」

もも「ベーシックホテルに行こうかと」

ミカ「だめよ、そんなところ、あなたのようなステキな娘の行く場所じゃない」

老婆「ただ2段ベットが2つあるだけの場所なんて、疲れもとれん、泊まっていきな」

もも「ありがとうございます!」

老婆とミカの家に泊まったもも、この時、ももは人生で大切なことをいくつか教わった。

さらに次に日、いくつかの賢者に会ったもも、帰りの日、ある想いが頭をよぎった。

再びうめ市に戻ってくると、家に帰るなりスターボードを取り出し。

レオンの元へ向かった。

ももは本気だった。

スターボートに乗り、軽くジャンプする動作をすると浮き上がり。

激しく上昇、前と横移動の融合「サイドアクセル」をしたかと思うと。

高度を徐々に下げつつ重力と横移動で時速90キロを実現した。

近くを通ったおまわりさんはそれに気がつき。

注意をしに行った。

おまわりさん「こらー!そんな速度と体勢はだめじゃないか!」

おまわりさんのスターボードは追いつくのに3分かかった。

両者横に並んだ。

おまわりさん「誤って落ちたらどうするんだ!」

もも「ごめんなさい!と言わなきゃ落ちないってこと?」

おまわりさん「おおっ!?言ってる場合か!スターボード登録番号9522−A」

「速度を落とさないと家に出向いて説教だぞ?」

もも「説教?そんなわたしは彼氏に説教しに行くんですよ!」

おまわりさん「それまでに墜落したら元も子もない!」

「お嬢さん、君に何かあったらその彼氏はどうするんだい?」

ももはそのひとことで冷静になった。

両者停止した。

おまわりさん「彼氏さんに説教?だいぶ怒ってるね」

もも「だって、卑屈している人なんて、女の子から見たら魅力ないんだもん」

おまわりさん「同様に頭に血がのぼった女の子なんて、男の子は相手にしたくないと思うよ?」

もも「はっきりとした返事をくれないんだもん!別れたくなる!」

おまわりさん「どうしても女性は感情的になる、そのまま行ったら後悔するよ?」

もも「キスとか、強引に奪うしかなくて、好きかどうかが分からない!」

おまわりさん「男性の本心は言葉には出ない、行動を思い出してごらん、それが真実だ」

もも「好きでいてくれてるのかな?」

おまわりさん「あのね、お嬢さん、人には個性というものがある、人それぞれの接し方がある」

「雑誌や漫画、教科書通りの恋なんて、できるとは限らないんだよ?」

もも「え?」

少し沈黙。

「でも、大好きって言ってほしい、わたし最初から知ってた、あの人はなんか特別な・・!」

おまわりさん「その彼氏さんは大人になるにつれて、必ず君を拒まなくなる」

「君は見たところ15か、相手も15ぐらいか、そのくらいの男の子は思春期、繊細で荒々しい」

「そんな子に答えを急ぐのは酷なことだ、それとも君と彼氏さんは少し大人びているのかな?」

10秒沈黙。

もも「おまわりさん、ありがとう、わたし帰ります」

おまわりさん「刑法36条 スピード違反はその場で説教 任務完了であります、お気をつけて」

おまわりさんは去って行った。

遠くなるおまわりさんを見つめてももはメールを打った。

「大好きです、小桜もも」

5分後、着信が。

「ヒマワリ畑からやんちゃ姫に襲われて、無花果レオン」

ももは笑顔になると、家に安全飛行で戻って行った。

家には散歩中のミューズ、ふぇりす、えとわーる、めぐみが通りかかってきていて。

ももを見るなり手をふって。

すぐに家の中に誘われると。

土産話に花を咲かせた。

もも「賢者の方が、ご老体と20歳の女性で」

ミューズ「そんなに若いの!?平均は40歳だよ!?」

ふぇりす「賢者?いや賢人?なんでも知ってんの?」

えとわーる「ふぇっちゃん、賢人の方も人間、限界はありますよ」

メグ「賢者!?本でしか見たことない!」

「髭を生やして両手に本と杖、若者よ、よくぞきたーってやつ?」  

もも「はい、写真♪」

メグ「綺麗な女性!?わたしの中の賢者イメージがひっくり返った!」

花美「もも、いいプレゼントがあるんだけど?」

もも「なに?もしや金髪写真集!?」

花美「鳩待ち温泉郷の招待券よ?商店街のクジで当たったけど」

「有効期限内に行けない上に、5人分あるから、ちょうどいいわね」

もも、ミューズ、ふぇりす、えとわーる、めぐみ。

全員で歓喜の中、はしゃぐ5人。

もも「では、夏休みもあと1か月、ここはパーっと旅行しますか!」

4人「おー!」

笑顔でワイワイお茶する、女の子5人、ただいま青春まっただ中、美しい夏休みを満喫中です!