第7-楽園-


湯気が立ち上る、銭湯の浴場、そこから脱衣所に出てきたももは。

体重計に意気揚揚と乗っかった。

もも「体重は・・・。」

「どれ・・・」

「!!」

「君はなんて残酷なのー!人の悲劇を数値という形で具現化する!」

「君は女の敵なのー!それとも味方なのー!?」

「いや、正義も悪もこなす、新時代のヒーロー!」

「そんなヒーロー、みんなは期待しないよー!」

ももは興奮して、体重計を軽く蹴った。

花美「もも何してんの、現実を受け止めなさい」

続いて一部始終を見ていたももの姉が体重計に乗っかった。

花美「あら、ももが蹴ったから壊れたに違いないわ」

ももの姉花美は長いロングヘアーをツインテールに変えて、美しい身のこなしで雑誌を読む。

もも「現実・・・」

なかなかコメディアンな姉妹だった。

ふと、見ると、真奈美先生が休憩していた。

何やらメモ帳のようなものを開いて書き込んでいたので。

ももは気になって後ろから覗いた。

そこには「みゅーちゃん、メグちゃん、誘拐リベンジ」と書かれていたのだ!

真由美先生は気配に気づき、後ろを振り返った。

真奈美「きゃっ!ももちゃん!?計画は誰かにもらすとすぐ失敗する・・・うえーん

もも「いんや先生、その計画、わたしも加えさせてもらえませんか?」

真奈美「えー!ももちゃんがいれば心強いわぁ!是非!」

こうして、ももは先生の配下となった。

翌日。

もものGPSでミューズとめぐみの位置を特定、先回りして待機する2人。

もも「今日も一緒に歩いてますねー」

真奈美「金髪同士仲良しなんですねー♪」

2人が計画通り路地に来ると、さっと先生が出てきて勧誘した。

真奈美「みゅーちゃん!メグちゃん!先生と遊ばない?」

メグ「えー!またカメラやるのー?」

ミューズ「もう!今回はきっぱり断らなきゃだめ!」

真奈美「そう、ほら♪」

すると先生はバックの中から、極上チーズケーキを取り出した。

メグ「先生、カメラって素敵ですよね!」

そして次はももが。

もも「みゅーちゃんの欲しがっていた、柴犬のバッジあるよ?」

ミューズ「もう!今回はきっぱり了承しなきゃだめ!」

そのまま花畑の方へ歩いていく4人。

案外簡単に2人の誘拐に成功した。

背丈が2メートルくらいあるヒマワリ畑の中。

真奈美先生は容赦なく写真を撮り続ける。

真奈美「今回は水着も持ってきたから、ぜひ!」

ミューズ「んわー!?」

メグ「15でもうグラビアに挑戦ですかー?」

もも「さて、そろそろですかね?」

真奈美「?」

もも「あなたはいい道化でしたよ」

真奈美「なにっ!?」

するとももはバックの中からぬいぐるみを取り出した。

もも「人気ブランド、ひなたぼっこの看板キャラ、おしゃれっ娘クマのベベ

「どうですー?欲しくないですかー?」

真奈美「うわぁお!?欲しい欲しい!

もも「これは先生の計画ではなく、わたしの計画になっていたんだよー♪」

「これをもらったら、先生はお家に帰るんだー

真奈美「了解しました!

先生はぬいぐるみを受け取ると、駆け足で帰って行った。

もも「さて、みゅーちゃん、メグちゃん、やっと一緒になれたね」

ミューズ「まさか!?」

もも「そう、すべては金髪少女を独り占めするため・・」

メグ「策士ですねー!」

もも「みなさん一緒に手を繋いで踊りましょう!」

ミューズ「しょうがないなぁ♪」

メグ「いいですよー!先生をやっつけたご褒美です♪」

3人は手を繋いで、花畑でくるくる踊って。

散歩したり、ベンチで金髪少女に挟まれたりしながら。

そのうちももは幸せで気絶してしまった。

目が覚めると、花美にひざまくらされていた。

もも「みゅーちゃん!メグちゃん!」

花美「もう帰ったわよ、用事があるって」

もも「わたしの至福のひととき・・・」

花美「楽しい時間はすぐに終わる、だから、その瞬間に集中しなきゃ記憶に残らない」

もも「いまを楽しめってこと?」

花美「いまとは、時間に捕らわれると掴めないわ、1秒1秒ではないから、そこから悟ってみて」

もも「2人とも行ってしまいました・・・もっと楽しみたかった・・・」

花美「時にはチャンスは二度訪れることがある」

もも「二度訪れるかな・・・?」

花美「そう望むのなら、いつかはたどり着くでしょうね」

もも「うー!わたしまた楽園へ行きたい!」

花美「本気でそう思うのなら、協力してあげる、でもいつでも生半可な気持ちの行動は故障して全壊を待つ馬車のようなもの」

「その水をあげるわ、最近暑くなってきたから、気をつけなさい」

姉は起き上がったももを見届けると、綺麗なツインテールをなびかせ、去って行った。

もも「金髪!次も!」

ももはゆっくり帰り道を歩き出した。

家に帰ると、姉が本を読んでいた。

もも「それ何の本?」

花美「生まれつき才能がある者はそれに溺れ、修練を怠りがちで」

「才能がない者は負けじと努力を重ね、着実に前に進む」

「どっちが偉いと思う?」

もも「愚問じゃない?」

花美「その通り!」

花美はももの頭をなでると、部屋に戻って行った。

ももはその姉を見ると、自分も部屋に入り、ベッドにダイブ。

金髪の楽園を思い出して、栄華に浸った・・・。