第10話-オーケストラ!-


ガヤガヤと賑わう、それは商店街のフリーマーケット!

数多くの品物が出品され、人々は掘り出し物に酔いしれる。

いつもの5人は、ワククワした気持ちを抑えながら、切り株を模った店を巡る。

もも「これはどうでしょう?オルゴールですよ?」

ミューズ「わぁ!いい音色!これください!」

店主「はいよー500円!」

ふぇりす「ももちゃん、ここにサッカーボールがあるよ」

もも「アクセルラウンド3000ですね、安い、良質、有名が揃った最高のボールです♪」

ふぇりす「それでもってなんとラテックスチューブ!ブチルチューブより質が高い!」

もも「普通に買うと3700円ですね、でもこれ900円?」

えとわーる「まだ数回しか使ってないようなボールですよ」

メグ「お買い得なんじゃないー?」

ふぇりす「じゃあこれ買うー!」

店主「まいどー!」

もも「さてわたしも・・・あら?」

そこには赤い絨毯を広げた、占い師のようなお店があった。

そら「えとわーるちゃん、いらっしゃい」

えとわーる「箱ですね、なんでしょう?」

そら「この中のものは全部100円よ」

えとわーる「開けてみましょう」

もも「わたしもー!」

そら「なにを選ぶ?」

メグ「はいーひとつ目の箱は・・・どら焼き?」

「わたしこれにするですー!」

えとわーる「んーと、真ん中のは・・・日記帳ですね?」

もも「右端は・・立派な装飾の空の箱?」

えとわーる「日記帳はこれからの思い出を記入できるから有益ですね、これにします」

メグ「お腹を満たせるからこれですよー!」

もも「空の箱ですけど、これにしますね」

そら「なんでよ?」

もも「外見だけ立派なのに中身がないなんて、見かけ倒しもいいところ」

「でも中身だけある粗末な箱よりはだんぜんいい」

「誰が粗末な箱に興味を示そうか、いくら中身があっても見られなければ空箱同然」

「しかも豪華な箱は花を入れればもう中身も伴う、これくださいね♪」

そら「むぅ・・・この人・・・」

えとわーる「そらちゃんも一緒に見て回りましょう」

そら「いいわよ、今ので在庫なし、店じまいね」

そらは店を手際よく畳むと、後ろのお店の倉庫に入れて、6人となった。

しばらく歩いた、音楽家もちらほら見かけ、イベントの準備をしているようだった。

ふと、ももは古代ギリシャの哲学者を思わせる、風変りな老人が経営する露店を発見。

そのお店の品物は・・・。

もも「正義と書かれた札、これを売ってるの?」

老人「左様、若娘よ、これに興味があるとは目利きじゃな、対応次第で非凡とみなす」

もも「これ買えるから売ってるんだよね?」

老人「愚問なり、確信を得たければ値札を見よ」

ふぇりす「えぇー!10万円!?ただの札が!?」

そら「何考えてんの、この爺様」

もも「じゃあ買うよ」

ミューズ「え?」

メグ「10万円なんてあるんですかー?」

もも「わたしを売ってそのお金でその札を買う」

老人「自己を売って正義を買うと?」

もも「わたしの値打ちってどう?」

老人「凡人ではあるまい、自己を売ったからにはいつかそれ相応の行動をとれよ」

「札は娘、そなたのものだ」

ももは札を手に入れ、美しいほほえみを浮かべると、バザー会場を歩いて行った。

そら「あの娘!そのくらいだったなんて!」

ミューズ「ももちゃん?」

ふぇりす「わー意味わからん!」

えとわーる「ももちゃん、将来大物になるかも・・」

イベント会場に着いた、そこには特設のステージが設けられていて。

野外バンドのような感じであり、イスが数えきれないほど置かれていた。

ももたちはイスに座っておしゃべりを満喫していると。

ぞくぞくと人が集まってきて、音楽家もスタンバイ、そしてステージが開幕した。

音楽家が演奏を開始。

会場は優しいオーラに包まれる。

ミューズ「アイネ・クライネ・ナハトムジーク−第1楽章というモーツァルトの代表曲だね」

もも「揺らぎ成分が含まれ、脳にリラックス効果があるという、魔法!」

演奏が終わり、次の楽曲に移る時。

おさげの女の子が現れ、そらの隣に座った・・・とたん。

2人はイチャイチャを始めた。

ふぇりす「なにやってんの?」

そら「う・・うるさい・・・うさちゃんと一緒になるとこうなるの!」

うさ「はろー!ふぇっちゃん!」

ふぇりす「あー!近づくとイチャイチャ状態に持ってかれるっていう、C組の伝説うさちゃん!」

真奈美「若いっていいわねー♪」

後ろから真奈美先生が覗く。

メグ「で・・でたぁ!?」

真奈美「お化けみたいに言わないで!」

メグ「カメラモンスターってつくくらいだから、お化けの同類ですよー!」

真奈美「そもそもカメラモンスターはわたしで3代目で・・・」

ミューズ「お化けが進化したのがモンスターだと思います」

ふぇりす「は?進化?」

えとわーる「今日もバッチリカメラですね!」

もも「あれ?あれはおねえちゃんたちだ?」

ミューズ「次の楽曲始まるよ」

演奏が始まり、繊細さと豪胆さを兼ね備えたヴァイオリンが披露される。

うさ「んー?これは忙しい感じ?」

そら「うさ、もっと求めて!」

ミューズ「弦楽四重奏曲第9番「ラズモフスキー第3番」〜第4楽章という曲だなぁ、ベートーヴェンの名作中の名作」

もも「あわわ!お姉ちゃん技量ハンパないよ!」

ミューズ「花美お姉さんって宝塚入ってたよね、だからうまいんだよ」

ふぇりす「へー・・・へ?」

えとわーる「それ音楽と違うです・・・」

演奏が終わり、辺りは拍手で包まれる。

もも「次の演奏まで時間がだいぶ空きますね、あれ?」

あそこの掲示板を見ると次は手品ステージ?

メグ「手品ならできますよ?はい!」

するとメグは手から花びらを出して散らせた。

それに気づいた観客たちはメグに視線を向け、司会者が勧誘してきた。

メグ「桜花流は桜保全の術で見せ物としては不完全ですよー!」

と言いながら、ステージに上がり、マジック?を見せるメグ。

拍手喝采!メグは一躍人気者になった。

客席に戻ってくるメグ。

ももはピンときて。

もも「オーケストラ、わたしたちでやってみない?」

ミューズ「いいねー♪」

ふぇりす「れっつちゃれんじ!」

えとわーる「楽器なら任せてください♪」

メグ「なんとかやってやるですー!」

その後、フリーマーケットでたくさん買い物を楽しんだもも。

明日の旗日にも集まろうと声をかけた。

翌日。

辺りは3メートル級のすみれの花畑が広がる、その中の30メートル級のピンク色のカワイイ花の上にて。

もも「えへへー♪お姉ちゃんにヴァイオリン教えてもらいましたー♪」

ミューズ「わたしは歌♪」

ふぇりす「あたしはDJ!対応できない音をチョイスするよ?」

えとわーる「わたしはハープですね♪」

メグ「わたしは演出!さあカメラを用意♪」

もも「さあ聴いてわたしたちの曲!」

全員「せーの!」

「にじいろみゅーじっく!」

もものヴァイオリンは問題なかった。

ミューズの声は綺麗で透き通っていて、曲の中核をなしていた。

ふぇりすの音源は違和感がなく、適合していた。

えとわーるのハープは幻想的な音色を奏でていた。

メグの演出はすばらしく、メグなしでこの映像はありえなかった。

演奏は5人一体となって進み、最後には大輪の花を咲かせる大成功だった。

パチパチパチパチ!!

気づくと、辺りを飛行中のスターボードと30人強の人が集まり。

拍手喝采!

5人は元気ハツラツでそれに答えると、第2楽章へと移った。

その動画はふるーつ中で人気を集め、再生回数は500万を突破したという。

巨大な虹が人を祝福し、5人は明日に向かって歩き出す。

時には泣き、時にはぶつかり、時には助け合い、5人の友情は混じり気が無く。

透明で、純粋、それでいて強い、ふるーつの学生のももたちの日記帳はここで筆が止まっている。

ももたちが日記帳の続きを再び書く時、どんな出来事が記されるのか。

少女たちが描く日常は音楽のように流れて行った・・・。